天皇陛下のご譲位をめぐっては、ようやく国民の冷静に判断できる環境が整えつつある。去る7月13日にNHKが世紀のスクープとして報道したのが始まりであったが、そう簡単に年号が変わったり、天皇陛下がご譲位なさるのは、政治の安定の上からも好ましくない。日本の歴史のなかで、院政であったのは平安時代の後期。権力闘争に利用された苦い思い出がある▼「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」(座長=今井敬・経団連名誉会長)は今日、第4回会合を首相官邸で開き、前回に続き専門家へのヒアリングを行ったが、ご譲位を容認する発言をしたのは、6人のうちの2人にとどまった。有識者の一人である渡部昇一が述べたように、あくまでも摂政で対応するのが筋なのである▼天皇陛下の意向であられるかのようなマスコミの報道は、日本の国柄を損ないかねず、もっと有識者の意見に国民は耳を傾ける必要があるだろう。あくまでも天皇陛下は国民とともにあられるのである▼西田幾多郎は「我国の歴史に於て皇室は何処までも無の有であった」(『日本文化の問題』)と書いている。皇室は主体として存在するのではなく、その背後にあって、日本人の国柄を形成する源泉であった。常に日本人の先祖に対して祈りを捧げておられる天皇陛下は、御自らのことをよりも、国民のことを第一に考えてこられた。だからこそ、国民は大君として仰ぎ奉ってきた。その根本に手をつけることは、断じて許されることではないのである。
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