下鴨神社では、現在でも毎年1月4日に「蹴鞠(けまり)はじめ」が行われている。お正月の風物詩のごとく立烏帽子に鞠水干に鞠袴などの装束を着て蹴鞠する風景をTVで観たことがある。蹴鞠の歴史は古いようだが、とくに平安時代に流行し芸道として広まり、貴族社会では競い合いながら楽しんだようだ。
いままで実際に観たことはないが、先日、京都を訪ねた際に、烏丸今出川の交差点から西に向かい歩いていると北側にある「白峯神宮」に立ち寄った。その境内でなにやら幾人かが柔らかい皮のボールを蹴り上げている風景が目に入った。
砂場のようなところに線をひき、その上を摺り足で移動しながら鞠を蹴り上げている。落ちては拾い何度も繰り返し行っている練習姿を見せてもらった。
指導されている方に伺うと、平安時代には蹴鞠は宮廷競技として貴族の間で広く親しまれるように、また、公家達は自身の屋敷に蹴鞠専用の練習場を設け日々練習をしていたという。
明治時代に入って、明治天皇の働きかけもあって衰退していた蹴鞠の命脈が保たれ、それがきっかけに今の時代にも愛好者によって続けられている。主流の作法は8人または6人で行い、右脚の膝を伸ばしたまま、「アリ」「ヤア」「オウ」と掛け声をしながら、足の親指の付け根に鞠を当て蹴上げる。勝敗は競わず、相手が蹴りやすいように鞠を送る。
その日の目標回数を決めて挑戦する蹴り方を「いさかいの鞠」といい、時間制限はないが、日が暮れ疲れたらやめるという。鞠を蹴り上げる高さは1丈5尺(約4.5メートル)が理想とされ、蹴った時の音や鞠の回転の良さが評価されるという。
この蹴鞠は、明治時代まで難波流、御子左流、そして飛鳥井流の3派があったようだが、現在では飛鳥井流だけになり受け継がれている。飛鳥井家屋敷の跡に白峯神宮ができ蹴鞠の守護神になったという。現在では蹴鞠保存会の稽古場でもあり、「サッカー神社」とも称され、球技・スポーツの神とされている。毎年4月14日と7月7日には蹴鞠奉納が行われる。
日本では唯一の蹴鞠保存会として白峯神宮を拠点に活動している。その保存会の方たちが平安時代からの蹴鞠を後世に伝え継ぐために日々修練を積んでいる。そして蹴鞠行事を行う京都の神社で奉納蹴鞠に参加している。
正月4日に下鴨神社の「蹴鞠はじめ」(写真/京都観光ポータルサイトより転載)
蹴鞠の聖地「白峯神宮」
蹴鞠の修練風景
球技関係の道具が奉納されている
文・写真/ 渡邉雄二
下鴨神社の蹴鞠風景/ 京都観光 ポータルサイトより転載
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