「どこへ行く?」
「ちょっとコンビニまで」
「だめだ!」
大きな手にはね返されて部屋の中に押し込められた。
やっぱり今日もだめだった。だめだと思うほどに募る欲望はある。
劇場に行って大きなスクリーンで映画を見たい。夏の太陽をあびながら潮の匂いのする熱い砂浜を歩きたい。巨大書店の中を隅から隅までまわって迷い疲れて眠りたい。妄想の先でふと我に返る。
「自分では何も選べないのか」
進みたい道が私にはたくさんある。
けれども、ドアの向こうでは奴らが銃を構えて私を脅すのだ。
「どこにも行くな! ここで自由に書け」
(まったく狂っている)
銃身の向こうに自由を命じるとは……。
奴らはいったい何をそんなに恐れている。私をいつまでここに閉じこめておくつもりか。だが、私の魂まで縛りつけておくことはできないぞ。
「読者よ」
私の声が届いているか
あなたの魂はまだ自由か
私を救え
声をあげろ
小さくまとまるな
魂に従え
自分たちの力で
未来を変えろ
不条理な物語を
決して許すな
・
襟のない
独裁勢が
詩をつかみ
首をとらえる
猿の惑星
(折句「江戸仕草」短歌)
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