三木卓著「鎌倉日記Ⅳ最終章2019―2023」を読んで
照る日曇る日 第2155回
詩人、作家の三木卓、本名富田三樹氏が88年の生涯を全うして他界したのは2023年11月18日。そのぎりぎりまで描き続けていたこの連載は伊藤玄二郎編集「かまくら春秋」の12月号に乗っているが、その結びは次のようなものだった。
「戦乱の満洲で荒廃した街のなかをよちよち走っている中国の幼児たちの姿を思い出す。彼らはお尻まるだしだったり、お尻のところが割れている短パンをはいていた。その短パンはそのまましゃがんでするべきことをして、また立ってあそべばいいのである。かれらは平気でいきていたが、親の姿は、その風景のなかになかった。」
そのあとには、2023年11月の「詩とファンタジー」47号に掲載された彼の最後の詩「めがあいたら」がのっているので、これも紹介しておこう。
めがあいたら だれもいない
どこかで いぬがほえている
おかあちゃん おにいちゃん
おねえちゃん……
おしりから さびしくなっていく
レースに だしてもらえなかった うまの
おしり
ねーちゃんのボーシ けとばす
かあさんのタオル はなをふいちゃう
なにをしても いい
なにをしても……
いしになってやる
とてもかたい いし
こけ だって いっぱい はやしてやる
もしかしておらっちも石になっておる苔をいっぱい生やした石に 蝶人