ある晴れた日に 第344回
午前零時銀座通りの真ん中で黄色いウンチが湯気を立ててる
カバライキンカバライキンと叫んでる君も私もバイキン仲間
年に二度寺尾家にやってくる富山ナンバーの薬売りのおじさん
果樹園のてっぺんに立ち眺むれば西に富士山東に東京湾
七十年きれいなお姉さんにあこがれてきましたまだ探しています
生協で一切一三〇円のチリ産シャケを五匹買うことを生活と云う
妖艶な美女をこやしにしながらも今夜も元気にタクトを振るデュトワ
この広い世間のどこいらで景気が回復しているのだろう
闘争を学園紛争と言う人に異を唱えずに黙して帰る
我が国の存立を危うくしている連中が存立条件について論じる不条理
「どちらとも言えない」に○をしてる間に骨を抜かれる我らの九条
卑怯者非国民と呼ばれても銃は握らぬよし殺されるとも
限りなく日の丸から遠ざかりただうじうじと生きてゆきたし
日の丸を振らず君が代を歌わず私利私欲のみを死ぬまで
ガギグゲゴ鼻濁音を絶滅させないためにぐあんばろう
友達の友達は友達なのであの有名な井上八千代さんもSNS友達
今もなお不意に甦る声ありて「スタップ細胞はあります」と言う
白鵬よ偶には負けろよと云ってみる誰も黙っているようなので
「下郎下がりおれ」なぞといひて袈裟がけに斬り倒せばさぞ愉快ならむ
純白のレースのカアテンに覆われてすべての家にひとつの秘密
こんちくしょうと喚きながら投じた石は弟の額の肉を削りき
職が無い職は無けれどひと様の苦しみが分かる息子ではある
真昼間からライトを点けてる自動車に二本の指で消しなと合図す
長男の面差しの裏に住むわが懐かしき父母の姿よ
なにゆえに何匹も犬猫を飼う君は淋しい犬猫病患者
一台のベンツが八幡様を曲がり行く一一九二というナンバー付けて
雪柳椿辛夷桜花母命日に我が見し花 々
鴎外を三百円漱石を九百円で古本屋は売る 蝶人