goo blog サービス終了のお知らせ 

ライブ インテリジェンス アカデミー(LIA)

日本の伝統文化の情報を国内外に配信していくための団体です。 その活動を通じ世界の人々と繋がっていく為の広報サービスです。

筆法を封印し墨と水が織りなす「都市迷離シリーズ」 <大竹卓民>

2022-09-22 14:52:16 | 近代水墨画

「『墨』は、天然に備わる微粒子が水に馴染むと浸透したり滲み込んだりして千変万化し、千姿万態を無限に生み出すのである。これが墨の本来の性質で、(中略) 可視化の事物を創造する」と大竹卓民氏は表現している。

「墨」については門外漢ではあるが、仏画曼荼羅制作の中で墨を使うことがある。書や水墨画をされる方にとっては、墨は卓民氏がいう可視化の創造にはなくてはならないものである。その墨を生かす「筆」なくしては書や画の創造は考えられない。

幼少のころから中国で書画の修練を積んだ彼が、筆法を封印して墨と水が織りなす偶然性を最大限に生かした画面を創り出している。その一つが「墨界・万象-都市印象」という題材で、このたび京都の麗の會ギャラリーで個展が開催された。ご縁があって覗いてみると、壁一面に「都市迷離-L」(w186×90cm)が飾られていた。大都会の高層ビルディング群を墨の明暗で描かれ、その迫力は息をも呑み込んでしまうほどのものだった。

 

 

ご覧の通り、筆の跡はみじんも感じられない。この「都市迷離シリーズ」では、正方形の紙をスタンプし、その重なりによってビルのような造形をつくりだそうとしたもの。偶然性による墨のにじみを活用した方法である。筆の達人といわれた彼が、自分を超えるために完成作が予想できない「自分では描けない絵」にチャレンジしているのがこの作品群である。

「濃い薄いの明暗の遠近法もあるが、日本でいう『間』で明暗を強調しています」と私には語ってくれた。この手法は日本画がもつ独特の世界観を墨と水と紙と、そして「間」で成立させているという。

 

 

西本願寺を訪ねた後に伺ったのだが、午後から中国からの留学生を対象にしたギャラリー講義が予定されていた。それに合わせたわけではないのだが、その講義に参加することに。受講生は私以外すべて中国人で、テーマが「日本画の歴史」だった。卓民氏は、東京藝大でも日本画の研究室に籍を置いているので専門分野になる。ギャラリー講義は絵画や説明書を投影しながら卓民氏の熱弁が続いた。日本人は私一人という中で、冒頭は私に気を使って多少なりとも日本語を交えて解説してくれいたが、熱が入るにつれ日本語がなくなっていった。時より「ワタナベさん、ごめんね !」という言葉がかかる。言葉はわからなくても投影されたものを見ながら楽しい時間を過ごさせてもらった。

 

 

※大竹卓民氏プロフィール

中国・上海生まれで29歳の時に来日し武蔵野美術大学、筑波大学大学院芸術研究科修士課程を修了し日本で活動する芸術家である。日本や中国の数々の百貨店で個展を開催。中国中央美術院や上海美術学院岩彩画研究室教授などを歴任。現在は、中国敦煌研究員美術研究所客座研究員、東京藝術大学大学院保存修復日本画研究室の非常勤講師を務めている。水墨画や日本画などの関連のテレビ番組(特にNHK等)には多数出演。最近では今年の6月NHK「美の壷・<黒と白の宇宙 水墨画>」に出演。日本在住。

 

 

 

リポート&写真/ 渡邉雄二

 

尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

心が洗われる聖地、西本願寺

2022-09-21 14:04:12 | 文化想造塾「神社仏閣」

 

お彼岸前ではあるが、先日の日曜日に西本願寺にお参りしてきた。年に数度、参拝に寄せていただく寺院のひとつ。いつもの一人のお彼岸法要であるが、ちょっとした休息の場として利用させていただいている。阿弥陀堂や御影堂でも、あの広い空間で仏様に見守られながらほんの少しの時間を過ごすだけでも精神的な浄化作用がもたらされる不思議なところである。

 

この時期だけに多くの方たちが参拝されていた。耳に読経が心地よく響いてくる。一日中ここで過ごせる気さえしてくるほどの心の洗浄地。御影堂からは青々と茂る大銀杏や、いまだ入ったことのない飛雲閣の三層、四層部分が見える。

この景色は、移ろい早いこの世の中で何百年経っても変わらないのだろう。

 

以上が御影堂

 

 

以上が阿弥陀堂

 

白壁の向こうが飛雲閣

御影堂の正面にある大銀杏

 

リポート&写真/ 渡邉雄二

 

尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

“カッコいい!” といわれる靴磨き職人をめざす、吉田剛さん

2022-09-19 14:02:48 | 雑感

サラリーマンと靴磨き職人の二足の草鞋を履く吉田剛さん

 

むかし、英国・ロンドンのシティ(金融街)というところで路上靴磨きをしている人を見たことがある。当時はまだシティ界隈には山高帽をかぶり手にステッキをもつ英国紳士をたまに見かけることがあった。もちろんスーツにネクタイ(蝶タイ含)にピカピカに磨かれた革靴がお決まりのスタイル。そんな街では靴磨きが絶好の場所となっていた。

 

日本でも昔はそういう光景は随所にあったようだ。高度成長期では街のシンボル的な光景に見えた。お客は椅子に座り、磨き台に足を上げ新聞や雑誌を手に、また職人を相手にお喋りしている靴磨きの光景が印象深く残っている。

 

