魚のぶろぐ

2006/5/28~。現在復旧作業中です。ご容赦願います。 ぶろぐの写真はオリジナルです。無断転載はお断りします。

深海魚42.ハネダホタルジャコ

2009年06月26日 18時45分39秒 | トロール船乗船記録と深海の魚(2009年5月)

このたびお世話になった有限会社 昭和水産様からは以前にもいろいろな魚を送っていただきました。しかし今回の乗船で、今まで手に入らなかった魚も現れました。そんな魚の1種、ホタルジャコ科のハネダホタルジャコAcropoma hanedai   Matsubaraです。

ハネダホタルジャコは日本産2番目のホタルジャコ科魚類として記載されました。基本的に、学名のうち種小名の終わりにiがつくものは人名にちなむものをあらわしています。羽根田氏は、発光生物についての権威でした。漢字(中国)でも「羽根田氏发光鲷」 と表記します(Fishbaseより)。

本種はホタルジャコと酷似している種ですが、同定のポイントとしては、肛門の位置が挙げられます。ホタルジャコでは、肛門は腹鰭の合間にあるのに対し、本種では腹鰭の先端付近にあることで区別可能です。

↑ハネダホタルジャコの肛門の位置

宇和島のじゃこ天ではホタルジャコが使われますが、本種も使われるのかは不明です。本種の場合、大陸棚からやや離れた場所で漁獲されます。そのため宇和島付近では少ない、と思うのですが、漁師さん、どうでしょうか?

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深海魚41.ウミドジョウ

2009年06月25日 13時37分58秒 | トロール船乗船記録と深海の魚(2009年5月)

本日の深海魚は、私のブログには初登場となるアシロ科魚類、その中のウミドジョウSirembo imberbis   (Temminck and Schlegel)を紹介いたします。

ウミドジョウと呼ばれるのだから、鬚があるのかと思われるのですが、この魚には鬚がありません。では下顎から出ている細いのはなにか、と申しますと、これは腹鰭です。

この腹鰭は魚種の同定に使われる形質で、本種の場合1軟条しかないことで、よく似たヨロイイタチウオと区別可能です。ウミドジョウ属は日本産は1属1種、世界でも2種しか知られていない小さなグループです。いずれの種も西部太平洋の産です。

アシロ科魚類は世界で240種以上が知られ、世界中の亜寒帯、温帯、熱帯、亜熱帯の深い海に生息し、種によっては浅海に見られるものもいます。日本ではそのうちの33種が報告されています。その中には水深8000mと世界で最も深い場所から採集された魚種であるヨミノアシロAbyssobrotula galatheae   Nielsenや、人間と同じくらい巨大化する(最大で200cm!)リング(もしくはキング)Genipterus blacodes (Foster) など、興味が尽きないものも多く含まれます。

もちろん食して美味なものも多く、ヨロイイタチウオは底曳網の主要対象ですし、先述したリングやその近縁種も重要な食用魚です。本種の場合は多く漁獲される種でありながら、小型種のためあまり利用価値は高いとはいえず、専ら練り製品の材料となっています。

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深海魚40.トンガリヒゲ

2009年06月24日 08時20分40秒 | トロール船乗船記録と深海の魚(2009年5月)

本日は深海の一角獣(?)とも呼ばれるトンガリヒゲCaelorinchus longissimus   Matsubaraを紹介いたします。

トンガリヒゲはタラ目ソコダラ科トウジン属に属しています。このトウジン属は本邦近海から22種が知られているのですが、似た姿かたちの種類も多く、同定が難儀します。

本種は鱗に弱い棘が密集すること、頭部下部は先端にしか鱗がないこと、体側に目立つ模様がないことから日本産トウジン属の他種と区別できます。この個体は水深270mから揚がってきました。トロール船では水深300m前後の場所でよく獲れるようです。

南日本ではタラ目の魚は少ないのですが、これら深海性のソコダラ科魚類は暖かい海にいるものも多く、本種は沖縄舟状海盆にも分布するようです。中には北海道から九州までの広範囲に分布するようなものも知られています。これも浮遊性で多くの卵を産む魚の特徴でしょうか。

この手の魚は鱗が大きく、なかなか鱗落としが出来ません。小さいものは骨もちょっと気になります。鍋かフライ、もしくは練り製品の原料としてよいでしょう。

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深海魚39.キホウボウ

2009年06月23日 12時17分08秒 | トロール船乗船記録と深海の魚(2009年5月)

本日の深海魚は、奇妙な形状をしているキホウボウPeristedion orientale   Temminck and Schlegelです。

キホウボウ科の魚はインド・太平洋、大西洋の深海に生息しています。日本近海には16種が知られていますが、本種はその中でも数が多いものです。水深200~500mから底曳網で漁獲されます。

キホウボウの仲間には大きな「吻突起」というものがあり、この形状が同定の重要なポイントとなっています。本種ではこの突起の先端が細長く、先端が外側に向かって開くことで日本産キホウボウ属のほかの種と区別できます。また、キホウボウ属は日本産の他属とは、前鰓蓋骨に大きな棘がないことで区別されます。

キホウボウ背面

キホウボウの仲間はトロールでも一度の航海で何種類かが漁獲されます。しかし利用価値は殆どなく、殆どが廃棄処分されてしまいます。今回の乗船では本種のほかに少なくとも4種類のキホウボウが採集されました。土佐湾から高知沖の深海はキホウボウの楽園となっているのでしょう。

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深海魚38.ワキヤハタ

2009年06月22日 12時01分39秒 | トロール船乗船記録と深海の魚(2009年5月)

本日の深海魚はホタルジャコ科のワキヤハタMalakichthys wakiyae   Jordan and Hubbsです。

ワキヤハタの標準和名に「ハタ」という名前がついていますが、本種はハタ科ではありません。ただしハタ科はかつてスズキ科の1グループとされており、本種をふくむホタルジャコ科魚類も同様にスズキ科に含まれていました。

ホタルジャコ科魚類は日本からは14種が知られています。そのうち本種はオオメハタ属に含まれています。オオメハタ属の特徴は肛門が臀鰭付近にあること、臀鰭が3棘からなること、下顎先端に小突起があること、です。日本からは4種が報告されています。

本種は水深100~300mくらいのやや深い海に生息する普通種です。トロール船でも多数水揚げされています。大きいものでは全長30cmに達するものもいます。

ホタルジャコ科魚類は食用種を多く含みます。本種はオオメハタなどとともに白むつという名称で呼ばれ、塩焼きにして食べられ、また、練り製品の原料にもなります。同科の魚にはアカムツやスミクイウオ、ホタルジャコも含まれ、アカムツは刺身や煮つけで美味しい魚ですし、後2種は重要な練り製品の原料です。特にホタルジャコはじゃこ天の原料とされる魚の一つとして有名です。

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