ライブ インテリジェンス アカデミー(LIA)

日本の伝統文化の情報を国内外に配信していくための団体です。 その活動を通じ世界の人々と繋がっていく為の広報サービスです。

時がかさなり感動をよぶ 【あの一枚 展】

2022-09-08 13:27:11 | 絵画

今日は二十四節気でいう白露。日中はまだ残暑が続くが、朝晩は冷えるようになり朝露が降りる始める時期のことをいうが、まさに暦どおりに昨日ごろから秋を知らせる風が心地よく感じるようになった。

今回の「あの一枚」は、京都でみた感動の絵画5枚。襖絵や壁画、天井画として世に伝わってきたものである。それぞれの一枚から、時をかさね積み上げられたストーリーを感じさせる迫力があった。絵の前で呆然と立ち眺めていたのを思い出す。

秋のおとずれに気持ち新たに訪ねてみたいと思う。少しの時の経過でもまた心ときめく何かを与えてくれるにちがいない。

 

南禅寺三門の上層の五鳳楼。内陣の本尊(宝冠釈迦座像)や十六羅漢像や脇侍の仏像を観ることに加え、狩野探幽、土佐徳悦の筆とされる、柱や天井一面に描かれている極彩色の図画

 

建仁寺の襖八面に対峙する阿吽二形の双龍図は、江戸時代初期に活躍した絵師 海北友松(かいほうゆうしょう)の渾身の作品。黒雲の中から姿を現した阿吽の龍が向き合い、視線をぶつけあう姿

 

大徳寺の天井画。狩野探幽が35歳の時に描いた雲龍図だといわれている。天井がゆるいドーム状なっているので、地面の敷瓦の上で手を叩くと、天井の龍も共鳴しズウゥ~ンという音が堂内に響く。そのため「鳴き龍」と呼ばれている。

 

建仁寺の国宝、俵屋宗達の風神雷神図。注目すると、両神とも対角線上に二分し、中央に空間が広がり、奥行きが生まれるので浮かび上がってくるように見える。風神雷神図は平面で見るとわからないが、本来は屏風なので立てられた状態にすると画面の中央が凹む。これにより、両神がお互いを睨んでいるようにも会話をしているようにも見える。

 

建仁寺 法堂(はっとう)の天井画「双龍図」。安置される釈迦如来像を守るために天井から睨みをきかせる。平成14年に建仁寺創建800年を記念して、日本画家の小泉淳作氏が約2年の歳月をかけて取り組んだ壮大な作品。2頭の龍が互いに絡みあうように「阿吽」の双龍が描かれている。

 

※建仁寺所有の多くは京都国立博物館に所蔵され、方丈の襖絵などは高精密複製画ではあるが、本物を体感できるほどのもの/綴プロジェクトより

 

リポート&写真/ 渡邉雄二 一部の写真は撮影禁止であるが許可を得て撮影している。

 

尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

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絵を通じて “生きる執念” を伝える 【画業60年の歩み<伊藤弘之>】

2022-08-28 14:58:26 | 絵画

85歳にして活動の領域を広げている方がいる。西宮市在住の洋画家・伊藤弘之先生。伊藤先生は独立美術協会会員で、天高く翔けるメリーゴーランドやカルーセル(回転木馬)をモチーフに、幻想的な空間を描く画家として知られている。

自宅をアトリエに精力的に制作活動しながら長年芸大で後進の指導にあたってこられた。また、自らが運営する西宮現代美術研究会で指導、絵画の楽しさや豊かな芸術文化の発展に貢献されてきた。

 

その長年の功績が認められ、最近では令和元年度の西宮市民文化賞を受賞された。それ以来、さらに画家としての領域がひろがり意欲的に活動を続けておられる。市民文化賞の受賞記念として、昨春、「カルーセルを主体とする、画業60年の歩み」と題して大作を含む90点が年代別に展示された展覧会が開催された。

