これだけ先行きがわからない時代になってくると、知識人や専門家の意見もあやしくなってくる。たいそうなことを口にしていても、その実は自信がないのである。マスコミもそうだ。ニュース報道がワイドショー化しているのは、コメンテーターがど素人であるのは、それで通用してしまうからだ。しかしよくできたもので、何も知らないはずの国民が、安倍内閣を支えて、何とか日本丸を先に進めている。土民大衆と嘲られている者たちや若者の方が、はるかに適応力や判断力があるのだ。エリック・ホッファーは「未曾有の状況下で知識や経験が役立たないとき、無知で未熟な者の方が状況にうまく対処できる。未知のものや未使用のものは、いわば不適応の状況に対して特別の適応性示すからである」(『魂の連金術』中本業彦訳)。日本の経済の見方についても、それはあてはまる。アベノミクスを完膚なきまでに批判していた者たちは、民主党の政権時代と比べて、株価がここまで上がると予想できただろうか。日本国民の多くが自民党に投票した結果、ようやくデフレ脱却に向けての動きが加速したのである。知識や経験を売り物にするインテリは、想定外のことが起きれば、もはやお手上げなのである。それにとらわれない、「無知で未熟な者」こそが状況を切り拓くのだ。一筋縄でいかないのが政治の世界であるわけだから。