Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダリアの花、65

2017-03-01 21:06:06 | 日記

 ねえ兄さん、如何しようか?

困ったなぁ。源と澄の2人は1日に3回もやって来た蛍さんに、とても気の毒に思うと、近付く事も出来ないでいました。

 お寺さんの奥さんもなぁ。兄さんも悪いよね。そんな事をぼそぼそ言い合っています。

「今度は誰が迎えに来るのかしら?」

溜息を吐きながら澄は言います。

「いいんじゃないか、このまま此処に置いておいて。」

源が言います。あいつもこの子がいなくなった方が少しは懲りるんじゃないのか。

ふふんという感じで、源は皮肉たっぷりな語調で言葉を吐き捨てる様に言うのでした。

 さて、蛍さんはこの世界の前回の記憶が全く無かったので、行き成り辿り着いた不思議な世界に、

また此処は何処だろうと不安に思って仕舞うのでした。

側には誰もいないので、灰色の山の傍できょろきょろ辺りを見回しています。と、見慣れない男の人が歩いて来ました。

何やらブツブツ言っています。蛍さんは話しかけてみようと思います。

すると、目の前に急に知らないお姉さんが現れて、通せんぼするように両手を広げて笑います。

「だめよ、あの人に話掛けちゃ。」

知らない人と話をしてはいけないと言われたんでしょう、お友達に。そんな事を蛍さんに言ってきます。このお姉さんはもちろん澄さんです。

澄さんが話掛けてはいけないと言った男の人がこの場に出てきたので、機転を利かせて蛍さんの前に現れたのでした。

 「あの人はね、外国の人よ。」

澄さんにそう言われて、蛍さんが近付いてくるその人をよく見ると、確かに日本人とは違っています。

もじゃもじゃした茶色い髪で茶色い目をしています。傍にいる2人に気も留めずに歩いてそのまま行ってしまいました。

「ああいう外国の人は、私達とは考えが違うから話してもしょうがないの。」

そんな事をぽつりと言います。考えが違う?不思議な言葉だなと蛍さんは思います。

「考えが違うって?」どういう事?彼女はお姉さんに聞いてみました。

 話しても分からないわとお姉さん。あなたはまだ小さいから言葉も知らないでしょうし。そうねえ、神様は分かるんでしょう。

いえば、私達の神様、仏様と、あの人達の崇める神様は違っているのよ。

「あがめるって?」そう蛍さんが聞くので、澄さんはやっぱりと肩を落としました。

小さい子に言葉を説明するのは難しいのよね。と、拝むとか、手を合わせてお祈りするでしょう、あれの事よと説明します。

 「神様が違う、お祈りする神様が違う、それって、宗派が違うっていう事?」と蛍さんが言います。

あれぇと、澄さんはびっくりします。その言葉知っていたの。と笑顔になりました。

何だか、自分の子孫もまんざらじゃないわねと可笑しそうにくっくっくと笑います。

あの子の方は知らなかったのよ、さっきお祖父様に教えてもらってもピンと来てなかったようだったし。

「蛍ちゃん、凄いじゃないの、お利口さん。」

そうお姉さんに褒めれれて、どんなもんだいと得意になる蛍さんでした。


ダリアの花、64

2017-03-01 20:29:20 | 日記

 台所で手持無沙汰な蛍さんの父は、奥様にまで酷く心配を掛けて申し訳ない事です、と愛想よく話し込みます。

「いやあ、あれも狸寝入りなんかして、冗談のうまいやつでしてね、いつも私は騙されるんですよ。」

そう冗談めかして、奥様の心労をいといます。あの調子なら大丈夫でしょう。念のためもう少し冷やしてやろうと思いまして。

など、いかにも親然として余裕の笑顔で喋ります。

 「まあ、あの子そんなに癖の悪い事をする子なんですか。」

奥様は水道の水を流し、水が冷たくなるのを待ちながら、タオルを洗面器に入れて水に浸す頃合いを見ていました。が、

そんな子なら真面目にタオルを冷やす事も無いと、自分はあんな子の芝居を真に受けて悲しんで損をしたわと思います。

一寸あの子に意見しないと、こんなに優しいお父さんに泣くまでの心配を掛けて、とムカムカと怒りが湧いて来ます。

奥様は正義感を炎の様に燃やしました。

 蛍さんの父に、あの子の世話は私がしますから、お父さんもお疲れでしょう、座敷で休んでいてくださいと労います。

父は言われるままに、これはこれはありがたい事でと、それではと蛍さんの事は奥様に任せて、

