矢倉を倒すほど鬼退治は簡単ではない。穴熊以上にそれは難しいのかもしれない。以前は通用した戦術が、少し時間が経てばもうまるで通用しなくなっている。
鬼の動きは、人間が考えるよりもずっと機敏だ。見た目で判断することはとても危険なことだ。十分に理解しているはずのことが、鬼を前にした後では、冷静さを欠いてできなくなってしまうこともある。
鬼を日々強くしているのは、鬼の学校ではなく、鬼自身でもない。それは他ならぬ人間の母だ。世界中の至るところで、今この瞬間にも鬼は読まれていることだろう。無数の母によって読み聞かされ、読み倒された鬼が、人間の心も読んで強くなっていくとしても、何の不思議もない。その声を聞き大きくなった子が、鬼へ向かうことは必然だ。その心の奥に決して捨てきることのできない郷愁が残っていることも含めて。
おそろいの
ニットをつけた
タクとキク
いろはカルタの
しはぼくがとる
折句 短歌「鬼退治」