「とりあえず次世代シークエンサー(NGS)で遺伝子の変異を調べてから」
そういう時代はすぐそこまできている。
画像解析ソフトの進歩は想像をはるかに超えたものがある。囲碁や将棋の棋譜なんか全て取り込んで、それで最善手を選ぶという方法で人間の棋士を撃破している。あと、10年もしたら、オンラインゲームレベルでそんなことになってしまうのではないかと思う。
顕微鏡標本によって行う病理診断も、そのうち機械に取って代わられてしまうのではないかということを言う人がいるがどうだろう。
現在の病理診断は、病変の質的診断と病変の拡がりの評価が主体となっている。
例えば病変が癌かそうでないか、癌だとしたらそれはどのような生物学的特性をもっていて、どのような薬剤が有効か。そういった質的診断は人間の目よりも機械の目の方がブレがなく安定して行われるだろう。だが、機械では採取された検体に目的とする病変があるか、採取した病変は検査に耐えうるものか、といったような評価はできない。
病変の拡がりを評価することも難しい。人間の体は三次元の存在である。病理医はそれを臨床データを勘案して、経験に基づいて検索範囲を決定して、標本を作って調べる。そういう作業は個人差が大きすぎて、機械にはできない。
癌の診断は機械を適切に用いることで、より正確性が増していくだろう。だが、非腫瘍性病変の診断となると難しくなる。炎症だの線維化だのといった所見が入り組んで存在し、それらを総合した診断を行なわなくてはいけない。
とはいえ、教科書の写真をみて、それとあっているかどうかで満足しているような、絵合わせ病理医であってはいけない。一人の人間の体というものを全体的に把握し、身体の各部位の所見を統合して診断していく能力をもっていかなくてはいけない。
新たな展開を