皆のいる座敷の方へ回りました。途中の廊下でのんびりと庭の木や造りなどの風情を鑑賞しています。

『心配したような事にならないようでよかった。』

ホッとして夏の日差しに眩い広葉樹の葉の照り返しなど明るい気分で眺めていました。

 さて、奥様の方は、蛍さんの父が廊下に姿を消すやいなや、敢然と立って洗面器にあったタオルを手に取り、

絞る間もあればこそ、さっと台所から踊り出ると、どすどすと足音も荒く蛍さんの側へやって来て怒鳴りつけました。

 「この狸寝入り娘!」

自分の大声に蛍さんの驚くのも待たずにその胸倉をひっつかみ、ぐらぐらと彼女の体を揺すって、ぺしん!とその頬を打ちました。

「お父さんに心配を掛けて、如何いう子なんだ。」

と、その性根を叩き直してやる。とかんかんです。

 この勇ましさに、隣の間で談笑していた人々は何があったんだろうと、声の方の様子を窺います。

まさか具合の悪い子を奥様が叱りつけているとは誰も夢にも思わないのでした。

 誰か玄関に来た出入りの人に文句があったのだろうと、住職さんは何時もの事と皆に気を使わないで下さいと話します。

そうこうしている内に、庭先の廊下の方から蛍さんの父が呑気に座敷に入って来ます。

祖父は自分の子の看病をしているはずの息子が、如何してそんな所にいるのかと驚きます。

お前蛍は?と聞くと、寺の奥様に任せて来たと答えます。私に任せてくださいと言われたんだ。親切な奥様だな。とご機嫌です。

 祖父の方は、先程のお寺の奥様の剣幕と物音が、やはり自分の孫に対してのものではないかと不安になりました。

祖父はいやあな予感がします。まさかとは思いましたが、先程の座布団の件を思い出しました。渋い顔になると、

息子に一寸おいでと声をかけて、立ち上がると息子を伴って襖のこちら側、蛍さんの寝ている場所を覗き込んでみます。

はたせるかな、蛍さんは座布団から半身を放り出したような状態で仰向けになり、白目をむいて気絶していました。


ダリアの花、63

2017-03-01 12:08:54 | 日記

孫の顔を近くで見ると、小さくて可愛いらしい唇の間からから、すーすーと寝息が漏れています。

ふふふ。祖父はやっぱりなとほっとしました。そして、息子の早合点に呆れてしまいました。

微笑みながらタオルを手できちんと畳んで、蛍さんの頭に載せると立ち上がりました。

祖父は振り返りながら息子には真顔で、お前がそう言うのならもう亡くなったのかもしれないな、と無頓着に言うと、

「お寺の奥さんに言って、タオルを冷やしてもらいなさい。今度はちゃんと畳んで頭に載せるんだよ。」

と笑顔で指図して、にこやかに嬉しげな足取りで皆のいる奥の部屋に戻って行きました。

 『何だい父さんのやつ、もうだめなのに』

何を嬉しそうに言って、変なのと思います。それでも、何となく父は蛍さんにもう1度声をかけてみる事にしました。

「ホーちゃん、おーい。」

父はしゃがんで蛍さんの耳元で言葉を掛けました。耳の傍で自分を呼ぶ声に、蛍さんは目を覚ましました。

 「なあに、お父さん、眠いのよ、寝かせて置いて。」

むにゃむにゃと、本当に酷く眠くて、睡魔に襲われた蛍さんはろれつも回らない声で答えます。

 『おや、まだ息はあるんだ。』

驚いた蛍さんの父の胸には、今しがたの祖父の嬉し気な様子といい、何かしら希望の光のような物が点りました。

『父さんの言う通りだ、最後まできちんとしてやろう。もしかしたら大丈夫かもしれない。』

そこで、タオルを蛍さんの額の上からとると、奥の台所へと向かいました。

案外この位の小さい子は大丈夫なものなのかもしれない。大人ならもうだめだろうに。そんな事を思いました。

 父が廊下に出て、曲がって台所へ行こうとすると、丁度角の所で奥様が屈み込んで泣いている所に出くわしました。

いや、これはこれは。父が驚くと、奥様もああ、と照れて苦笑いしてしまいます。

「如何しました。」

父が声をかけると、いえ、お宅のお子さんが、今しがたまで元気だったのにと思うと、と、しみじみとされます。

父も、これはご心配を掛けてと、実はまだ息がりまして、このタオルでもう少し冷やしてやろうと思いましてね、

ぬるくなっているので冷たくしてもらえませんか、と、手のタオルを預けました。

 奥様の方は、あら、そうですか、ではまだ元気なんですねと、急に嬉しさが込み上げて来て、

立ち上がるといそいそとタオルを冷やしに台所へ向かいます。

 

 


