

去年僕らがフィリピンのホロホロに居た頃は暖冬で日本中で雪が降らない温暖化と騒いでいたと思うのですが

今年は一転寒いし良く雪が降りますね

こんなに雪が降ると日本海に近い豪雪地帯では雪掻きだけでも大変とお察しいたします。
そんなことを思うと蒜山で別荘建設中の竹内さんは今頃どうしているだろうかと気になって電話しました

2~3年前にはそこでカマクラを造って(山友近況に写真アリ)中で鍋をしたことがあるほど雪が積もる場所なんです。
今日は水曜日で水、木が休みの竹内氏でもこの雪だから行ってないだろうと思ったのですが電話を受けたのは別荘の中でした

「雪で仕事は出来ないけれど行かないと休みを無駄に過ごした気がする」と仕事が終わってから一休みして夜中に一人で徳島を出発する竹内さんは明らかに愉しい病気です

さすがの僕もここまで根性はありません。
美由紀はまた近くの山を歩いてシイタケ一個と小さなエノキ数本収穫してきてました

僕は動かずまたまたテレビを見たりサスペンスモドキを書いて過ごしました。
興味のある方は読んでください

8章
山の東にある安楽寺の駐車場に森野のカローラが入ったのを見て、松田はオートバイを見えない場所に停め急いで荷台のザックを解き靴を履き替えた。
面識は無い。 森野が歩き出すのを待って後についた。
追いついて一緒に登るつもりだった。
コースは水越峠に出て稜線を頂上に向かって進む一般ルートのようだ。 このコースは前に何度も歩いていた。
葛城渓谷に沿って登ると「祈りの滝」がある。 峠に出た後少しの間急登になる。頂上まで約二時間。 峠まで分岐はない。
祈りの滝で休憩するタイミングを見て話しかけその後一緒に登るつもりだったが森野は山菜を採りながら進むので遅い。
松田も山菜は良く知っていたが誰もが知っているワラビ数本とタラの芽一つを手に持って声を掛けた。
森野はアサツキ(ノビルの仲間)とタラメを採っていた。
松田がアサツキを指差して山菜初心者を装って名前と食べ方を聞いたのだ。
森野の知識が松田を凌いでいることは容易に解った。
と同時に「毒草」が浮かんだ。 一般の人々は日本の山の何処にでも多くの毒草があることを知らない。
毒殺などに古来から使われる猛毒の「トリカブト」がこの周辺の山々も含め日本中にいくらでもあることさえ知らない。
安藤社長、岡田常務の事故に毒草が使われた可能性はある。そう思うと毒キノコの可能性もある。勿論他の薬物も含まれる。
松田はそれらを調べる必要があると思った。
葛城山頂付近から見下ろす満開のヤマツツジの赤は眩しいほどだった。
一緒に弁当を食べ「長尾道」を下ると言う森野と別れて松田は「ジョウモン谷」を下った。
滝を見るのが好きなのだ。
このコースには二つの滝がある。ブナの原生林を下って「行者の滝」を見て「櫛羅の滝」から車道にでた。
アパートに着いたのは五時だったが疲れは無かった。
すぐに山野草図鑑を開いて「毒草」を調べた。
事故を起こさせる可能性がある毒草の心当たりはあったが、それを詳しく読んだことはなかった。
翌日仕入れを終えて図書館に行き「菌類図鑑」を調べた。 菌類とはキノコの事である。
キノコの仲間は一万種以上もありその中には食べてから10日以上経過してから肝臓を破壊し、死に至らしめるものや幻覚を覚えるものが多くある。
松田はキノコの事は余り知らない。
マッタケは時々採るが他にシイタケ、ヒラタケ、マイタケ、ナラタケ、シメジ、キクラゲ程度しか採って食べた事がなかった。
がドラッグとして使われるキノコがあることは知っていた。
事故を誘発させる可能性は「幻覚」「興奮」「酩酊」「意識喪失」などが考えられた。
そんなキノコが何種類かあった。
森野が山菜に詳しく、事故を誘発できる毒草や毒キノコが簡単に入手可能であることが解っただけで十分だった。
例えば「チョウセンアサガオ」について説明してみよう。
チョウセンアサガオは元々日本にあった植物ではないが江戸時代に薬用として輸入されたものを始め、観賞用も含め現在では10種類程が帰化植物として日本中の野山に分布している。
勿論世界中にある。(どれも殆ど変わらない成分を有する)
名前の通り花はアサガオに似るが草丈は一メートル~4メートルになるものもあり茎もしっかりしているが一年草である。
根はゴボウに似て若い実はオクラに似ている。 根、茎、葉、花、種子など全てに同じような成分が含まれている。
1804年蘭医学者「華岡青洲」はこのチョウセンアサガオで全身麻酔をし世界初の乳癌摘出手術に成功した実績もある。
そのことから「日本麻酔医学会」ではこの花がシンボルマークとして使われていた。
チョウセンアサガオに含まれる成分の中で大部分を占める「スコポラミン」と言う物質があり、それが全身麻酔に利用されるのである。
スコポラミンは特に種子に多く含まれ、種子を潰して煮沸すると上に集まる。
その上澄み液をとり、とろ火にかけ蒸発させ濃縮する。
スコポラミンは無色、無味、無臭であるが目薬量で二~三滴を飲み物に混入させると数分で運動能力は残るが意識は完全に喪失する。
多すぎるとそのまま死に至ることもあるが殆どの場合意識をなくす時間が長引くだけである。
症状は瞳孔が開き、痛みなど全く感じなくなるばかりか数時間の間の意識は全て失ってしまう。
薬から覚めた時、自分がなぜここにいるのか今まで何をしていたのか全く解らないという。
これを飲まされ南米や東南アジアなどで多くの観光客や地元民が性犯罪や泥棒被害にあっている。
たとえばこのようにチョウセンアサガオから抽出した液を小麦粉と混ぜ、乾燥させたものをカプセルなどに入れて飲ませることが出来ればカプセル次第で時間調整が出来る。
そしてそれが溶けて体内に吸収されると数分の間に夢遊病者の状態にすることが出来るのだ。
この状態で事故を起こして死亡した場合、、有機リン系の中毒だと瞳孔が閉まるから薬物中毒と疑われるが「瞳孔の開き」は死者の常であり毒草と疑われる可能性は殆ど無い。
身体に致命的と思われる損傷がある事故で解剖に回されることは殆どないのが現状である。