1936年に行われたベルリンオリンピックの映画と日本人選手の活躍を描いたノンフィクション。
オリンピック映画を撮影したレニ・リーフェンシュタールへのインタビューと映画を基に、日本人の活躍と当時のオリンピック熱を描く。
オリンピックになると、日本中が大騒ぎになっていたのは今も昔も同じだったようです。日の丸を背負って、ベルリン大会に出場した選手には大きな期待が掛けられ、栄光を掴み取った選手もいれば、力及ばず敗退した選手もいました。勝った選手、負けた選手それぞれの生い立ちから、出場までの経緯、競技の内容、オリンピックのエピソードやその後の人生など、緻密に取材されていて大変面白かった。
レニ・リーフェンシュタールへのインタビューでは、映画を撮影する至った経緯や、撮影中の様子、ヒトラーとの関係、映画がもたらした影響など、これまで語られて来なかった内容が含まれている。
オリンピックのドキュメンタリー映画も、実は創作(再現)部分があり、当事者に演技してもらった映像が含まれていたというのは意外だった。確かに撮影機材が進歩していなかった当時は、気象条件や日没などが影響し、少ない機材で一回限りの競技を確実に撮影するのは難しかったのだろう。当時の映画関係者の苦労も理解できる。
また、当時の日本でのラジオ放送は、時差の関係で生中継できず、録音技術も無かったことから、100m走の中継はアナウンサーが見たことを、さも生で見ているかのように実況する放送だったらしい。たかだか10秒で終わる競技が、架空の実況だと30秒も掛かってしまうようなおかしな放送になったというエピソードは面白かった。陸上に限らず、水泳などでも同じような事が起きていたらしい。著者によるこのオリンピック映画の謎解きもテーマのひとつだが、それよりもベルリンオリンピックに関わった人達の、さまざまな人生ストーリーや失敗談のほうが面白かった。