5月は修学旅行の季節です。
私達は関西の方へ出かけました。私は初めて新幹線に乗りました。
嬉しくてドキドキしたものです。白い光の超特急ですからね。
車内で同行のカメラマンの人が写真を撮っていましたから、私も記念に撮ってもらいたいなと思いました。
卒業アルバムに載せるという事で、写真に写りたい希望者は沢山いました。
そのせいか車内撮影での私の希望は叶いませんでしたが、
新幹線の車内で写真を撮ると変に写るから、写らない方がよかったよと囁かれて、
半信半疑、これでよかったのかもとも思いました。
それで、,友人と見る車窓からの光景の方に心を奪われていました。
私が関西へ行くのは大阪万博以来初めての事でした。
2泊3日程の行程でしたがそれなりに思い出はあります。
要所要所の観光名所巡りはもちろん、カメラ片手に各地で沢山の写真撮影をしたのは初めてでした。
とうとうフイルムが終わり、交換する事になりました。
一応交換の仕方は習っていたのですが、小学校の5年生の時の事です。
4年も経つとすっかり忘れていて、どうやってカメラを開けるのか分からなくなってしまいました。
友人も先生に見てもらったらと勧めるので、担任の先生を探します。
3学年の担任は男の先生でしたから、カメラの扱いも慣れておられるだろうと心丈夫でした。
漸く姿を見つけて事情を話し、カメラを見てもらいます。
流石です、ぱかっとカメラが開きました。
フイルムの巻取りだけは私にも分かり、もう巻き取ってありましたから、今までのフイルムをもらいます。
私は新しいフイルムを先生に手渡します。
先生はフイルムを中の突起に合わせてはめ込み、あれこれと操作されるのですが、
何故か新しいフイルムは巻き取られて行きません。
上手くセットできない内に集合の掛け声がかかり、如何しようと思いましたが、
目の前に担任の先生がおられるので、集合場所に遅れてもこの事情が分かり大丈夫だと思います。
何しろ、点呼を取るはずの先生がまだ集合場所にいないという事が一目瞭然です。
集合時間から少し過ぎたので、私と友人、先生だけとなりました。
周りに同級生の生徒はもちろん他の先生もいなくなってしまいました。
「いやあ、君たち、先生が待っておられるから行きなさい。」
と言われ、いえ、大丈夫ですと言いながら、私達は一寸怪訝には思います。
知らないカメラだと勝手が違うから分からない、他の先生に見てもらうよと言われます。
それで、クラスと名前は?と尋ねられて
私達は絶句です。
「それで、君は何組の何という名前かね。」
黙っていてもしょうがないので、私は正直にぽそりと
「○組のJunです。」
と、答えます。
それまではカメラと私達に交互に視線を移しておられた先生でしたが、
改めて確りと私の顔を見て、
いやぁ、○組と言えば私のクラスだね、と仰います。
いやぁ、はは…君、君は大人しいから、覚えていなかったよ。
そう言われて、
…それで私の所へカメラを持ってきたのか、と、そうか、と何だか納得しておられました。
その時、
あっ、と小さく声に出して、Fさんは身を翻すと私とJさんを残して先に行ってしまいました。
私はどうしたのかなと一瞬思いましたが、Jさんと2人で先生の前にいました。
それなら後からカメラも持って行きやすいと先生、
とりあえずもう行きなさいと言われ、私達は急いで集合場所へ向かいます。
私達はバタバタと駆け足です。
先生はその場に残られました。
私達が集合場所についてみると、クラスの皆は担任の先生が遅いと文句を言っていました。
他の皆が、先生まだ来ないんだよ、見つからなくてよかったねと私達に言ってくれました。
事情が分かっている私達は、もう少ししたら来られると思うよと、したり顔をしていました。
まだ5分くらいかかるかもね。
そういうと皆、えーっ、何で、どうして分かるの?
このクラスだけ…という感じで、
何分待ったと思っているんだ、等々、男子の苛ついた声が上がっていました。
私達、いえ、私のせい、先生のせいかな?なんて、言ったかもしれません。