階段を少しだけ下りたところで電話をかけた。職場につながるはずが、再生されたのはスタンド・バイ・ミーだった。気を取り直してもう一度試みるが、今度はダウンタウンボーイが再生される。何度やっても、つながらない。もはや圏外に入っているのか。一曲ずつかけていたのでは効率が悪いので、シャッフル再生にすることにした。謝罪のための連絡に手間取っていては、ますます遅刻時間が長くなるだけだ。あきらめて階段を下りることにした。
一番端の車両に乗り込んだ。車内は空いているのに、一座は運転席になだれ込んで騒いでいる。この路線では当たり前のことなのか、師走の勢いがそうさせるのか。半裸の男が酔っ払い女に絡んでいるのを、見ない振りをしながら車窓を眺めていた。ジョー(仮名)がやんわりと止めに入っている。その様子を少し頼もしく思いながら、川の向こうに突然現れた墓石を見送っていた。
停車駅で女はホームへ降りたが男はまだ手を放さない。乗り込んでいる人たちともつれ合いながら妙な形になっている。
私はふんわりと体を入れた。
(さあ離れな)
2人の間を切った。
「まああんな女、飯食って逃げられるよ」
ジョーがそう言って慰めている。
「そうだな」
半裸の男の顔からは笑みが零れている。
根はいい奴のようだ。
一番端の車両に乗り込んだ。車内は空いているのに、一座は運転席になだれ込んで騒いでいる。この路線では当たり前のことなのか、師走の勢いがそうさせるのか。半裸の男が酔っ払い女に絡んでいるのを、見ない振りをしながら車窓を眺めていた。ジョー(仮名)がやんわりと止めに入っている。その様子を少し頼もしく思いながら、川の向こうに突然現れた墓石を見送っていた。
停車駅で女はホームへ降りたが男はまだ手を放さない。乗り込んでいる人たちともつれ合いながら妙な形になっている。
私はふんわりと体を入れた。
(さあ離れな)
2人の間を切った。
「まああんな女、飯食って逃げられるよ」
ジョーがそう言って慰めている。
「そうだな」
半裸の男の顔からは笑みが零れている。
根はいい奴のようだ。