ゴイシシジミ Taraka hamada hamada (H. Druce, 1875) は、アシナガシジミ亜科/ゴイシシジミ属のチョウで、日本産のアシナガシジミ亜科のチョウは本種のみである。日本では北海道から九州にかけて広く分布し、平地から高地(標高1,600m)の笹薮等に生息する。多化性で、年4~6回(北海道や寒冷地では1~2回)、5~11月頃にかけて発生し、幼虫で越冬する。白地に黒の斑点を持つ翅の模様が、囲碁で使う碁石のようだという事から和名が付いており、英語圏では、その斑紋から"Forest Pierrot (森の道化師)"と呼ばれている。雌雄での違いは、メスの前翅の頭頂部が丸みを帯びる程度で、斑紋や色彩に違いはほとんどない。
ゴイシシジミは、メダケ・クマザサなどのタケ科植物につくタケノアブラムシ・ササコナフキツノアブラムシの群の中に産卵し、孵化した幼虫はアブラムシそのものを食べて成長する。肉食性のチョウの幼虫は、他にアリの巣内に入り卵や幼虫を餌として食べて育つゴマシジミやオオゴマシジミなどが知られているが、成長段階の後期においての行動であるため、ゴイシシジミは、日本国内では唯一の純食肉性のチョウと言われる。成虫はアブラムシの分泌物を吸い、花に止まって蜜を吸うことはまったくない。
こうした特異な食餌のため、生息地は局部的な傾向が強く規模も小さい。アブラムシに依存しているため、アブラムシの多い期間には高い率で成虫まで生育し、大発生することが知られており、群れを成すこともある。しかしながら、アブラムシの少ない期間では、孵化した幼虫が成虫まで生育する個体は極めて少なく、1シーズン中にアブラムシの食い尽くしによる生息地の消滅も頻繁に見られるようである。ゴイシシジミは不安定な食物に依存し、生息地の消滅と出現を繰り返しながら個体群を維持していると考えられる。発生数の増減と時期については、地域差があると思われ、今回、標高およそ1.600m付近の林道脇では、範囲は狭いが、かなり多くの成虫が発生し、しかも羽化したばかりの個体が多く、蛹も見られた。
ゴイシシジミは、環境省RDBにも記載はないが、宮崎県と奈良県では、準絶滅危惧種として選定している。(掲載写真は、長野県、福島県など4か所で撮影している。)
参考文献
伴野 英雄 ゴイシシジミおよびササコナフキアブラムシ個体群間の関係 蝶と蛾 48(2), 115-123, 1997-06-15
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ゴイシシジミ
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ゴイシシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 1250 +2/3EV(2013.07.13)
ゴイシシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F5.6 1/320秒 ISO 500(2011.7.23)
ゴイシシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 6400 +1/3EV(2016.9.10)
ゴイシシジミ / 開翅
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/250秒 ISO 6400 +1/3EV(2016.9.10)
ゴイシシジミ / 交尾態
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/320秒 ISO 8000 +1/3EV(2016.9.10)
ゴイシシジミ / 蛹
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
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