「立て! 立つんだ!」立たなければ、もうこの世界からの引退を迫られることになる。「立て! 立つんだ!」それは命令であり、切なる祈りでもあった。不屈の意志に支えられて立ち上がる幻の肉体を見届けた時、すべては終わりを迎えた。太陽が昇って3分後、男はパンツ一丁で沈んだ。#twnovel
凄まじい爆音の中で議長は声を張り上げた。「法案に賛成の方は離陸を願います」既に滑走は始まっていた。一機また一機と機体は賛成の翼を広げながら大空へ飛び立ってゆく。「彼らはどこへ向かうのでしょう?」様子を見つつ鴉は言った。「きっとどこかへと向かうのだろう」鴉は答えた。#twnovel
「こんな時に歌うとはどういうことだ?」舞台上で大事な話をしている最中、鳥たちは巣立ちの歌を歌い出した。「親鳥までも歌っているようだぞ」日本八百鳥の会の協力の下、犯人探しが始まったが、口を動かしている者は見当たらない。「口先を動かさずに歌うとは!」校長もお手上げだ。#twnovel
期待は時の上を滑り落ちていき、その向こう側から不安がやってくる。3秒だけ待った後、ついに信頼に終止符を打つと恐る恐る顔を近づけた。その息遣いが、凝固していたものを目覚めさせ、私は危険を感じて身を引いた。闇夜に向かって一斉に飛翔し、壮大な広がりを見せたのは、火の鳥。#twnovel
「いつになったら我らの心を開いてくれるのか」運ばれてきて既に数年が経過していたが、開かれなければ何も始まらない。登場を待ち切れない人物たちはついに自ら行動を起こすことを決断した。最も軽いページからこじ開けて躍り出た。「読者を拘束せよ!」先頭には主人公が立っていた。#twnovel
踊る人は踊り人、歌う人は歌い人、遊ぶ人は遊び人、噛み人は口を動かしながら世の中の仕組みに一つ一つ整理をつけていった。くしゃくしゃの何でもない紙を広げ、口の中から勢いよく色あせた何かを吐き出すと素早く手をグーの形にした。そうして彼の中で新しい言葉、包み紙が誕生した。#twnovel
風が花に向かって手紙を書くというので、いつの間にか郵便屋さんの代わりをさせられてしまった。立ち寄る予定もなかった花の上で「おかしいな。こんなことが前にもあったようだぞ」羽を休めながら、蝶は真昼の月に謎をかけた。そして、自分自身の旅を思い出すと新しい風を待ち始めた。#twnovel
新年は迎えられないかもしれないという
父は夏休みが終わる前に
旅立った
光を元へ戻すのに
10000円かかると言われたが
13時から17時の間に訪れるという人は
13時ちょうどにはやってきて
実際は2000円で済んだのだ
「最大の場合を言うんだよ」
工事のおじさんは
じっとこちらを見て話すので
負けじとじっと見て話す
父の面影
結果は3週間後に知らせると言うけれど
10日してよくない知らせが届いた
お昼前に着いた病院はいっぱいで
2時間待たねばならないと言う
(また大げさに言っている)
新しい本を開いた
まだ何でもないような
時間が好きだ
そして 5分がすぎた
父は夏休みが終わる前に
旅立った
光を元へ戻すのに
10000円かかると言われたが
13時から17時の間に訪れるという人は
13時ちょうどにはやってきて
実際は2000円で済んだのだ
「最大の場合を言うんだよ」
工事のおじさんは
じっとこちらを見て話すので
負けじとじっと見て話す
父の面影
結果は3週間後に知らせると言うけれど
10日してよくない知らせが届いた
お昼前に着いた病院はいっぱいで
2時間待たねばならないと言う
(また大げさに言っている)
新しい本を開いた
まだ何でもないような
時間が好きだ
そして 5分がすぎた
「冬、冬、冬、冬……」何度も冬の名を呼んだ。「舌を巻かなければ駄目」何度言われても、本当の冬を口にすることはできなかった。「早い内に気をつけておかないと直らなくなるからね」もう数えて何度目の冬だろうか。空からは、雪、雪、雪、雪、雪、雪……。ラジオから、冬の散歩道。#twnovel
あなたがあなたである限りあなたは私を裏切ったり、離れたり、置き去りにするだろう。私はあなたのような人を探し、用意し、作り出し、そして愛した。ただ1つの宿命的な喪失から逃れるためにあなただけを捨てることにした。あなたが消え、私が消え、尚あなたのような人はあり続ける。#twnovel
