楽しみはいつも最後まで残してある
君は箱の中に指を差し入れた
何も触れるものがない
奥へ奥へ とうとう一番奥までいった
箱の突き当たり 指は何も触れなかった
最後のチョコレートが見当たらない
すべての手を引いて
もう一度気を取り直して
まだ少しはあったはず 少なくとも一つくらいは
君は箱の中で指を回して隅々をみた
空っぽだ! そんなはずはない!
君は箱を高く持ち上げて揺さぶりをかけた
中身があるなら音がするはず
音はしない
箱をひっくり返すと中身を乱暴にぶちまけた
中身があるあるなら何かが落ちてしまうはず
何も落ちない
君は箱の蓋を完全に閉じて現実を遮断する
冷蔵庫からお茶を取り出して一口飲んだ
散らかった部屋を軽く片づけた
過去一週間の出来事をざっと振り返った
頃はよし
君はもう一度蓋を開けて
ゆっくりと箱の中へ指を差し入れた
チョコがない!
いったい誰がこんなことをしたのだ
あふれる疑問が縮小していく
君はナノの戦士となった
箱の前に立つとそこは巨大な洞窟だ
君はゆっくりと折句の扉に手をかけた
永遠を
お見通しなの
マイゴッド
今にはりつく
あわれのうえで
折句 短歌「エオマイア」