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アメリカレポート ニューヨーク ⑥
A Symphonic Homage and Prayer
THE SUFFERING OF THE INNOCENTS
《 エイブリ― フィッシャー ホール-2 》
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わたしは6月27日に最後のブログを書いて以来、実に23日間更新を怠ってきた。その間、いくつかの急ぎのアポイントメントをこなしたり、岩手、宮城の津波の被災地を回ったりしたが、実は、その間の多くの時間を翻訳作業にあてていた。何の?それは、ニューヨークのリンカーンセンターで行われたコンサートの2時間余りのヴィデオの日本語字幕の作成作業だった。映画館で洋画を見るのは嫌いではないが、あの字幕の作成がどんなに大変なものか、今回はじめて実際にやってみてよくわかった。その苦労の作業も私の手を離れた。さて、
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エイブリ―フィッシャーホールは、リンカーンセンターのメトリポリタンオペラハウスを正面にして右側にある、ニューヨークフィルのホームグラウンドだ。
今年、2012年5月8日午後8時から、今回のアメリカツアーのハイライト、キコの作曲したシンフォニー「無垢な者たちの苦しみ」の「交響的奉献と祈り」と題するコンサートが開かれた。
左は開場直後のまだがらんとしたホール だんだん人が入り始めたエイブリ―フィッシャーホール
開演まぎわ 3階の正面奥の席もほぼ満席
会場は指定席招待券を受け取った客で満席になった。その多くがニューヨークのユダヤ人社会の著名な構成員たちだった。開演前ステージにオーケストラとコーラスが入り、定刻になると、司会者が次のように始めた。
司会者のジュゼッペ・ジェンナリーニ
「皆さん、こんばんは。 今夜のイヴェントにようこそいらっしゃいました。わたしはジュゼッペ・ジェンナリーニです。イタリア人で、妻と6人の子供がいます。わたしは新求道共同体のアメリカの責任者です。
新求道共同体は今日のカトリック教会刷新の担い手の一つです。アメリカでは80の司教区に約1000の共同体があります。各共同体は約50人で構成されます。
そのほか全米に7つの神学校があって、新しい福音宣教のために司祭を養成しています。
今夜わたしは皆様の参加に感謝し、愛をこめて歓迎します。ユダヤ教徒の兄弟姉妹の皆様と他のすべての方々を歓迎します。
まず初めに、今夜ご出席の著名な方々をご紹介します。 なるべく短く、しかし出来るだけ多くの方を紹介したいと思います。
最初に教皇ベネディクト16世の国連代表チュリカット大司教様をご紹介します。ようこそいらっしゃいました!
前『教皇庁立コル・ウヌム』長官、ポール・ヨーゼフ・コルデス枢機卿。メキシコシティーのエルネスト R. カレラ枢機卿。ニコラ・ディマルツィオ、ブルックリン司教。ブルックリン補佐司教フランク・カッジアーノ。・・・」このあとにカトリック教会の著名な司教、関係者の紹介が続く。
「また、大勢のラビたちの御臨席をいただいています。 最初にラビ・デービッド・ローゼン師に感謝を捧げたいと思います。彼はこの企画を最初から推進し、今日わざわざイスラエルから来て下さいました。
次に、この夢のスポンサーになって下さったラビの皆様にごあいさつ申し上げます。 今夜わたしたちは愛と和解のためにここに集っています。彼らは私たちを支え励まし、勇気づけてくれました。」そして、このあとに客席前方に集まっているユダヤ教の著名なラビたちと指導者たちの紹介が延々と続く。名を呼ばれたラビたちは席から立ち上がって、振り向いて会釈したり、手を振ったり・・・。
さらに、この夜出席を希望しながら、他の約束に妨げられた二人のカトリックの枢機卿の手紙が読まれた。
先ずニューヨーク大司教、ミカエル・ドーラン枢機卿の歓迎の手紙
「親愛なる友人の皆様、わたしはこのインスピレーションに満ちた極めて意味深いイヴェントに皆様を歓迎できることを非常にうれしく思います。わたしはこの素晴らしい催しのことをわずか三か月前に知ったのですが、その時わたしはすでに大切な先約を受けており、皆さんとご一緒することが叶いませんでした。
わたしの不在は、キコと新求道共同体の演奏家たちに対するわたしの思いの不足を意味しません。このイヴェントに対する高い評価と現存するアブラハムの神の大勢の子供たちに、心から歓迎のあいさつを送ります。祈りをこめてみなさんに挨拶を送ります。」
続いて、送られた多数の手紙の中からウイーンのシェーンボルン枢機卿の手紙が読まれた。
「私は喜んで新求道共同体の国際チームが推進する交響曲的奉献と祈り『無垢なるものたちの苦しみ』をサポートします。
確かに、この企てはキコ・アルグェリョ氏の信仰と才能の果実です。それは私たち皆にとって愛と和解の行為です。
わたしたちは無垢な者たちの苦しみの神秘やアウシュヴィッツのような前代未聞の恐怖と犯罪の場所を前にして言葉を失います。しかし、音楽は原語や文化の違いを越えて語りかけ、この神秘に分け入り、和解の橋を架けるのを助けることが出来ます。
憎しみと暴力に打ち勝てる唯一のもの、愛を、今苦しんでいる人に与えることが出来るためにこのコンサートを通して神が私たちの心を清め神と私を、また私たち同志を和解させて下さいますように。」
さらに司会者は続けた。
「今夜わたし達は新しい出来事の証人となります。今夜わたし達は祈りをもって始め、祈りの後にラビ・ローゼンがキコを紹介し、キコはシンフォニーが何であるかシンフォニーの意味を説明し、シンフォニーの後でわたし達はコーラスを聴きます。 歌手エルシュティックに導かれたハンプトンのコーラスがエル・マレイ・ラッハミンを歌い最後にラビ・シュナイヤーがカディッシュを捧げます。
これがこのシンフォニーの夕べのあらましだ。普通のクラシック調のコンサートではない。そこには、多くの人の語りかけのことば、祈り、聖書朗読、賛美の歌などが織りなす独特の雰囲気があった。
大勢のユダヤ人とカトリック信者が、和気あいあいと交わり、互いを尊重し合う前例のない雰囲気がそこにあった。これはいったい何だろうか。ここから何が始まろうとしているのだろうか。
(つづく)