あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

アンドリュー・ドミニク監督の「ジェーシー・ジェームズの暗殺」を見て

2013-05-22 08:29:25 | Weblog


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.457


ガラガラ蛇を腕に巻きつけたジェーシー・ジェームズは、ついには彼をしとめることになる敵か味方か分からない暗殺者の前で、いきなりナイフを取り出して蛇の二つの首を平然と切断したりするのだが、ここで私たちはジェーシー・ジェームズという男の底知れぬ冷徹と孤独を思い知らされる。

人殺しの極悪人に詭計を巡らせて暗殺した兄弟が、その暗殺劇を舞台に掛けて金儲けしたりしているうちに世間はなぜか騙し討ちを卑怯と糾弾するようになり、兄は自殺、弟は暗殺されるという道行も、ジェーシー・ジェームズにおとらず不気味である。

されど全篇を通じて流れるニック・ケーブの不穏な音楽こそ、この端正な美意識で統一された西部劇映画の隠れた主役だろう。

死と狂気を内蔵したニック・ケーブのミニマル音楽は、そんな不気味な緊張を孕んだ静謐な画面を見詰める私たちを、ついにある緊張の頂点にまで連れて行き、その狭い密室で息苦しいまでの暗殺劇が爆発するのだった。

表題役のブラッド・ピットとその兄役のサム・シェパード、暗殺者のケイシー・アフレックが好演している。


    衰えた命燃やすためジェームス・ブラウン聴きながら鱈子スパ食べてる 蝶人
コメント
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