大工が釘を打てば猫が駆けてくる。先生が「レ」を弾けばレモンを持った子供たち。花屋さん、八百屋さん、牛に、狢に、桃太郎。猿はライオンに乗ってやってきた。演技指導はいらないよって。不思議とみんなの呼吸が合っている。キリンがくる。シマウマがきた。馬はレースを抜け出して。みんな陽気に歌っている。みんな素敵に踊っている。
「あの二人の幸福のために」
(二人の幸福を中心に平和が築かれる)
歌と踊りの力は凄まじかった。
「私利私欲はなしにしましょうや」
百獣の王とCEOが向き合って歯を見せている。イルカは波をかえりみずもせず、広場の中にいる。タクシードライバー、パイロット、囚人、狩人、半魚人。鹿、鴉、逃亡者、刺青の男。ホテルマン。どんなならず者も、アラクレも、この時ばかりは共演者だった。
「プロポーズが終わったら……」
ヒョウとシロクマの間ではねながら、猫は少し先の風景を見ていた。