安斎さんと考える 放射能汚染④ 放射性ヨウ素の危険
被ばくには、体の外から放射線を浴びる「外部被ばく」と、体の中に取り込んだ放射性物質が出す放射線による「内部被ばく」があります。
病院のレントゲン照射や宇宙線といった自然放射線による被ばくは、外部被ばくです。広島・長崎の被爆者が原爆の火の玉から出たガンマ線や中性子線を浴びたのも外部被ばくです。
原爆の爆発や核実験、原発事故で放出された放射性物質を、呼吸や水、食物の摂取で体内に取り込むと、内部被ばくの原因になります。主として外部被ばくは透過力の強いガンマ線で被ばくし、内部被ばくはそれに加えて透過力がそれほど強くないべータ線やアルファ線も被ばくするという違いがあります。
原発から放出される人工的な放射性物質の代表として、ヨウ素131やセシウム134、セシウム137などがあります。このうちヨウ素131は半減期が8日と短いので、1986年のチェルノブイリ原発事故でも大量に放出されましたが、今は環境中に残っていません。
半減期というのは、放射能が半分に減るまでにかかる時間をいいます。その後は半減期の期間だけ経過するごとに半分、そのまた半分…と減っていきます。半減期の長さは、放射性核種(原子核の種類)によって大幅に違います。ヨウ素131のように8日といった短寿命のものから、プルトニウム239のように2万4千年という長寿命のものまで、いろいろです。
甲状腺がんの心配
今回はヨウ素131に注目します。核分裂反応によって大量に生成され、揮発性があるので環境中に拡散しやすいからです。しかも、人体に取り込まれると甲状腺という臓器に選択的に摂取されやすい性質を持っています。
甲状腺は、ヨウ素であれば放射性ヨウ素であろうが非放射性ヨウ素であろうが区別なく取り込んでしまいます。その結果、甲状腺が被ばくし、がんの原因になりやすいのです。成長期の子どもがとくに問題になります。
チェルノブイリ原発事故では甲状腺がんが多発しました。2005年にウィーンで国連機関とロシア、ベラルーシ、ウクライナの政府の専門家チームによる国際会議が開催されました。事故当時18歳未満だった子どもたちにその後約4千例の甲状腺がんが発生し、15人が死亡したと報告されました。死亡例が少ないのは、甲状腺を切除した例が多いからです。06年に欧米諸国の反核NGOが開催した国際会議では、甲状腺がんの発生を1万8千~6万6千人と予測しました。
4千人から最大6万6千人と、評価には大きな隔たりがあります。放射線の影響についての科学は未成熟で、誰が評価しても同じになる普遍性をまだ持ち得ていません。現時点ではそのくらいのあいまいさを持つ数値だと心得る必要があります。
福島原発事故で子どもの甲状腺がんを心配する方は多いと思います。
大半の甲状腺がんは進行が遅く、適切な治療をすれば生存率が非常に高いがんです。まずは、甲状腺の機能異常が発生していないか、健康診断でつかむことが重要です。甲状腺の異常を早く見つけられれば、手だてを打つことができます。
ヨウ素剤の活用は
ヨウ素131から身を守る方法として、ヨウ素剤というのを聞いたことがあると思います。放射能を持たない普通のヨウ素剤を事前に飲んでおけば、放射性ヨウ素があとからやってきても甲状腺に吸収されず、排出されてしまうというわけです。
今回の福島原発事故でも周辺自治体にヨウ素剤が届きました。副作用もありますので、勝手に飲めばいいというわけではありません。服用するタイミングも重要です。8時間以内に服用すれば40%、24時間以内なら7%程度が排除できるという報告もあります。行政が責任を持って服用のタイミングや量を指示する必要があります。
放射性ヨウ素で汚染された食品を摂取すると、どれほどの危険があるのでしょうか。
国が決めている1キログラムあたりの暫定規制値は、牛乳の場合300ベクレル、野菜で2000ベクレルです。仮に2000ベクレルに汚染された牛乳を100ミリリットル飲んだ場合、乳児で0.028ミリシーベルト程度被ばくすることになります。ただし、新たに大量の放出がない限り、半減期が8日のヨウ素の場合は、食品汚染が長期間続くことはありません。
「しんぶん赤旗」日曜版 2011年8月21日付掲載
ヨウ素131でもやはり子どもが問題になるんですね。半減期が8日と言っても、体に取り込まないに越したことはありません。半減期の10倍の80日で1/1000。体の中からほぼなくなったと言えるまで、甲状腺から放射能を内部被ばくとしてまき散らしていきます。
だからこそ、ヨウ素剤の配布と服用のタイミングは大事なんですね。
それにしても、旧ソ連のチェルノブイリ原発の事故の時は甲状腺を切り取るって荒治療をやっていたんですね。知りませんでした。
