社債も発行できず 資金調達に苦しむ東電 2011年4月19日 J-CAST
http://www.j-cast.com/2011/04/19093418.html
東京電力が資金調達に困っている。当面の資金繰りとしてメガバンクなどから約2兆円を調達したものの、福島第一原子力発電所の事故によって信用力が低下して株価は急落、社債の金利も急上昇している。
これまで東京電力は、資金調達の多くを社債の発行でまかなってきた。東電を含む「電力債」は電気料金という安定した事業収入が得られるため、「国債よりも安心できる運用先」とまでいわれた。ところが一変、2011年4月の電力債の発行は4年4か月ぶりにゼロになる見通しだ。
震災前の23倍に上昇
社債の金利は、国債利回りに発行体の格付けなどを加味した一定の金利を上乗せする形で決まるので、信用力の高い企業ほど金利は低い。東電債はこれまで最低水準で発行していた。それほど、東電の信用力が高かったというわけだ。
ところが、東日本大震災による電力供給力の低下と「原発不信」の高まりで信用力が低下。スタンダード&プアーズ(S&P)などの格付け会社が社債の格付けを相次いで引き下げ、東電債の上乗せ金利は急上昇(価格は下落)していった。
金融情報サービスのアイ・エヌ情報センターによると、震災後の3月25日時点の上乗せ分がすでに0.67%に上昇。これが直近では2.56%と約23倍にまで上昇している。
ちなみに、他の電力債では、東北電力債が0.4%、関西電力債で0.22%、一般事業債でも新日本製鉄債で0.19%、三菱商事債で0.2%だから、東電の信用力がいかに急激に低下しているか、わかる。
賠償金、どう手当て?
現在、東電債の発行残高は約4兆8000億円。東電の有利子負債額の約7割を占めていて、社債の償還費用は毎年約5000億円にのぼる。必要な資金は例年4月に調達するが、それができなくなっている。
社債が発行できず、メガバンクなどから約2兆円を借り入れ、償還費用は確保、当面の原発事故の対策費用と夏の電力需要に向けた火力発電所の稼働にかかる費用に充てることにしている。
しかし、借り入れた資金には原発事故による住民への損害賠償費用は含まれていない。
東電は当面の資金繰りを銀行融資に頼らざるを得ない状況だ。ただ、これまで東電債を引き受けてきたのもメガバンクや生命保険会社で、このまま金利の上昇が続くと、こうした金融機関も多額の損失処理を迫られることになる。
「国有化の議論がくすぶっているし、社債のデフォルト(債務不履行)は考えづらい。とはいえ、銀行負担はかなり重くなるので、追加融資には慎重にならざるを得なくなる」(外資系アナリスト)とみている。
ん…。この『社債が発行できない』というのは、厳密な意味では『社債の発行と販売を引き受けてくれる証券会社がない』という意味ではなく、(かってのソフトバンクや一昔前のイメージが故に高めの表面利率を付けざるを得なかった消費者金融の普通社債のように)今普通社債を発行しようと思えば、表面利率や売り出し価格を 本来の企業体力よりも大幅に過小評価した(購入者に有利な)条件で発行しないと、個人投資家が購入するインセンティブが働かず(購入する側にとって魅力的= ということは、逆に発行する側からみれば、本来の水準よりも高い表面利率を付けざるを得ず、将来の支払い総額が増えることを意味します)、もし発行を強行すれば、他の電力会社の資金調達金利も跳ね上がりかねないだけに、業界のトップとしては、他の電力会社の経営を圧迫させないためにも『このカードは(少なくとも今の金利スプレッドが大幅に縮小しない限り)切りたくても切れない』というのが実情なんでしょうね…。
多少経済報道に詳しい方ならば、メガバンクから大急ぎで借りた2兆円という巨額のキャッシュも当面の資金繰りにつぎ込まれることくらい承知の上でしょうし、そもそも東日本大震災発生前から東電の株や社債を保有していた個人投資家というのは、前者は配当狙い+『とにかく値動きの少ない株を…』という安全志向の投資家で、後者も『絶対潰れない会社を…』という理由で低利率を承知の上で『それでも同年数の利付国債よりは利率が良いから』と幹事証券会社に勧められるまま購入した極力リスクを取りたくないという意識の強い方がほとんど。
『国有化の議論がくすぶっているし、社債のデフォルト(債務不履行)は考えづらい』という外資系アナリストの見方もあるようですが、過去に発行当時格付けがA-だったニチイ(後のマイカル)が社債償還前に経営破綻に追い込まれて普通社債保有者が元本割れの悲劇を味わった実例や、米国でもGMが連邦破産法を申請して普通社債が紙くずになった事例、最近でもJALの株主優待券目当てでJAL株を購入した方の株券が紙くずになった事例を見ていると、『これから先発行されることになる、かなり高い表面利率になりそうな新発国債と、震災発生前に発行した既存の社債とを、同順位で保護する価値が本当にあるのか…』という議論にもなりかねず、とてもリスクに見合うリターンがあるとも思えません。
まあ、東電だって表面利率2.5%の普通社債を発行する位ならば、より低い金利でメガバンクから借り入れる方を選ぶと思いますが、東京電力そのものが既に『安心して投資できる会社』でなくなっているだけに、従来の常識が通用しないのはある意味当然ではないでしょうか…。
