きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

安斎育郎さんと考える 放射能汚染① 情報をつかみ判断する力を

2011-08-15 13:38:22 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
安斎育郎さんと考える 放射能汚染① 情報をつかみ判断する力を

 福島原発事故の影響が広がりを見せています。放射線防護学が専門の安斎育郎立命館大学名誉教授に放射線と放射能について、わかりやすく連載で語ってもらいます。

あんざい・いくろう 1940年東京生まれ。64年東京大学工学部原子力工学科卒。69年、東京大学助手。86年、立命館大学教授。95年、国際平和ミュージアム館長。08年、同名誉館長。2011年、安斎科学・平和事務所開設、同所長。著書に『からだのなかの放射能』『家族で語る食卓の放射能汚染』『福島原発事故』など


 福島原発事故は人類史上経験したことのない原子力事故です。複数の原子炉が事故を起こし、長期に放射性物質の放出を続け、いまなお収束していません。とくに初期の水素爆発で放射性物質が大量に放出された際に適切な退避措置がとられず、長期間汚染地区にとどまらざるをえなかった住民や、同心円で対応したために必ずしも緊急避難の必要がないのに着の身着のままで避難を余儀なくされた地域もありました。
 人口30万人の県都・福島市では毎時1.2マイクロシーベルトを今でも記録していて、このところほとんど下がっていません。これは3日に2枚の割合で胸のレントゲン写真をとる計算です。
 レントゲンと違い、原発からの放射線を浴びても何のメリットもありません。事故が収束しないなかで、福島市など大都市も含め、体の外から放射線を浴びる外部被ばくが無視できないレベルになっています。できるだけ被ばく線量を減らす方策を実行しなければいけません。

食品汚染
 加えて食品汚染が広がりを見せています。事故後、政府は暫定規制値を決め、官房長官がテレビで「規制値以上のものは流通していないので安心してください」と呼びかけましたが、実際には規制値を超えたホウレンソウや、いま問題のセシウム汚染牛肉が市場に出回ってしまいました。
 宮城県産の稲わらに起因する汚染牛肉は沖縄を除く46都道府県に流通しました。行政当局が安全だと言っていた食品が汚染され、消費者は何を信じていいかわからない深刻な状況です。とくに若いお母さん方は子どもが食べるものですから、本当に心配しています。
 たとえば暫定規制値いっぱいの1キログラムあたり500ベクレルの放射性セシウムが含まれた牛肉を200グラム食べると、0.0016ミリシーベルト被ばくします。【注】


食品衛生法による食品などの暫定規制値
放射性物質の種類1キログラムあたりのベクレル値
放射性ヨウ素飲料水300
牛乳・乳製品 ※乳児用粉ミルクなどは100
野菜類(根菜、イモ類を除く)2000
放射性セシウム飲料水200
牛乳・乳製品
野菜類500
穀類
肉・卵・魚・その他

注・次回以降の連載でより詳しく説明しますが、ベクレルとは放射能の強さを示す単位です。1秒間に1個の割合で原子核が崩壊した時の放射能の強さを1ベクレルと定めています。シーベルトとは人体への被ばくの影響の程度を表わす共通の尺度です。放射線の性質やエネルギー別の危険度をシーベルトの単位で表しています。マイクロ(100万分の1)とミリ(1000分の1)の単位にも注意してください。


 体内に誰でも持っているカリウム40が出す自然放射線の内部被ばくが年間で0.2ミリザシーベルトです。汚染牛肉を1回食べただけではそれをかなり下回るレベルですが、今後、食品全体でどのくらいの汚染があるか分からない以上、できるだけ被ばくをさける対策をとるよう政府に求めていく必要があるでしょう。
 食品検査については、国や自治体による検査はそれなりに厳密ですが、時間もかかります。

簡易検査
 そこで、簡易な測定法として、スーパーなどに、自然放射線の影響を防ぐため、クギを入れた袋などで周りを覆ったシンチレーション式サーベイメーターを備え、食品汚染を簡便にチェックする方法を提案します。怪しいものは専門機関で厳密に測定し、そうでないものは極端な汚染の有無を簡易な方法で調べて安心を確保するのです。放射線関係の研究所や学会、病院などにも測定機があります。これらの協力を得て、ここ何カ月かの間、集中的に食品検査をすることも必要だと思います。
 放射線防護の知識が必要になる世の中になったというのは、非常にやっかいなことでもあります。それでもそういう世の中になってしまった以上、できる限り情報をつかみ、自分で判断する力を持つ必要があります。その参考になるように、放射線や放射能の基礎から、被ばくを減らす方策までわかりやすく解説していくことにします。



ロルフ・マキシミリアン・シーベルト(1896~1966年)
スウェーデンの物理学者。放射線防護学を研究し、国際放射線防護委員会委員長を務め、放射線測定機も開発。シーベルトの単位はこれらの功績を顕彰し名付けられたものです。
アントワーヌ・アンリ・ベクレル(1852~1908年)
フランスの物理学者。放射線の発見により1903年、キュリー夫妻とともにノーベル物理学賞を受賞。放射能の強さを示す単位べクレルはベクレルの名前にちなんでいます。


「しんぶん赤旗」日曜版 2011年7月31日付掲載

放射線の簡易検査ってのもあるんですね。規制値いっぱいの汚染牛を1回食べただけなら、自然放射能の被ばく量よりかなり少ないレベルですが、食事ってのは毎日毎日のことですから・・・。
しっかりと食品の検査をする必要があるでしょうね。
コメント
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