また、昨年には世界遺産登録を目指す「鳴門の渦潮」の機運を高める、鳴門の渦潮に翔ける渾身のカルーセル3点(一枚は横2.59m、縦1.93m)が県民局(洲本総合庁舎内)に寄贈され話題を呼んだ。

 

 西宮市民文化賞を受賞記念の展覧会

 

寄贈された鳴門の渦潮に翔ける渾身のカルーセル3点

 

今年に入り、いままでの活動の功績が称えられ「紺綬褒章」を受賞された。また、兵庫県の芸術文化の振興に寄与したということで知事より感謝状が贈られた。画業60年の長きにわたる活動は止まらない。これからも命が続く限り「カルーセル」を描き続けるという。絵に対する深い執念が伝わってくる。

 

今月末から西宮現代美術研究会展が8月30日から9月4日まで西宮市立北口ギャラリー第3展示室で行われる。そのあと私の視点シリーズが続く。研究会展と同じく西宮市立北口ギャラリー第3展示室で「私の視点5」が9月13日から18日まで開催される。

 

 

リポート&写真/ 渡邉雄二

 

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あだち幸氏の、慈悲深い「不動明王三部作」が奉納される

2022-06-05 14:39:34 | 絵画

           宮島・大聖院で不動明王-Ⅱの奉納式

 

手書き友禅染の独特の技法で仏画を描く、友禅画家のあだち幸さん(岡山県井原市)が先月の28日、広島県廿日市市宮島町の真言宗御室(おむろ)派大聖院に、「不動明王三部作」のひとつである、黄金の輝きを放つ不動明王を奉納した。

 

2019年10月には、不動明王三部作の「不動明王-Ⅱ」が修験道門跡の京都聖護院に奉納され、昨年の6月に「不動明王-Ⅰ」は世界遺産の京都・仁和寺に奉納されたことは紹介したが、それに続いて今回、「不動明王-Ⅲ」が宮島の大聖院(広島)への奉納が果たされた。

 

           あだち幸さんが「不動明王-Ⅱ」を解説

 

あだち幸さんがこれらの大作不動明王を描くきっかけになったのは、2011年のあの東日本大震災。大震災による大災害や、それによる福島第一原発事故の悲惨な状況に心を痛め、“怒り”と“鎮魂”の強い思いを込め描き始めた。三部作ともご覧のとおり、何かに向かって踏み込んでいくような迫力がある。

 

京都聖護院に奉納された不動明王-Ⅱ(高さ2.18m×幅2.25m)は、炎の中に包まれる不動明王の勇ましい顔に、頭の群青が澄み渡る青空のようにも透き通る海の色にも見えてくる。

 

仁和寺に奉納された不動明王-Ⅰ(横4.8m×縦2.7m)の屏風画で、炎に包まれる不動明王がもつ剣と太陽が青で表現されている。大屏風の中から不動明王が、多くの痛みや苦しみを救ってくれるかのような慈悲の姿に見える。

 

そして、不動明王-Ⅲ(横1.35m×縦2.7m)は軸装されている。群青の中に黄金の不動明王が浮き上がっている。勇ましい顔ではあるが、多くの喜びを享受することができる慈悲深い不動明王のように見えてくる。

 

不動明王の三部作の最後を飾った「不動明王-Ⅲ」の奉納式が5月28日に大聖院で行われ、吉田座主(仁和寺宗務総長)よりあだち幸さんに感謝状が贈られた。同作品は引き続き常設されている。これらの三部作は各寺院で一般公開されているので、ご高覧ください。

 

リポート/ 渡邉雄二 写真/ あだち幸仏画工房

 

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たかが茶の稽古で、禅問答がはじまる 【京都国立近代美術館-京の大家と知られざる大坂画壇】

2022-05-03 15:04:57 | 絵画

以前、煎茶の稽古をしていた折に、毎回の稽古に欠かせない稽古必須の教科書のようなものがあった。煎茶概論のテキストや淹れ方の手引きではなく、それは床の間に掛けられていた「掛軸」だった。

 