その靴磨きがニュービジネスとして注目されてきている。だが、ビジネスとして展開できる需要があるかといえば、時代に少々逆行しているようにも思える。サラリーマンの靴といえば足元は当然ながら革靴というのが定番だが、いまやカジュアル的で歩きやすく軽いそして安価の靴が主流になっている。マーケットの中心層であるサラリーマンは靴磨き対象層としては考えにくくなっている。

そんな中で、新しいマーケット層として生まれてきているのが、スタイルステイタスの備品として腕時計や靴などに価値を求める20代から40代の若手起業家たち。自らのこだわりを大切にするニューリーダーたちが大切な客層になりつつある。

 

それらの人たちに応えられる靴磨き職人に必須なアイテムが求められている。それは「プロフェッショナル」という技能が求められている。いま日本の靴磨き職人は30代、40代が中心で日本人独特の工夫と心こもる丁寧さが大きな武器になり、靴磨きの世界大会で優勝するほどの実力がある。職人たちの切磋琢磨が新しいビジネスチャンスを生もうとしている。

 

その一人に先日会ってきた。西宮在住の吉田剛さん、40歳。平日はサラリーマン、週末は靴磨き職人の二足の草鞋で頑張っているひとりである。イベントなどに参加し学んだ技能を実践で磨きをかけている。

 

 

「おしゃれは足元から・・・って言いますよね。でも靴ってすごく気にする人とそうでもない人に分かれると思います。私は、平日はサラリーマンで営業職なのですが、新入社員の頃にはどうせよく歩くから靴なんて履き潰せばいい!と思っていました」

そんな吉田さんが、靴が気になるようになったのは、友人の結婚式のために購入した一足の革靴がきっかけだった。

「頑丈なつくりとサイズ感が合う革靴を履いた時、こんなに歩き易いのだ、と驚きました。それで、営業にも履くようになって! 履いてみると、気持ちが引き締まると同時に足も疲れにくくなり、仕事に良い影響が出ることを実感するようになりました」と。

良いモノを身に着けると、しぜんに大事にしたくなることを体感し、靴のケアや保管方法の大切さに気づき靴磨きを独学で勉強したという。

靴磨きへの思いが強くなった吉田さんは、自らも靴磨きを通して多くの人に感動を与えたいと思うようになり、プロの職人のセミナーを受けながら独自でスキルを向上させていった。

地元西宮に目を向けるようになると、西宮の素敵な店や人にも出会う。「win-winになれるお店や、人との出会いが嬉しくて!」。こうして、平日はサラリーマン、週末は靴磨き活動という吉田さんのスタイルが生まれた。

「私たちもお肌のケアをしますよね。靴のケアもほぼそれと同じなのです。好きな革靴にもたまにはクリームを塗ってあげてください。靴用のクリームがなければ、お使いのハンドクリームでも構いませんから・・・・。」

 

 

お客様が喜ぶ顔が力になるようである。その前に自分が喜んで楽しく靴磨きをすることを何よりも心掛けている。そんな中から素晴らしい表情が生まれてくる。これが新しいビジネスを創り出す原動力になると実感した。

 

リポート&写真/ 渡邉雄二 

 

尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自然の大地に浮かぶ回転木馬 「伊藤弘之・私の視点5」展

2022-09-16 13:11:40 | 絵画

伊藤弘之先生の「私の視点5」が西宮市立北口ギャラリー第3展示室で18日(日)まで行われている。

 

 

今回の「視点5」ではアメリカ西部のグランドサークルの中にある自然の大地プライスキャニオンやグランドキャニオンの中に「メリーゴーラウンド」が幻想的な姿で浮かぶ。

そして一方では、日本の北の大地である「釧路湿原」の原野の中でキツネやフクロウと戯れる、メリーゴーランドから解き放たれた木馬が映し出されている作品が並ぶ。

共に大自然の中で浮かび上がる木馬の生き生きとした姿が印象的である。

 

伊藤先生の展覧会に伺うと、前回見た木馬たちの表情が違って見えてくる。同じ作品であっても時の経過やその時の空気感によってそう思うのだろう。さらに、描いたときの想いが伝わると、目の前にある絵に新しい息吹がふきこまれる。絵を前に立ち止まり語りかけると回転木馬が動き出すような気さえしてくる。

 

アメリカ・グランドキャニオンに映し出されるカルーセル

釧路湿原でキツネらと戯れる木馬

 

リポート&写真/ 渡邉雄二 

 

尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

法然が初めて念仏を唱えた光明寺の風景

2022-09-14 13:33:41 | 文化想造塾「神社仏閣」

                                        西山浄土宗光明寺

 

長岡京市にある西山浄土宗の総本山「光明寺」は、法然上人が初めて念仏の教えを説いた地とされている。法然上人が比叡山延暦寺を下り、浄土宗を開き、その20年後にこの地に念仏の法門を説いたことで「浄土門根元地」といわれている。のちに四条天皇が「光明寺」の勅願をあたえ寺名を改めたという。京都西山に脈々と法然上人の西山義が伝わっている。

 

本堂には、本尊である法然上人像の「張子の御影」の両側に西山浄土宗の礎を築いた高僧の像が並んでいる。前回にも記したが、蝋燭に灯がおちていたので残念ながら張子の御影は見えなかった。高僧4像は見ることはできた。撮影禁止なので木板に書かれた名前だけは許可を得て撮らせていただいた。

 

 

 

 

阿弥陀如来立像

 

本堂横にある法然上人の像

 

 

リポート&写真/ 渡邉雄二

 

尾道・文化紀行 https://asulight0911.com/hiroshima_onomichi/

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする