茫洋物見遊山記第119回&鎌倉ちょっと不思議な物語第282回
今年開館15周年を迎えるというこの美術館だが、ろくろく訪れる客もいないというのによくも続いたものだ。かのアホ馬鹿大阪市長ならすぐにも閉館を命じていただろうに。そういう点ではまだ文化芸術や美術に対するそれなりの価値観を保有しているこの地方都市にいささかの愛着を覚える。
さて今回の出し物は初期の秀作から中後期の充実した力作までヴァラエティを揃えた美人画が飾られているので、前回よりは多少とも見ごたえがある。
この人の色彩の卓抜さはすでに定評があるが、とりわけ「鏡獅子」や「花いばら」「朝涼」におけるあおやみどりやむらさきのパステルカラーのおなじ明度、彩度での組み合わせがことのほか見事で、いったいこの微妙で精妙な感覚を彼がどこで獲得したのかと驚かされるのである。
*なお本展は来る5月22日まで鎌倉小町でひそと開催中。
