労災:5万件超が「漏れ」 厚労省実態把握へ 06年度 2008年4月16日 毎日
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080416k0000m010169000c.html
社会保険庁が、政府管掌の健康保険の診療報酬明細書(レセプト)を調べたところ、本来は労災認定(労災保険)の対象であるケースが06年度で5万件以上もあることが分かった。これらの中には、事業主が意図的にその事実を隠ぺいする「労災隠し」が多数含まれているとみられ、厚生労働省が本格的な対策に乗り出す。今後、社会保険庁のデータなどを基に、労災請求に関し事業主の圧力がなかったかなどを調べ、悪質な事案には積極的に刑事処分の適用を検討する。
労災隠しは、事業主が無災害記録の更新や事業受注の継続などを図るため、事故を隠すなどして行われるとされる。健保は、労災の治療に適用できない規則だが、発覚をおそれて使われる。こうした労災隠しについて、労働基準監督署は悪質なケースを労働安全衛生法違反で送検。その件数は90年に31件だったのが、06年は138件にまで増えている。
一方で、健保の申請を受ける側の社会保険庁は膨大なレセプトの中から、健保の対象とはならない労災や交通事故などを探すが、こうした調査の結果、労災だったとされた請求は06年度で5万471件(15億4000万円分)にも上っていた。本来仕事中であるはずの平日に外傷を負ったケースなどに注目し、探し出した。
厚労省が今回打ち出した対策では、全国の労働局が当地の社会保険事務局に、災害が発生した理由や場所などが記載された情報の提供を受ける。これを基に、被災者に対して、労災請求をしなかった理由や災害発生状況なども尋ねる。その上で、事業主が請求を抑止していることが疑われたり、重大、悪質な法律違反、虚偽報告がされている場合は、事業主に適切な指導、監督を実施。労災隠しが確認されれば、刑事処分も含め厳正に対処するとしている。
また厚労省は、最近、製造業などで偽装請負が横行し、事業主責任のあいまいさなどから労災隠しにつながるおそれがあるとも指摘。東京、大阪、福岡などの労働局が、労使の代表者で構成する「労災報告の適正化に関する地方懇談会」を開催し、労災隠し対策での要望や提案についてとりまとめる。
ん…??? 新聞社側はまるで鬼の首を取ったかのような書き方ですが、実は件数そのものが全体でどのくらいになるかが把握できていなかっただけで、労災隠しの問題が一向に解決していないことは、取り締まる監督署の側も嫌と言うほど知っていることなんですけどね…。
→もし、この問題に少しでも興味があるのならば、『これが労働行政だ―労基署・安定所職員の手記から』(労働教育センター)という1976年に出版された分厚い本を是非一読下さい。都道府県の労働関係書物を豊富に揃えている図書室なら保有している(京都府ならウィングス京都の図書室に置いています)可能性が高いです。ちなみにこの本には、現場の職員の生の声がこれでもか! と言うくらいに載っています。
一例を挙げるならば、下請けや孫請けを使っているような建設現場では、仮に下請や孫請けの社長や労働者が労災事故にあっても、その事業場がメリット制を適用している場合は、後々の労災保険料負担が増えてしまうため、労災の申請を嫌がり、元請けが『労災申請したら仕事を回さないからな』と脅迫。監督署の側が怪しいと睨んで被害者を問い詰めても、肝心の被害者に泣きつかれて立件できないことは、決して珍しいことではありませんし、警察と異なり、山のように仕事を抱えているのに原則1人で全てを調べ上げる監督官には、それ以上調べ上げるだけの時間的余裕もないのが現実です。
他にも、通勤災害の場合は、肝心の労働者が、200円の一部負担金さえ払えば後は国が負担してくれることを知らずに健康保険を使ってしまうことも多い(私の知人の事例では、会社からの帰宅途中で、落ちていたものを踏んでしまいケガをしたのですが、車に轢かれたわけではないため、『交通事故ではないので通勤災害にならない』と勘違いしていました)ようですし、もしこの問題を本気で調べ上げるならば、(世間でよく指摘されているお役所のスリム化とは逆になってしまいますが)調査を専門に行う人員の確保は不可欠。そのくらい、現状の監督署の人員体制はあまりにも脆弱だと言う現実を、このブログを借りて訴えたいと思います。(私は別に監督署の人間じゃありませんよ。念のため)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20080416k0000m010169000c.html
