負けられません!
私は、問題集を盗んだ犯人に対して俄然ファイトを燃やしていました。
犯人というより、試験に対して意欲を燃やしていました。
問題集をとって行ったという事は、私の点数を下げることが目的なのだなと思っていました。
学年で1番2番という訳じゃ無しそんなにライバル視されるような順位でもない私に、
一体どんな恨みがあるというのでしょう?
それでも、とにかく私の勉強の邪魔がしたいのだと、そんな犯人の思惑通りに点数を下げていてどうする、
悪質で卑劣な犯人に、負けられませんと、せっせと頑張りました。
きちんとした知識習得をと思うのですが、自分が見ていない問題を、既に見て練習し、
解く事になる皆に対抗するにはやはり不安がありました。
皆より確実に解く時間は遅くなります。
正しい解答に辿り着く確率も低くなりそうです。
やはりどうしても不安になり溜息が出ます。
こんな時の友人頼みと、試験前の10分休みに、5分でもよいから問題集を見せてもらえないかとJさんに頼んでみました。
試験の席順は出席簿通りでしたから、試験時、丁度良くJさんは私のすぐ後ろの席になるのでした。
嬉しい事にJさんは、いいよと引き受けてくれました。
これで少しはほっとしたものです。
結論から言うと、実力テストには新年度の問題集から出題されている物が1問ありました。
Jさんの問題集と、自分の問題集の新旧の両方を知っていた私は、この事が分かりとても驚きました。
新しい問題集を手に入れていて、得をした気分になりました。
そして、Jさんに申し訳なく思いました。
そこで彼女に実力テストの問題の出され方について正直に話すと、次のテストの10分休みには問題集を交換して、
Jさんにも得をしてもらうことにしました。