毎度毎度過去を振り返る。
金融市場の過去の変動のパターンを思い起こして、それをベースに今後はどうなるんだろう?と考えてみるが、事前に考えたとおりには展開して行かないのが金融市場だ。変幻自在の生き物なんだよねぇ。
ザ・スパイダース 『あの時君は若かった』 1968年
懐かしい曲。。。この私も小学生だったぜ。
6月も散々だった。米国株式市場の代表的指数であるS&P500は下がった。しかし第四週(21日~24日)は久々の反騰。
【Investing.com】
そうなると「昨年暮れの最高水準からは一旦はこの指数も20%ほど下落したわけだし、もう下げ相場としては十分だし、これからは相場が回復する」・・・なんて声がたくさん上がり始めた。
多かったのがこんな意見だ。
【Bloomberg】
「6月末は暦年の上半期の終わりである。機関投資家(年金基金、各国政府ファンド、金融機関等)には資産配分の方針ってものがあって、例えば「株式40%:債券60%」なんて具合に保有資産の割合を定めている。ところが今年前半は株価が大きく下げたため、時価で見た株式への配分が過小になっているはずだから、6月末までにまた株式を買い増して方針どおりの割合に戻しておく動きが活発となり、6月最後の第五週は株価が大きく上昇するだろう」
【Bloomberg】
多くのストラテジストがそんな予想を出していた。
しかしそうはならなかったのだ。
上のグラフに第五週を付け加えてみたら、ご覧のとおりになる(↓)。
【Investing.com】
第五週は下げ続け、6月30日を迎えたのである。
そんなもんなのだ。プロだって当たらないのである。
結局米国株式市場は、今年に入って半年続いた大きな下げ相場(下のグラフ)の中で今もウダウダしているのだろう。長い下げ相場だって、途中は上がったり下がったりしながら全体としては下げて行くものだよね。
【Investing.com】
ところでこの半年は、下げ相場の期間としてすでに十分に長い期間を経たと言えるものだろうか?
景気の好循環が続き株価が長期にわたり上げ続けて、やがて景気が行き過ぎて金利が上昇し景気が冷え始め、それを認識した株式市場は下げに転じて、その後もっと長い期間にわたり株価は下げる。それが普通だ。
ITバブル崩壊の下げ相場(赤)も、金融危機の下げ相場(緑)もそうだった。
【Investing.com 縦軸は対数目盛にしてある】
下げ相場が1年や2年、あるいはもっと続いてもおかしくないのである。
上のグラフで右の方にある2020年2月に始まったコロナ禍の下げ相場(黄)はパターンとしては例外的な下げだった。あまりに短期間であまりに激しく下げたのである。過去経験して来た通常の景気変動要因とは異なる新型ウィルスの登場で市場は動揺したのだろう。僅か1か月と少しの期間で大きく下げたが、すぐ反騰し始め、その後はどんどん上昇していった。
そんなわけで、まだまだ続くであろう「景気が過熱した後はハードランディング(ショックを伴うような景気悪化)するか否か」という議論の中で、株式市場の下げ基調はまだしばらく続くんじゃないかと想像する。
だから売り(=S&P500指数が下がったら単価が上がる仕組みのETFを購入して持つ)をしばらくは継続してみよう。
しかし実際にハードランディングとなるかどうかは今の時点で誰にもわからず、意外にも米国中央銀行が一縷の望みで期待しているソフトランディングが実現してしまう可能性もある。
すでに米国債券市場はそれを一部読み込んでいるのかもしれない。6月後半、米国債の利回りは下がり始めたのだ。株式市場の反応と債券市場の反応に多少でも違いが見られる時、たいてい債券市場の方が賢い(笑)。
【Investing.com】
意外に景気が軟着陸して、「お先真っ暗だぁ~!」なんてことにはならないのかもしれない。
あるいは逆に、債券市場はすごい景気悪化を読み込んでいるのかもしれない。
どちらにしろ、しばらくは暗い話が多く、株式市場はまだその暗さを十分織り込んでいないように思える。
・・・なぁ~~んてね。「過去の経験から一生懸命将来を推測しても当たらないものだ」と、金融市場に係る古典的名著の著者マルキール博士なら言うでしょうね。
アナリスト、ストラテジスト、ファンドマネジャー、エコノミスト。彼らがやっていることはほぼ無駄だと博士は言う。
それくらい市場は常にランダムに動くらしい。
コロナ禍の暴落のパターンがそれを示しているね。あれはあまりに短期間であまりに急激な下げだった。「こんなパターン見たことない」と多くの人が言うが、結局市場ってそういうことの連続なんでしょうね。
今度の金曜日は先月の米国雇用統計の発表がある。労働市場がひっ迫しているという結果が出たら株価が下がる、逆なら逆というパターンになるんじゃないかな・・・なんて、しつこく無駄な予想をする(笑)。