一茶庵宗家独特の教示法なのか、佃宗匠の教授法なのかはわからないが、掛軸に描かれている絵や賛(漢詩など)を紐解いていく稽古だった。絵や漢詩については門外漢の我々は、稽古を始めたころは頭を抱えることばかり。その稽古の時間が、日常にない貴重なものに思えてくるには少々時が要した。我われにとって解らないことだらけのことに、光明の一矢だったのが “想像する” という誰しもが備わっている能力を使うことだった。

 

とくに漢詩の文字が崩されて読めない、また意味が分からない中で、なにを頼りにするかは、解る文字を探すことから始まった。たとえば30文字ある中で3文字でも解れば何とかなるという思いで。それからが、我われの持ちあわせている想像力(ええ加減)に頼り詩の意味を想像するのである。

 

その想像の、一つの参考文献がお軸に描かれてある「絵」である。文字だけでは全く理解不能だが、絵の内容を観て想像を膨らませる。察するのである。それでも正解を導きだせるはずがない。それからが師匠と弟子たちの禅問答のようなことが始まる。

 

無茶でとんでもない質問を投げかけても、宗匠は笑って返球してくれる。その返球の中にヒントがある。毎回この繰り返しで稽古は進んだ。お陰で煎茶の淹れ方や作法は身につかなかった。しかしながら、唯一、身についたと思われるのがお茶の味。その日のお軸の意味から導きだした茶の味の違いが理解できるようになったのは唯一の成果だったような気がする。

 

 

昨日、遅ればせながら京都国立近代美術館へ行ってきた。一茶庵の佃一輝宗匠も会場で流れる画面に頻繁に登場されていた。大阪の文人画や南画や中国古典の漢詩などを語る先生方の先導役として大きな役割を果たされていた。

 

今回の展覧会は「京の大家と知られざる大坂画壇」というタイトルで、江戸時代、京都で活躍した文人画家の池大雅や与謝蕪村、そして実物写生に基づく絵画で人気を博した円山応挙、さらに蕪村と応挙に学んで叙情的な画風を確立した呉春など個性あふれる画家たちの作品。

一方、大坂で活躍した木村蒹葭堂、岡田米山人など、町人としての本業がありながら自娯の精神による絵画を描いた文人が数多くいた。江戸時代から近代にかけて、京都と大坂で活躍した画家の代表的な作品を紹介していた。

 

そんな素晴らしい作品213点(後期展)をゆるりと観ながら、一茶庵で学んだ(?) ことなどが脳裏に浮び、展覧会鑑賞を楽しむことができた。

この展覧会は5月8日まで。このGWの後半にお時間があれば、覗いてみてください。

 

展覧会用に映像撮影された一コマ(一茶庵宗家 佃一輝宗匠) 近代美術館の大型ビジョンを撮影

 

リポート&写真/ 渡邉雄二

 

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伊藤弘之氏の「渦潮」、世界自然遺産登録に向け一役を果たす

2021-06-13 14:25:31 | 絵画

いまホットな場所として注目されている淡路島。関西からはもちろんだが、

関東からの移住者が増えている。それは、言わずと知れた自然の宝庫だからである。

海、山、そして青い空が身近な存在として生活に息づいている。そんなアイランドに夢を求めてやってくる。

 

新しい風が吹き始めている淡路島に、さらに追風になる兵庫・徳島の共有の自然財産である

「渦潮」が世界自然遺産の登録に向け動いている。兵庫県としても夢のアイランド構想がより促進される。

 

そんな中で、身近で嬉しいトピックを耳にした。

ご近所さんで、令和一年度の西宮市民文化賞を受賞された画家、伊藤弘之さんの絵画3点(写真)が、

新築された兵庫県洲本総合庁舎(淡路県民局)ビルに寄贈されることになった。

県としても世界自然遺産登録への促進剤につなげたい狙いがあるようだ。

この絵画「渦潮」が南あわじ地域のシンボルになっていくはずである。

そして、世界に類をみない渦潮が世界自然遺産に認定されることを心より願っている。

 

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