「今年こそは」
大丈夫と自分に言い聞かせる。
誰にも負けなかったという自負があった。
ルックスも、ウォークも、スピーチも、ダンスも。
お芝居だって、誰よりも真に迫っていたはず。
「いよいよグランプリの発表です!」
ドラムロールが興奮を高める。
足を小刻みに震わせる者、目を閉じる者、両手を合わせて天に祈る者、今にも泣き出しそうな者、厳しい表情を保つ者。
自分を信じて疑わない私……。
すべてはこの瞬間のために。日常の時間のすべてを、この瞬間のためだけに費やしてきたのだ。神さまはきっとそんな私の努力を……。
「グランプリ受賞者は……」
きっと……。
「、該当者なし。」
ないんかーい!
壇上で転げて見せる参加者の全体演技の最後に私のスライディング。
ぎりぎりセーフ!
(そうだ。うっかりしていたけれど、ないパターンもあったんだ)
「来年はどうする?」
苦しかった一年を振り返りながら自分に問いかける。
(誰にも負けなかった)
勝者のいない壇上に迷いが満ちていた。
ああ、わからない。
(きっと正解はない)