http://www.j-cast.com/2011/04/19093418.html
東京電力が資金調達に困っている。当面の資金繰りとしてメガバンクなどから約2兆円を調達したものの、福島第一原子力発電所の事故によって信用力が低下して株価は急落、社債の金利も急上昇している。
これまで東京電力は、資金調達の多くを社債の発行でまかなってきた。東電を含む「電力債」は電気料金という安定した事業収入が得られるため、「国債よりも安心できる運用先」とまでいわれた。ところが一変、2011年4月の電力債の発行は4年4か月ぶりにゼロになる見通しだ。
震災前の23倍に上昇
社債の金利は、国債利回りに発行体の格付けなどを加味した一定の金利を上乗せする形で決まるので、信用力の高い企業ほど金利は低い。東電債はこれまで最低水準で発行していた。それほど、東電の信用力が高かったというわけだ。
ところが、東日本大震災による電力供給力の低下と「原発不信」の高まりで信用力が低下。スタンダード&プアーズ(S&P)などの格付け会社が社債の格付けを相次いで引き下げ、東電債の上乗せ金利は急上昇(価格は下落)していった。
金融情報サービスのアイ・エヌ情報センターによると、震災後の3月25日時点の上乗せ分がすでに0.67%に上昇。これが直近では2.56%と約23倍にまで上昇している。
ちなみに、他の電力債では、東北電力債が0.4%、関西電力債で0.22%、一般事業債でも新日本製鉄債で0.19%、三菱商事債で0.2%だから、東電の信用力がいかに急激に低下しているか、わかる。
賠償金、どう手当て?
現在、東電債の発行残高は約4兆8000億円。東電の有利子負債額の約7割を占めていて、社債の償還費用は毎年約5000億円にのぼる。必要な資金は例年4月に調達するが、それができなくなっている。
社債が発行できず、メガバンクなどから約2兆円を借り入れ、償還費用は確保、当面の原発事故の対策費用と夏の電力需要に向けた火力発電所の稼働にかかる費用に充てることにしている。
しかし、借り入れた資金には原発事故による住民への損害賠償費用は含まれていない。
東電は当面の資金繰りを銀行融資に頼らざるを得ない状況だ。ただ、これまで東電債を引き受けてきたのもメガバンクや生命保険会社で、このまま金利の上昇が続くと、こうした金融機関も多額の損失処理を迫られることになる。
「国有化の議論がくすぶっているし、社債のデフォルト(債務不履行)は考えづらい。とはいえ、銀行負担はかなり重くなるので、追加融資には慎重にならざるを得なくなる」(外資系アナリスト)とみている。
ん…。この『社債が発行できない』というのは、厳密な意味では『社債の発行と販売を引き受けてくれる証券会社がない』という意味ではなく、(かってのソフトバンクや一昔前のイメージが故に高めの表面利率を付けざるを得なかった消費者金融の普通社債のように)今普通社債を発行しようと思えば、表面利率や売り出し価格を 本来の企業体力よりも大幅に過小評価した(購入者に有利な)条件で発行しないと、個人投資家が購入するインセンティブが働かず(購入する側にとって魅力的= ということは、逆に発行する側からみれば、本来の水準よりも高い表面利率を付けざるを得ず、将来の支払い総額が増えることを意味します)、もし発行を強行すれば、他の電力会社の資金調達金利も跳ね上がりかねないだけに、業界のトップとしては、他の電力会社の経営を圧迫させないためにも『このカードは(少なくとも今の金利スプレッドが大幅に縮小しない限り)切りたくても切れない』というのが実情なんでしょうね…。
多少経済報道に詳しい方ならば、メガバンクから大急ぎで借りた2兆円という巨額のキャッシュも当面の資金繰りにつぎ込まれることくらい承知の上でしょうし、そもそも東日本大震災発生前から東電の株や社債を保有していた個人投資家というのは、前者は配当狙い+『とにかく値動きの少ない株を…』という安全志向の投資家で、後者も『絶対潰れない会社を…』という理由で低利率を承知の上で『それでも同年数の利付国債よりは利率が良いから』と幹事証券会社に勧められるまま購入した極力リスクを取りたくないという意識の強い方がほとんど。
『国有化の議論がくすぶっているし、社債のデフォルト(債務不履行)は考えづらい』という外資系アナリストの見方もあるようですが、過去に発行当時格付けがA-だったニチイ(後のマイカル)が社債償還前に経営破綻に追い込まれて普通社債保有者が元本割れの悲劇を味わった実例や、米国でもGMが連邦破産法を申請して普通社債が紙くずになった事例、最近でもJALの株主優待券目当てでJAL株を購入した方の株券が紙くずになった事例を見ていると、『これから先発行されることになる、かなり高い表面利率になりそうな新発国債と、震災発生前に発行した既存の社債とを、同順位で保護する価値が本当にあるのか…』という議論にもなりかねず、とてもリスクに見合うリターンがあるとも思えません。
まあ、東電だって表面利率2.5%の普通社債を発行する位ならば、より低い金利でメガバンクから借り入れる方を選ぶと思いますが、東京電力そのものが既に『安心して投資できる会社』でなくなっているだけに、従来の常識が通用しないのはある意味当然ではないでしょうか…。