Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

ダリアの花、104

2017-03-27 20:28:33 | 日記

 「あの子もそうだったんじゃぁないのかなぁ。」

祖父は言います。

周りの子にあれこれしている余裕はないと踏んだんじゃないのかなぁ。

祖父のその言葉を聞いて、祖母は黙りました。

 浜を走りながら、祖母は娘の様子を一心に見つめていました。息子の事は眼中になかったのでした。

何時しか娘の傍に息子が現れ、ちょんちょんと構いだしたので何をする気なのかと戸惑い、そうかと、

あの本を読んだのだと合点して、どうして妹に、また、今あれを行うのかと、酷く驚いたのでした。

 何も今試さなくても、そう思う内にも妹の方は見る見る弱って行くのでした。

母は取るものも取り合えず2人の傍にザバザバと泳ぎ駆けつけます。

ブクブク泡立つ水の中、苦しそうな娘のぐったりした様にカーッと来ると、思わず手が動いてしまったのでした。

母にはどう考えても、兄が妹を虐待しているとしか思えなかったのでした。

兄が妹の急を知るまで潜水していて、海面に出て来て行き成り妹の危機を知ったという事を、母は全く把握していなかったのでした。

 夫は兄の言い分を妻に伝えた物かどうかと思案しました。今更妻に言ってみても妻を苦しめるだけと思い、

しかし、このまま妻が息子を誤解したままにしておくのも息子が可哀そう、いや、真実を妻が知らないままでいる事が気の毒だと、

夫は真実を語ることを決意しました。

 「さっき、光があの灯篭にぶつかって気絶した話を、お前は知っているんだろう?。」

祖父の言葉に、祖母はええ、娘から聞いたわと答えます。あの子光の事を酷く怒っていて、

何でも素手の女の子に箒で叩きつけたとか、自業自得だとか、天罰だとか、馬鹿な子だって言って、

光が言った冗談にも馬鹿って言って叩くものだから、あの子可哀そうに庭に落ちて踏み石で頭をぶつけたのよ、

それで目の軸がズレてしまって、斜視になってたのよ、一時的なものだろうけれど、可哀そうに。

こんな事初めてだってあの子に言ってやったら流石にしょ気てたわ。と、祖母はうふふと笑います。

「あの子もよく軸をずらしていたわねぇ。」

「闊達だったからね。」

 

 

 


ダリアの花、103

2017-03-27 20:03:14 | 日記

 さて、光君の祖父母は息子の事についてお互いに忌憚のない意見を述べ合います。

光君の伯父である息子が何処であの救助法を知ったのかというと、光君の祖父である父の会誌からでした。

光君の母である娘が溺れた時、光君の祖母である母は息子が救助しようとしていた事に気付かなかったのか、

母は例の救助法を知らなかったのか、父の会誌を読んでいなかったのか、など聞かれると、祖母は答えます。

「勿論、知っていたのよ。」

祖父は妻の答えにやはりと思います。

「それならどうして」

と言葉をとぎらせます。 叩く事も無かっただろうにと言いたかった言葉を飲み込むと、

「何故叩いたりしたんだい。」

返事によっては妻についての態度も今後は考えて行こうと思います。

 「知っていたから、あの子がそれを妹で試そうとしている事に腹が立ったのよ。」

「妹を溺れさせて助けるなんて、酷いじゃないの。」

だから私は腹が立ったのよ。溺れさせることまでしなくていいでしょう、妹なんだから。

わざわざ妹に苦しい思いをさせるなんて。あの子は何故浜にいた他の子から浮き輪を借りるという事をしなかったのかしら?

あの子の事だから、有無を言わせずに他の子から浮き輪ぐらいすぐに奪い取って助けに行けたはずよ。

なぜあの子は浮き輪なしで妹の所まで行ったんだと思う?

「さあねぇ。」

祖父は何だか寡黙になるのでした。

 「あの子、自分が新しく知識として得た救助法を試したかったのよ。」

その為に自分の妹がどんなに苦しむかなんて考えなかったのよ。いえ、どうでもよかったんだわ。

だから私は腹が立ってあの子の事をぶったのよ。そう激高して妻が言うと、夫は沈みながら、

「お前だって、浮き輪を借りずに直ぐ2人の所へ向かったんじゃないのかい。」

お前は如何して浮き輪を借りなかったんだい。そう夫に言われて、

「私の時にはもう一刻を争うような事態に見えたから、とても周りの子に話をしている余裕が無かったのよ。」

そう妻は答えるのでした。

 


一寸ひと休み

2017-03-27 11:05:41 | 日記

 

季節になるので春の花。

 以前、行った事がある植物の施設での写真です。チューリップの群植が見事です。

色彩に溢れる花々に、つい写真を撮りたくなる人ばかり。最近は携帯でパチリ、パチリと手軽です。

  余談ですが、父が亡くなる頃、春まで持たないかもしれないと言われていた父の部屋に、

出始めのチューリップの花を飾ったところ、これが父にかなり不評でした。

 何だか嫌な顔つきでチューリップを眺めているなあとは思っていました。

介護に来られた方からも、お父さん、チューリップ嫌いみたいです。と一言あったくらです。

目に見えて分かる嫌悪感だったんですね。

 それでチューリップ入りの花瓶は取り下げて来て、何年か前に買ってその年初めて蕾が来て花開いた胡蝶蘭を、

バスケットに入れリボンなどで飾ってそれらしく仕立て、お見舞い風に部屋に飾って置居たところ、

父は目を細めて喜び、満足気にその花、バスケットのリボンなどを眺めていました。

『贅沢な花なら気に入るんだから。』

と私は内心苦笑いしていました。

 何でも育ててみるものですね、葉だけの株で何年か来て、丁度その年花開いてくれた花に感謝して、

蘭も家で栽培できるのだと嬉しいような、父の最後の年に開花してくれたのだと感慨深いような、

奇麗な花だけに様々に思った物でした。何にしても高価な花に変わりはありません。