日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

藤田宜永著「老猿」

2013-07-13 | 読書
今日は蒸し暑いものの、35度を超える事はなかった。
一息付けるほどではないが、なんだか嬉しい。


6月中旬に読んだ、初めての作家
藤田宜永著「老猿/ろうえん」講談社文庫



定年退職を目前にして、浮気相手に見放され
妻に発覚して離縁され、勤め先のホテルを辞め
家も家族も職も失ってしまった男

亡父が残した軽井沢の外れの別荘で暮らし始めた。
隣は変わった年寄りが常住し
その前の家は愛人とおぼしき中国人のアーティストが住む。

孤独で厳しく長い冬を乗り越える覚悟は出来ていたものの
変わった老人に目を奪われ、他人の愛人が居候を決め込み
孤独な冬は波乱に富んだ冬になってゆく。

毎年何回かお邪魔をする友人の黒姫山荘を念頭に読み進めた。

貧しく質素な筈の暮らしが、そこそこ豊かで
都内にもワンルームを持ち
変わった老人に高村光雲の彫刻 老猿 に重ね合わせてゆく。
昨年の春に見ていたので実感を込めて「ふむふむ・・」

その上アーティストと中国に渡ったり
老猿が命を狙われたり
孤独で厳しい冬が波瀾万丈の日々となる。

帯には
「私は60年間、淫したものはない・・
 ・・地獄を見ずにすんだということだ。
 微温の中の幸福を 
 生きてきた気がした。」

微温の中の幸福は大部分の人が過ごしている
地獄を見ない代わりに天国にも行けない我々
波瀾万丈の人々よりも、一番強い人
・・きっと!

微温の幸福な人が、激しく吹き荒れる人生を垣間見て
また微温の幸福に戻る
平常心の元ホテルマンの物語、です。

この先大したことないなあ~~の
人々に是非読んでもらいたい一冊です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする