日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

乃南アサ著「地のはてから」

2013-08-17 | 読書
お盆と敗戦日のこの週間にピッタリな一冊
乃南アサ著「地のはてから」上下 講談社文庫



大正の始め福島県の片田舎
豊かな農家の次男坊、嫁も子どももいるのに
憧れの東京で株で大損、借金をこしらえ夜逃げをする事になった。

国の募集する開拓団の一員として北海道知床に入植をする。
幼子「とわ(主人公)」と長男の4人家族

道も出来ていない原野に木を合掌にしただけの家を造り
入り口はむしろをぶら下げただけの掘っ建て小屋
畑の作物は採れないし、遊び人の父は漁場に出稼ぎに出る。

生きていけるだけの安定した(?)生活から
父が死亡し、母は仕方なく再婚
火災で再婚先の父も死亡
とわは子どもながら「子守り」として働きに出る。

子どもが重要な働き手となり、お金のある者の理不尽さに耐え
それでも世界恐慌の波は地のはて迄押し寄せ
二度と帰らぬつもりの知床に戻る。

見も知らぬ相手と結婚させられ
一生懸命に働き、子どもが出来、
仕事も軌道に乗った矢先、戦争が始まり夫は戦地へ、
お金になる事は何でもし、食べられる物は何でも食べ
脇目も見ずにに働く・・・

今の世の中では想像もつかない理不尽さ
劣悪な生活環境

貧しいとは何か?も分からずに、日々の事だけで生きてきた。
生き延びる事だけで暮らしてきた。

何ともたくましく、何とも悲惨
だけど、今日よりは明日がよくなる
希望だけはあったはず。


こんな人達の働きのおかげで、日本中が豊かになった。
とりあえずは身の回りに生きていく以上の物があり
仕事さえ選ばなければ、働く所もあり
「とわ」から見たら夢のような現代だが
とわが抱いたような「明日への希望」「湧き出す力」は
失っているのかもしれない。

暑さを忘れ、没頭出来る一冊です。
コメント
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