社会保険庁が、政府管掌の健康保険の診療報酬明細書(レセプト)を調べたところ、本来は労災認定(労災保険)の対象であるケースが06年度で5万件以上もあることが分かった。これらの中には、事業主が意図的にその事実を隠ぺいする「労災隠し」が多数含まれているとみられ、厚生労働省が本格的な対策に乗り出す。今後、社会保険庁のデータなどを基に、労災請求に関し事業主の圧力がなかったかなどを調べ、悪質な事案には積極的に刑事処分の適用を検討する。
労災隠しは、事業主が無災害記録の更新や事業受注の継続などを図るため、事故を隠すなどして行われるとされる。健保は、労災の治療に適用できない規則だが、発覚をおそれて使われる。こうした労災隠しについて、労働基準監督署は悪質なケースを労働安全衛生法違反で送検。その件数は90年に31件だったのが、06年は138件にまで増えている。
一方で、健保の申請を受ける側の社会保険庁は膨大なレセプトの中から、健保の対象とはならない労災や交通事故などを探すが、こうした調査の結果、労災だったとされた請求は06年度で5万471件(15億4000万円分)にも上っていた。本来仕事中であるはずの平日に外傷を負ったケースなどに注目し、探し出した。
厚労省が今回打ち出した対策では、全国の労働局が当地の社会保険事務局に、災害が発生した理由や場所などが記載された情報の提供を受ける。これを基に、被災者に対して、労災請求をしなかった理由や災害発生状況なども尋ねる。その上で、事業主が請求を抑止していることが疑われたり、重大、悪質な法律違反、虚偽報告がされている場合は、事業主に適切な指導、監督を実施。労災隠しが確認されれば、刑事処分も含め厳正に対処するとしている。
また厚労省は、最近、製造業などで偽装請負が横行し、事業主責任のあいまいさなどから労災隠しにつながるおそれがあるとも指摘。東京、大阪、福岡などの労働局が、労使の代表者で構成する「労災報告の適正化に関する地方懇談会」を開催し、労災隠し対策での要望や提案についてとりまとめる。
ん…??? 新聞社側はまるで鬼の首を取ったかのような書き方ですが、実は件数そのものが全体でどのくらいになるかが把握できていなかっただけで、労災隠しの問題が一向に解決していないことは、取り締まる監督署の側も嫌と言うほど知っていることなんですけどね…。
→もし、この問題に少しでも興味があるのならば、『これが労働行政だ―労基署・安定所職員の手記から』(労働教育センター)という1976年に出版された分厚い本を是非一読下さい。都道府県の労働関係書物を豊富に揃えている図書室なら保有している(京都府ならウィングス京都の図書室に置いています)可能性が高いです。ちなみにこの本には、現場の職員の生の声がこれでもか! と言うくらいに載っています。
一例を挙げるならば、下請けや孫請けを使っているような建設現場では、仮に下請や孫請けの社長や労働者が労災事故にあっても、その事業場がメリット制を適用している場合は、後々の労災保険料負担が増えてしまうため、労災の申請を嫌がり、元請けが『労災申請したら仕事を回さないからな』と脅迫。監督署の側が怪しいと睨んで被害者を問い詰めても、肝心の被害者に泣きつかれて立件できないことは、決して珍しいことではありませんし、警察と異なり、山のように仕事を抱えているのに原則1人で全てを調べ上げる監督官には、それ以上調べ上げるだけの時間的余裕もないのが現実です。
他にも、通勤災害の場合は、肝心の労働者が、200円の一部負担金さえ払えば後は国が負担してくれることを知らずに健康保険を使ってしまうことも多い(私の知人の事例では、会社からの帰宅途中で、落ちていたものを踏んでしまいケガをしたのですが、車に轢かれたわけではないため、『交通事故ではないので通勤災害にならない』と勘違いしていました)ようですし、もしこの問題を本気で調べ上げるならば、(世間でよく指摘されているお役所のスリム化とは逆になってしまいますが)調査を専門に行う人員の確保は不可欠。そのくらい、現状の監督署の人員体制はあまりにも脆弱だと言う現実を、このブログを借りて訴えたいと思います。(私は別に監督署の人間じゃありませんよ。念のため)