明かりをつけると部屋の真ん中に見知らぬ暖房器具が置いてある。どうして隅ではなく真ん中に位置しているのか、そしてそんなものを自分で買った覚えはない。それでも堂々とした存在は、自分の記憶を幾度となくたどり直すことを求めずにはいられないのだ。果たしてそれは僕のものだったか、あるいは誰かに借りたり、預かったりしたものだったか。見慣れない褐色をまとって部屋の真ん中に居座るそれはチェンバロ、トロンボーンそのような名前のついた何か特別な形をした暖房器具だった。それを部屋の真ん中に置いて今まさに必要とするならば、今は冬でなければならない。今は冬、あるいは冬に向かう途中、または冬の終わりかけ……。冬の匂いや人恋しさを探しかけるがそれは気を失うほどとても遠く、今は夏のちょうど真ん中辺りに過ぎなかった。だとすれば、どうしてそれは今ここに現れたのか。自分のものともわからないそれに、手を触れるべきか手を触れてもよいのかどうか、けれども今こうして自分の部屋の中にある以上それはこの手で触れないわけにはならない厄介なものだった。慎重に両手を差し出して抱え込む。両手両腕だけではまだ抱え切れず、腰を落として脚の力を借りなければならない。顎を近づけ全身と一体となって引きずるようにして部屋の隅っこに片付けた。誰のものかわからないそれを容易く傷つけることはできなかった。シャンプーする間、長く目を閉じていたのでそれは消えてくれたかもしれないと思ったが、部屋の隅っこに留まっていた。それより長く閉じた眠りから覚めた朝になっても、それは消えず、幻でないことを決定付けた。そして、それは日々繰り返されるようになった。家に帰り、明かりをつけると部屋の真ん中に見知らぬ暖房器具が置いてある。誰が忘れていったのか。人の部屋の真ん中に、忘れ物をする方法を僕は知らなかった。毎日のようにそれは繰り返され、時には日を置きながら、また繰り返された。恐ろしいのは、今が夏だということ。
体育館の真ん中でコーチは大きく肩を開き、自分は185センチはあると言った。腕を広げて、腰を落として身体の周辺に自身の領地を作った。
「大切なのは体の大きさでなく使い方の方だ」笛が鳴り、時計が動き始めると女が僕のボールを奪いに駆けてきた。両足の間で転がして、その軌道が怪しくなると足の裏で止めた。少しタッチが大きくなったところで、女は猛然と突っ込んでくるので慌てて足裏で止めてそのまま引きずるように後ずさりする。もう後がないというところで、笛が鳴って救われた。攻守が切り替わると彼女はいきなりシュートを打ってきた。攻めるは守るなりというわけだ。至近距離から放たれたシュートは僕のお腹に当たり、僕はその場で眠りに落ちた。
目覚めて、PCを起動するとデスクトップは様変わりしており、突然QUEENが大音量で流れ始めるが、ボリュームアイコンはどこにも見当たらない。歪なキャラクターが妖しい光を放ちながら杖を振っているので、まずはそれを消去することにする。肉体が消えても頭脳がしぶとく抵抗し、それを消すには更に時間がかかった。消えたはずの杖が瞬いたり、光の粒がその輪郭を追いかけていたりしてもやもやとする。部屋の隅っこには繰り返し片付けた暖房器具がまとめて置いてあったが、その数は昨日よりも随分と増えているような気がした。疑わしいのは昨日の記憶だ。ようやく、2体を消去して、3体目を消そうとすると突然今までにないメッセージが現れた。
「彼は多大な功績を上げて信頼を集める英雄のため消せません。
それでも消しますか?」
はい。を選ぶ。消去失敗。
「消せませんでした」
何度トライしても消せず、再起動してやり直すことにする。明滅とともに黒く穏やかな時が訪れたものの、すぐに彼らは戻ってきた。再び明るみに出たデスクトップでは、消したはずのキャラクターも堂々と復活しており、更に装備を高めて完全な支配力を持ち得たように見えた。ここはもはや他人の庭だ。荘厳な演奏が立ち上がる、それは部屋の奥の方から響いてくるようでもあり、その時、誰かがドアをノックする音がしたが僕はそれに答えることができなかった。ノックの音は、それでも続いた。
「私……、……、私よ」
名を呼ばれたような気がする。ドアに跳ね返って零れ落ちた名に引っ張られて体が動き出す。その声は、きっと僕のことをよく知っている人に違いない。僕は、確信を持ってドアを開けた。誰もいない。けれども、ドアから1メートル程離れた場所に置かれた小包みを見つけた。見覚えのある字。母が来たのだ。
体育館の真ん中でコーチは大きく肩を開き、自分は185センチはあると言った。腕を広げて、腰を落として身体の周辺に自身の領地を作った。
