病理の切り出し室に入ると、ときどきタバコの匂いがする。私が思うに、裏が駐車場で、病院の敷地内というのに隠れて吸っている不届きな人がいて、その煙が流れ込んできているに違いない。火のないところに煙は立たない。もちろん、普通ならそんな匂い、窓を閉めていたら入ってくるわけがないのだけど、どこかに隙間でもあるんだろうぐらいに考えていた。それにタバコの匂いはどこからでも入ってくるのが常だ。
昨日は切り出し当番だった。雨が上がって暖かくなり、朝からたくさんの花粉が飛ぶだろうと警戒していたが、通勤中も診断室に入ってからも特に問題なかった。だが、いったん切り出しを始めた途端に鼻水が出始めた。あれ、おかしい。さっきまで平気だったのに。この部屋に入ってからだ。マスクは部屋に入ってから間違えないようにつけた。念のため、鼻のところの金具の向きを直してよりぴったりくっつくようにしたけど、その後もなかなか止まらなかった。
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部屋にいた臨床検査技師に聞いた、「この部屋って、陰圧?」「そうですよ、この部屋は陰圧ですよ」。
陰圧、ということは外気がこの部屋に入ってくるということ。ああ、そうか。病理の切り出し室は環境汚染に配慮して陰圧になっているから、以前タバコの匂いが入ってきたのだ。そして、花粉も。花粉の大きさは20~50μm程度なのに対して、タバコの煙は1μm以下。これならタバコの匂いが陰圧状態の部屋に流れ込んでくるのは当たり前だ。それにしてもタバコの副流煙も花粉以上に飛散しているものとは考えていなかった。
うっかりしていた。
よく、外から帰ってきて部屋に入るときには衣服に花粉が付着しているので、それを落とすようにと言われるが、タバコのけむりはもっと、ということになる。電車やバスでとなりにタバコの匂いをプンプンさせている人に座られてほとほと困ることがあるが、そんな人はタバコの副流煙の粒子をばらまいているということだ。副流煙の怖さは以前から言われている(副流煙というタバコの罠2018年12月26日 )。でも、なんだか当事者(ニコチン中毒の人)には、周りに、アレルゲンをばらまいているという意識が乏しい。花粉症とリンクさせて考えたらもう少し考えてくれるようにはならないだろうか。
タバコの煙は一年中