被ばくには、体の外から放射線を浴びる「外部被ばく」と、体の中に取り込んだ放射性物質が出す放射線による「内部被ばく」があります。
病院のレントゲン照射や宇宙線といった自然放射線による被ばくは、外部被ばくです。広島・長崎の被爆者が原爆の火の玉から出たガンマ線や中性子線を浴びたのも外部被ばくです。
原爆の爆発や核実験、原発事故で放出された放射性物質を、呼吸や水、食物の摂取で体内に取り込むと、内部被ばくの原因になります。主として外部被ばくは透過力の強いガンマ線で被ばくし、内部被ばくはそれに加えて透過力がそれほど強くないべータ線やアルファ線も被ばくするという違いがあります。
原発から放出される人工的な放射性物質の代表として、ヨウ素131やセシウム134、セシウム137などがあります。このうちヨウ素131は半減期が8日と短いので、1986年のチェルノブイリ原発事故でも大量に放出されましたが、今は環境中に残っていません。
半減期というのは、放射能が半分に減るまでにかかる時間をいいます。その後は半減期の期間だけ経過するごとに半分、そのまた半分…と減っていきます。半減期の長さは、放射性核種(原子核の種類)によって大幅に違います。ヨウ素131のように8日といった短寿命のものから、プルトニウム239のように2万4千年という長寿命のものまで、いろいろです。
甲状腺がんの心配
今回はヨウ素131に注目します。核分裂反応によって大量に生成され、揮発性があるので環境中に拡散しやすいからです。しかも、人体に取り込まれると甲状腺という臓器に選択的に摂取されやすい性質を持っています。
甲状腺は、ヨウ素であれば放射性ヨウ素であろうが非放射性ヨウ素であろうが区別なく取り込んでしまいます。その結果、甲状腺が被ばくし、がんの原因になりやすいのです。成長期の子どもがとくに問題になります。
チェルノブイリ原発事故では甲状腺がんが多発しました。2005年にウィーンで国連機関とロシア、ベラルーシ、ウクライナの政府の専門家チームによる国際会議が開催されました。事故当時18歳未満だった子どもたちにその後約4千例の甲状腺がんが発生し、15人が死亡したと報告されました。死亡例が少ないのは、甲状腺を切除した例が多いからです。06年に欧米諸国の反核NGOが開催した国際会議では、甲状腺がんの発生を1万8千~6万6千人と予測しました。
4千人から最大6万6千人と、評価には大きな隔たりがあります。放射線の影響についての科学は未成熟で、誰が評価しても同じになる普遍性をまだ持ち得ていません。現時点ではそのくらいのあいまいさを持つ数値だと心得る必要があります。
福島原発事故で子どもの甲状腺がんを心配する方は多いと思います。
大半の甲状腺がんは進行が遅く、適切な治療をすれば生存率が非常に高いがんです。まずは、甲状腺の機能異常が発生していないか、健康診断でつかむことが重要です。甲状腺の異常を早く見つけられれば、手だてを打つことができます。
ヨウ素剤の活用は
ヨウ素131から身を守る方法として、ヨウ素剤というのを聞いたことがあると思います。放射能を持たない普通のヨウ素剤を事前に飲んでおけば、放射性ヨウ素があとからやってきても甲状腺に吸収されず、排出されてしまうというわけです。
今回の福島原発事故でも周辺自治体にヨウ素剤が届きました。副作用もありますので、勝手に飲めばいいというわけではありません。服用するタイミングも重要です。8時間以内に服用すれば40%、24時間以内なら7%程度が排除できるという報告もあります。行政が責任を持って服用のタイミングや量を指示する必要があります。
放射性ヨウ素で汚染された食品を摂取すると、どれほどの危険があるのでしょうか。
国が決めている1キログラムあたりの暫定規制値は、牛乳の場合300ベクレル、野菜で2000ベクレルです。仮に2000ベクレルに汚染された牛乳を100ミリリットル飲んだ場合、乳児で0.028ミリシーベルト程度被ばくすることになります。ただし、新たに大量の放出がない限り、半減期が8日のヨウ素の場合は、食品汚染が長期間続くことはありません。
「しんぶん赤旗」日曜版 2011年8月21日付掲載
ヨウ素131でもやはり子どもが問題になるんですね。半減期が8日と言っても、体に取り込まないに越したことはありません。半減期の10倍の80日で1/1000。体の中からほぼなくなったと言えるまで、甲状腺から放射能を内部被ばくとしてまき散らしていきます。
だからこそ、ヨウ素剤の配布と服用のタイミングは大事なんですね。
それにしても、旧ソ連のチェルノブイリ原発の事故の時は甲状腺を切り取るって荒治療をやっていたんですね。知りませんでした。