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炬燵の上にみかんを置いたままリーダーは神さまをたずねて出て行った。
意味、意義、使命。そんなものたちに取り巻かれて疲れてしまった。そんな時、炬燵の上に置かれたみかんを見た。
その時、私たちは突然に恐ろしく謙虚な気持ちになったのだ。そこにみかんがある。手を伸ばしてもいい。だけど、あえてそうすることもない。むしろずっと眺めていてもいい。いつか食べる瞬間のことを想像してみるのもいい。手を伸ばさないでいるほどに、想像にかける時間をふくらませることもできる。
よくぞここまできたもんだ。それはみかんだろうか。それとも私たちがきたのか。何もしない。静かな自由というのもあるのかもしれない。
みかんを透かしみる内に日溜まりの猫が立ち上がってみえた。
(しあわせは時間を消してしまう)
「ねえ、まだ?」
ゆうちゃんは不満を口にした。
「もうすぐよ」
日が落ちてリーダーが帰ってきた。
「何もしなくていいって」
それは良い知らせだった。
「神さまがそう言ったんだね」
(何もしなくていい)
その言葉によって私たちは許しを得た。
好きに生きられる自由を手に入れた。
私たちの前でみかんがきらきらと輝きを放ち始めた。
「ねえ、もう食べてもいい?」
「はい、どうぞ!」
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