ダリアの花、62

2017-03-01 11:19:55 | 日記

 じーっと身動きしない蛍さんに、もう息は無いのかもしれないと父は思い、一寸試しに声を掛けてみます。

「蛍、ホーちゃん、寝てるのかい?」

蛍さんは物も言わずに寝込んでいました。父はどうやらもう息は無いのだとがっくりと来ました。

それで急いで奥へ引き上げると、祖父や皆に蛍はもう息をしていないと告げるのでした。

 「そんな馬鹿な。」

祖父は言って、お前ちゃんと子供の脈はとってみたのかと聞きます。

父は、脈を取ら無くたって見ればわかるよ。呼んでも返事もしなかったし。としんみりと答えます。

うーむと祖父は唸りましたが、祖父にすると行き成りの蛍さんの死が如何も釈然としません。

何しろ、本堂から息子とお寺の奥様に抱えられて孫が運ばれて来た時、心配で直ぐに孫の様子を見たのです。

その時、孫はちょこんと顔を上げて、祖父と目が合うとにっこりと笑い、

やはり孫に向けてにっこりした祖父に応じるように、可愛い紅葉のような手を振ったのでした。

 「私が見た時は元気そうだったがなぁ」

祖父は解せないと言うように言います。父は何時の話だと言いながら、今はもうだめなんだよ、あの子は死んだんだ。

と呆れたように言うのでした。祖父は今だよ今、お前達が運んで来た時だよ。あの子は元気で笑って手を振っていたよ。

祖父は息子の言う事が変だと言わんばかりに、息子に言い寄ります。だから、脈は取ったのかと聞いたんだ。

「あの子はよく寝る子だろ、また寝たんじゃないかい。」

祖父にそう言われて、父も家族も、何だか一縷の望みのようなものを感じます。祖母もホーちゃんはよく寝るからねぇ。

と言い、母もあんたさんが寝る子は育つと言ってよく寝かしつけているから。と言います。

 「論より証拠、あんたさんも一緒に行って見てきたらどうです。」

そう祖母が言い、祖父は言われて立ち上がりました。父の方は祖父に腕を取られて不承不承に立ち上がると、

2人で隣の部屋の襖の陰に寝かしつけてある蛍さんの様子を見に行きます。

「ほらね、身動きしないだろう。」

父は祖父に言います。祖父はどうれとそーっと蛍さんの顔に自分の顔を近付けて、無造作に置かれていたタオルを退けてみます。


何時もは飾ります

2017-03-01 10:15:45 | 日記

 何時もは飾りますが、今年はまだ飾っていないのでこのままかなと思います。

昨年は手作りのテディベアのお雛様を飾りました。今年はまだ仕舞ってある箱を開けていません。

そこで、気になっているのがベアの鼻と口周りです。

 最近気付きましたが、通年でお部屋に飾ってあったやはり私の手作りテディベアに、

鼻と口周囲に大きくベージュのきわがついて居ました。ベアだけにくま取りが付いていたのです。

これは、誰かがパクンと食わえ込み、チュパチュパと吸い付いたのでは?と、

私は部屋に出入りしていた子供達の顔を思い浮かべました。

 その中の誰でしょう?1人か、複数か。そんな事を考えて、その儘にも出来ないのでお洗濯です。

ぬいぐるみは洗濯機で洗うと型崩れするので、まずは洗剤液に漬け込みました。

2、3日クマの顔を下にして漬け込んで、ひっくり返して見ると、くま取りは消えたようです。

それでもそ―っときわが付いていた部分を撫で洗いして、もうこれであとはすすいで干すだけと陰干し。

 ストーブのある時期なのでストーブのある部屋で乾燥させました。5日ほどして漸く中綿も乾いて来たなと眺めてみると、

ボデイは綺麗に白っぽく洗い上がっていましたが、よく見ると乾燥した顔の布地にはやはりベージュのシミが残っています。

一部取れなかったのねと残念に思っていましたが、猶よく見ると、やはり鼻周囲にはそれと分かるシミがうっすらと丸く残っています。

嫌だわ。誰かしら?

ぬいぐるみの鼻に食いつきたい衝動って、子供にはあると分かるのですが、

「これ作るの結構手間なのに、食いつく子はきっとそんな事は思いもしないのよね。」

と、文句ぶうぶう。になってしまった私なのでした。

 ああ、雛ベアの箱を開けて、お雛様の顔を見るのが怖いです。なかなか洗えないのよね、ぬいぐるみって。

しかも洗っても落ちないし、涎のあとって。しかも仕舞ってから1年経ちます。確実に落ちませんね。

という事で、今年は箱が開けられないお雛様は、とても飾れそうにありません。