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久しぶりの野尻湖 遅い春
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4月16日日曜日、今年初めて野尻湖の山の家を開けに行く。窓の下の斜面にはやや遠くコブシの樹が花盛りだった。望遠で引き寄せると花の形までわかる。
ベランダのわきの山桜は風にはらはらと花吹雪。
と思ったら、霧が出てきた。山の天気は変わりやすい。
きっと今夜は雨だろう。降り出す前に水辺におりてみた。
晴れていれば、正面に雪を頂く妙高の勇姿がそびえていているはずなのだが・・・
4月17日 薪割りをしたり、スーパーに買い物に行ったり、県境を越えて新潟県の赤倉温泉に入りに行ったり。
4月18日 朝までに雨は止んで、水芭蕉を見に戸隠の奥社へ。修験道の山はのこぎり状の尾根に薄いガスをまとっていた。
足元にはまだ消え残った雪が。あと何日で姿を消すのだろう?
戸隠神社の奥社はこの鳥居からまだ30分の道のり。最後は険しい石段だ。
鳥居の足元には下馬とあり、昔はどこかに女人禁制の札もあったか・・・
トレッキングコースは長・短お好み次第。水芭蕉の群生地も道しるべが教えてくれる。真っ盛りを期待したのに、まだ白い蕾が湿原からやっと顔をのぞかせたたばかりで寂しかった。緑の葉はまだ出ていない。やはり盛りは初夏を待たねばならないか。
若いころには、夏の「はるかな尾瀬♬♪」に何度も行ったものだった。
寒いと思ったら、季節はずれのボタン雪が降り始めた。83年の人生で、ふとすれ違った素敵なお嬢さまたち。 さっき戸隠の峰がかすんで見えたのは雪だったのか?
池塘の水芭蕉の花もこれでは首を引っ込めたくなるわけだ。今日のトレッキングは雪のため中断。最短コースで車に戻って暖をとる。
4月18日 夜通しの雨が朝は濃い霧に変わった。霧が晴れると初めて青空になった。昼はリッチに山の上のレストランを予約して出かけた。森の道を行くこと30分。このアクセス道路は私のお気に入りだ。小さな峠を越えて田畑や農家を眺めながら、ゆっくりと食欲を準備するドライブになる。あたりにはあらゆる花が一斉に咲きそろう。
どの木もみんな若々しく装う。秋にはもう一度紅葉で目を慰めてくれるのだ。
この木は梅でも桜でもない。さりとて、リンゴでもナシでもない。はて、何の花?
路傍には道祖神や石仏が
この木、遠目には枝ぶりがリンゴに見えたが、花が違う。だが、果樹特有の剪定をほどこされた枝ぶりは、絶対に桜ではないと思う。
ようやく丘の上のレストランにたどり着く。2代目で先代の社長の奥さんはプロテスタントの牧師さんだった。だからチャペルがある。そこで結婚式を挙げて、こちらで披露宴という流れになる。私も日本人の花嫁とアメリカ人のカトリックのカップルの結婚披露宴をこのレストランで祝ったことがある。そこには、タンザニアから嫁いできたフィディアさんという小柄な女性がウエイトレスをしている。彼女は働きながら故郷に学校を建てるなど、明るく優しく素晴らしい活躍をしている。彼女の数奇な人生を描いた絵本も売っている。たまたまカトリック信者で神父の僕とはもう長いお付き合いだ。
この会社はワインとリンゴ酒で世界的に有名だが、農場のリンゴの樹もブドウの樹もまだ葉も花もつけてはいない。
レストランの窓の外に急に雲がわいてきた。遠い山が海に浮かぶ島のようになった。
レストランの周りには色とりどりの草花が
その夜、100年前にプロテスタントのドイツ人牧師が、日本人の大工さんを指導して建てたこの小さな山小屋には、どっしりした暖炉がある。太いマキを燃やし、ワインを味わいながら夜更けまで音楽を聴く。至福の時だ。明日は山を下りて、またシャバに戻ることになる。
4月19日、峠を二つ超える近道で長野盆地に下るのだが、その前に、念のため秘密の花園をチェックしに林に入る。実は、家のすぐ目と鼻の先の思いがけない場所に、水芭蕉の小さな群生地があるはずなのだが・・・。
あった!戸隠の森よりも圧倒的に緑の葉が育っている。戸隠の森より野尻湖は300-400メートル標高が低いからだろうか。
長野盆地に下りきるあたりにりんごの果樹園があった。
やっと出会ったりんごの花。初めて見たのはドイツだった。その後ヨーロッパの各地で。そして今信州で。白い花だが、蕾の時はほのかにピンク色をしているのがなんとも愛らしい。
帰りの新幹線は昼過ぎなのに少々混んでいた。缶ビールいっぱいで昼寝をしているうちに東京に着いた。神様がお許しなら、今年もまた何度か山の隠れ家に篭りたいものだ。
天候に恵まれたのか、恵まれなかったと言うべきか、実に目まぐるしく天気の変わる3日間だった。
(終わり!ただそれだけ)