ねえ兄さん、如何しようか?
困ったなぁ。源と澄の2人は1日に3回もやって来た蛍さんに、とても気の毒に思うと、近付く事も出来ないでいました。
お寺さんの奥さんもなぁ。兄さんも悪いよね。そんな事をぼそぼそ言い合っています。
「今度は誰が迎えに来るのかしら?」
溜息を吐きながら澄は言います。
「いいんじゃないか、このまま此処に置いておいて。」
源が言います。あいつもこの子がいなくなった方が少しは懲りるんじゃないのか。
ふふんという感じで、源は皮肉たっぷりな語調で言葉を吐き捨てる様に言うのでした。
さて、蛍さんはこの世界の前回の記憶が全く無かったので、行き成り辿り着いた不思議な世界に、
また此処は何処だろうと不安に思って仕舞うのでした。
側には誰もいないので、灰色の山の傍できょろきょろ辺りを見回しています。と、見慣れない男の人が歩いて来ました。
何やらブツブツ言っています。蛍さんは話しかけてみようと思います。
すると、目の前に急に知らないお姉さんが現れて、通せんぼするように両手を広げて笑います。
「だめよ、あの人に話掛けちゃ。」
知らない人と話をしてはいけないと言われたんでしょう、お友達に。そんな事を蛍さんに言ってきます。このお姉さんはもちろん澄さんです。
澄さんが話掛けてはいけないと言った男の人がこの場に出てきたので、機転を利かせて蛍さんの前に現れたのでした。
「あの人はね、外国の人よ。」
澄さんにそう言われて、蛍さんが近付いてくるその人をよく見ると、確かに日本人とは違っています。
もじゃもじゃした茶色い髪で茶色い目をしています。傍にいる2人に気も留めずに歩いてそのまま行ってしまいました。
「ああいう外国の人は、私達とは考えが違うから話してもしょうがないの。」
そんな事をぽつりと言います。考えが違う?不思議な言葉だなと蛍さんは思います。
「考えが違うって?」どういう事?彼女はお姉さんに聞いてみました。
話しても分からないわとお姉さん。あなたはまだ小さいから言葉も知らないでしょうし。そうねえ、神様は分かるんでしょう。
いえば、私達の神様、仏様と、あの人達の崇める神様は違っているのよ。
「あがめるって?」そう蛍さんが聞くので、澄さんはやっぱりと肩を落としました。
小さい子に言葉を説明するのは難しいのよね。と、拝むとか、手を合わせてお祈りするでしょう、あれの事よと説明します。
「神様が違う、お祈りする神様が違う、それって、宗派が違うっていう事?」と蛍さんが言います。
あれぇと、澄さんはびっくりします。その言葉知っていたの。と笑顔になりました。
何だか、自分の子孫もまんざらじゃないわねと可笑しそうにくっくっくと笑います。
あの子の方は知らなかったのよ、さっきお祖父様に教えてもらってもピンと来てなかったようだったし。
「蛍ちゃん、凄いじゃないの、お利口さん。」
そうお姉さんに褒めれれて、どんなもんだいと得意になる蛍さんでした。