「大切なのは体の大きさでなく使い方の方だ」笛が鳴り、時計が動き始めると女が僕のボールを奪いに駆けてきた。両足の間で転がして、その軌道が怪しくなると足の裏で止めた。少しタッチが大きくなったところで、女は猛然と突っ込んでくるので慌てて足裏で止めてそのまま引きずるように後ずさりする。もう後がないというところで、笛が鳴って救われた。攻守が切り替わると彼女はいきなりシュートを打ってきた。攻めるは守るなりというわけだ。至近距離から放たれたシュートは僕のお腹に当たり、僕はその場で眠りに落ちた。
目覚めて、PCを起動するとデスクトップは様変わりしており、突然QUEENが大音量で流れ始めるが、ボリュームアイコンはどこにも見当たらない。歪なキャラクターが妖しい光を放ちながら杖を振っているので、まずはそれを消去することにする。肉体が消えても頭脳がしぶとく抵抗し、それを消すには更に時間がかかった。消えたはずの杖が瞬いたり、光の粒がその輪郭を追いかけていたりしてもやもやとする。部屋の隅っこには繰り返し片付けた暖房器具がまとめて置いてあったが、その数は昨日よりも随分と増えているような気がした。疑わしいのは昨日の記憶だ。ようやく、2体を消去して、3体目を消そうとすると突然今までにないメッセージが現れた。
「彼は多大な功績を上げて信頼を集める英雄のため消せません。
それでも消しますか?」
はい。を選ぶ。消去失敗。
「消せませんでした」
何度トライしても消せず、再起動してやり直すことにする。明滅とともに黒く穏やかな時が訪れたものの、すぐに彼らは戻ってきた。再び明るみに出たデスクトップでは、消したはずのキャラクターも堂々と復活しており、更に装備を高めて完全な支配力を持ち得たように見えた。ここはもはや他人の庭だ。荘厳な演奏が立ち上がる、それは部屋の奥の方から響いてくるようでもあり、その時、誰かがドアをノックする音がしたが僕はそれに答えることができなかった。ノックの音は、それでも続いた。
「私……、……、私よ」
名を呼ばれたような気がする。ドアに跳ね返って零れ落ちた名に引っ張られて体が動き出す。その声は、きっと僕のことをよく知っている人に違いない。僕は、確信を持ってドアを開けた。誰もいない。けれども、ドアから1メートル程離れた場所に置かれた小包みを見つけた。見覚えのある字。母が来たのだ。
広場の真ん中で
熱心にオブジェを見つめる
人を見ていた
何か面白いことがあるのかもしれない
そう思っていると向こうからも人がやってきて
やはり同じ場所に向かって視線を投げている
その何かに憧れながら
見つめる人の
横顔を見ていた
熱心にオブジェを見つめる
人を見ていた
何か面白いことがあるのかもしれない
そう思っていると向こうからも人がやってきて
やはり同じ場所に向かって視線を投げている
その何かに憧れながら
見つめる人の
横顔を見ていた
「皆の士気が下がっております」川から流れてくるのは大量の桃で、中から「どんぶらこ。どんぶらこ」無数の英雄たちの掛け声が漏れてきては、鬼たちを震え上がらせていた。「すぐ仲間を集めよ!」鬼軍曹の指示の下、桃太郎軍団に対抗する準備が始まった。「犬でも猿でもかまわん!」 #twnovel
喉が渇いた。だから思い出した。「覚えていたら切ってね。忘れていたらいいから」女はそう言ってくれたけど、それが何についてだったかまでは思い出せない。(きっと忘れていたら切ることもできないのだ)喉が渇いた。そして、透明な水の中で身を隠しているグラスの存在を思い出した。#twnovel
寄せ集めのブルーは
予選全敗で勝ちあがった
誰もが勝者になる世界だったから
黒い雲が寄り集まって
水色の雨を降らせた
束の間の雨が僕を転ばせる
立ち上がれ
優勝の行方は誰にもわからない
いくら負けても腐らなかった
寄せ集めのブルーの下に
虹色の光が零れ落ちた
なぜか
よいことは
突然起きたりする
信じることが生きる力
空から赤い靴下が降ってきた
予選全敗で勝ちあがった
誰もが勝者になる世界だったから
黒い雲が寄り集まって
水色の雨を降らせた
束の間の雨が僕を転ばせる
立ち上がれ
優勝の行方は誰にもわからない
いくら負けても腐らなかった
寄せ集めのブルーの下に
虹色の光が零れ落ちた
なぜか
よいことは
突然起きたりする
信じることが生きる力
空から赤い靴下が降ってきた