三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇」

2022年06月02日 | 映画・舞台・コンサート
映画「ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇」を観た。
映画『ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇』5月28日(土)よりシアター・イメージフォーラム他全国順次公開

映画『ゴースト・フリート 知られざるシーフード産業の闇』5月28日(土)よりシアター・イメージフォーラム他全国順次公開

あなたの買った魚は奴隷が捕ったものかもしれない。騙され、拉致され、「海の奴隷」として漁船で働かされる男たち。彼らを救うべく一人のタイ人女性が命がけの航海へと漕ぎ...

 農業ではドイツのバイエル社(旧モンサント社=アメリカ)が、種子と種苗の知的財産権を独占して、強力な除草剤とその除草剤に耐性のある遺伝子組み換え植物(GMO)の両方を販売することで莫大な利益を得ている。そのせいでインドの農家は毎年15,000人が自殺している。
 どうも先進国の大企業は途上国の労働力を食い物にする傾向があるようだ。利益追求だけを唯一是とする資本主義の企業論理は、自社の眼前の利益のみ優先し、将来のことなど顧みない。
 流行りのSDGsも、国連で採択されたからという理由で、各企業はパフォーマンス合戦に余念がない。地球全体のこと、人類全体のことを考えている企業など、本当はひとつもないのだ。
 それは国単位でも同じことで、トランプのアメリカ・ファーストという露骨な主張は身も蓋もなかったが、実はどの国もトランプと同じで、自分の国さえよければいい。

 人間は本来的に利己主義であり、国にも利己主義を求める。他国との共存共栄ではなく、他国を支配して利益を独占する支配者を求める傾向にあるのだ。平和主義よりも戦争主義である。
 利己主義が罷り通る世界では常に弱者が犠牲になる。本作品の奴隷船はその極端な事例である。世界が平和主義、平等主義、自由主義、つまり民主主義がパラダイムとならなければ、いつまでも奴隷船は作り続けられる。

 振り返って世界の民主主義の割合をみると、人口比では3割にも満たない。専制政治の国に住む人が世界の7割強なのだ。そしてそれは増加の傾向にある。選挙制度のある国でも、その選挙が政権有利に進められるようになっている訳だ。人類に未来はない。

映画「20歳のソウル」

2022年06月02日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「20歳のソウル」を観た。
映画『20歳のソウル』 | 大ヒット公開中!

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名門 吹奏楽部の絆が生んだ希望と感動の実話。大ヒット公開中!

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 前半は吹奏楽部版のスポ根ドラマみたいで、想定していたのと違ってあれ?と思ったが、それは後半の怒涛の展開の前フリだった。
 人生80年を4つに分割して、青春、朱夏、白秋、玄冬とすれば青春は二十歳までとなる。舟木一夫の「高校三年生」を持ち出すまでもなく、青春の頂点は高校三年生の17歳、18歳にあると思う。恋もすれば喧嘩もする。得意になったり絶望したり、壁にぶち当たって挫折したり、ひょんなことから乗り越えられたりと、とにかく忙しい時期だ。
 本作品を観て自分の青春と重ね合わせると、自分はなんという不純な青春を過ごしたかと灰心喪気となり、逆に本作品の純粋な青春に感動する。かくも美しい青春が実話だったのだと思えば、更に感動する。

 佐藤浩市が演じた吹奏楽部顧問の高橋健一の男泣きには、哀しみだけではない万感の思いが伝わって来て、こちらまで胸が熱くなる。大変な演技力だ。
 それに輪をかけてよかったのがおかあさん役の尾野真千子で、誰にも心配をかけまいとする健気な息子の心を、この人の演技が鏡に映すように浮かび上がらせる。こんな立派な息子を愛さないでいられる母親はいない。そんな演技だった。
 おじいさん役の平泉成はいつもの感じだったが、担当医を演じた高橋克典が思いがけずよかった。こういう役もできる訳だ。

 主演の神尾楓珠の演技も悪くなかったが、脇役陣の名演技にも助けられたと思う。本人からと、周囲からとの両面から光を当てることで、主人公浅野大義の純粋な人柄を浮かび上がらせ、作品に立体感と奥行きを出している。上手な演出だ。