安斎育郎さんと考える 放射能汚染② 85京ベクレルが放出された!
原発を運転すると、原子炉内でウランなどの核燃料が核分裂し、強い放射能をもつ大量の「死の灰」(核分裂生成物)がたまります。表で示したのは、100万キロワットの原子炉を1年間運転した場合、炉内にたまる放射性物質の種類と量です。ベクレルの単位ではとても間に合わないので、京(けい。兆の1万倍)ベクレルで示します。
ベクレルは耳慣れない言葉ですが、放射能の強さを測る単位です。1秒に何個の割合で原子が放射線を出して別の原子に変わりつつあるかという数で示します。
100ベクレルの放射性セシウムを含むホウレンソウがあるとします。この時ホウレンソウの中では、毎秒100個のセシウム137原子が放射線を出してバリウム原子に変わりつつあります。
このように、放っておくと勝手に放射線を出して別の原子に変わる性質のことを「放射性」、別名「放射能」といいます。放射能とは、放射線を出す能力のことです。
100万キロワットの原発を1年間運転してできる放射性物質(単位・京ベクレル)
半減期短くても
今回の福島原発事故で環境中に放出された放射能は、経済産業省の原子力安全・保安院の6月の評価によると、85京ベクレルです。これは、1986年のチェルノブイリ原発事故で放出されたといわれる520京ベクレルの約6分の1です。ただし、福島原発事故は収束していないので、今後増加する可能性があります。
このうちキセノン133は放射性のガスです。炉内では630京ベクレル(630万ベクレルの100万倍のそのまた100万倍)と大量に発生します。半減期、つまり放射能が半分に減るまでの期間は5.2日です。
ヨウ素131も半減期が8日と短いですが、これも310京ベクレルと膨大な量が生成されます。
「ヨウ素131は半減期が短いので、環境からすぐなくなる」とよくいわれます。ところが事故から3、4カ月たっても下水処理場の汚泥や清掃工場の飛灰などから検出されました。それは、もともとの放出量が多いのでなかなか減らないからです。元が100円なら半分で50円ですが、元が100億円あるなら半分でも50億円です。半減期の10倍の80日間でも1000分の1ですから、減衰してもなお放射能が強いことを心得ておく必要があります。
さらに忘れてはならないのはセシウム137です。これは半減期が約30年と長く、l00万キロワットの原発を1年運転した場合にできる放射能は21京ベクレルです。その影響は何年、何十年にも及びかねません。
福島原発からは真っ先にキセノン133などの気体が放出されました。次にヨウ素131、さらにセシウム137などが放出され、周辺の放射線量率が高くなる原因になりました。
放射線にも種類
放射線にも種類があります。原発事故で浴びる放射線には、主としてガンマ(γ)線とべータ(β)線があります。
ガンマ線は一般に透過力が強く、少々の壁などを貫きます。上空を通過する放射性物質を含む雲や、地表に降り積もった放射性物質から被ばくします。セシウム137のような長寿命の放射性物質がチェルノブイリ事故のように高濃度に降り積もれば、長期の立ち入り・居住禁止などの措置を取らざるを得なくなります。
一方、べータ線はエネルギーの高いものでも空気中で数メートル、せいぜい数十センチメートル程度で止まります。途中に遮蔽(しゃへい)物があれば、割合簡単に食い止めることができます。
べータ線を出す放射性物質を飲み水や食晶の形で体内に取り込むと、体のなかで放出されたべータ線が周囲の細胞を傷つけます。いわゆる「内部被ばく」の問題です。
もう一つの放射線・アルファ(α)線も内部被ばくを起こします。アルファ線は紙1枚で食い止めることができます。体内では細胞1個か2個分しか飛びません。
しかし、短い距離の間にたっぷりとエネルギーを放出するので、局所的に大きな損害を受けます。アルファ線が体内に入るとガンマ線やべータ線より一段と危険性が高いのです。次回は人体への影響について説明します。
「しんぶん赤旗」日曜版 2011年8月7日付掲載
半減期が短いからって軽く見るといけないんですね。ヨウ素131やキセノン133は半減期が短いですけど、原発から生成される量が多いので、いったん外界に放出されるとずっと残るのだそうです。
「元が100円なら半分で50円ですが、元が100億円あるなら半分でも50億円です。半減期の10倍の80日間でも1000分の1ですから、減衰してもなお放射能が強いことを心得ておく必要がある」ってたとえ話しは分かりやすいですね。
半減期8日の10倍の80日間の場合は、2の10乗=2*2*2*2*2*2*2*2*2*2=1024です。約1000分の1でも、元が100億円なら1000万円なので、かなりの影響力を及ぼしているわけです。
放出される放射線の種類にも注目。いわゆる内部被ばくの影響が一番大きいのがα(アルファ)線なんですね。
原発を運転すると、原子炉内でウランなどの核燃料が核分裂し、強い放射能をもつ大量の「死の灰」(核分裂生成物)がたまります。表で示したのは、100万キロワットの原子炉を1年間運転した場合、炉内にたまる放射性物質の種類と量です。ベクレルの単位ではとても間に合わないので、京(けい。兆の1万倍)ベクレルで示します。
ベクレルは耳慣れない言葉ですが、放射能の強さを測る単位です。1秒に何個の割合で原子が放射線を出して別の原子に変わりつつあるかという数で示します。
100ベクレルの放射性セシウムを含むホウレンソウがあるとします。この時ホウレンソウの中では、毎秒100個のセシウム137原子が放射線を出してバリウム原子に変わりつつあります。
このように、放っておくと勝手に放射線を出して別の原子に変わる性質のことを「放射性」、別名「放射能」といいます。放射能とは、放射線を出す能力のことです。
100万キロワットの原発を1年間運転してできる放射性物質(単位・京ベクレル)
放射性核種 | 半減期 | 生成量 |
クリプトン85 | 10.7年 | 2.2 |
ストロンチウム90 | 28.8年 | 19 |
ジルコニウム95 | 64日 | 590 |
ルテニウム106 | 372日 | 70 |
ヨウ素131 | 8日 | 310 |
キセノン133 | 5.24日 | 630 |
セシウム137 | 30年 | 21 |
セリウム144 | 285日 | 410 |
プルトニウム238 | 88年 | 0.37 |
プルトニウム239 | 24000年 | 0.037 |
半減期短くても
今回の福島原発事故で環境中に放出された放射能は、経済産業省の原子力安全・保安院の6月の評価によると、85京ベクレルです。これは、1986年のチェルノブイリ原発事故で放出されたといわれる520京ベクレルの約6分の1です。ただし、福島原発事故は収束していないので、今後増加する可能性があります。
このうちキセノン133は放射性のガスです。炉内では630京ベクレル(630万ベクレルの100万倍のそのまた100万倍)と大量に発生します。半減期、つまり放射能が半分に減るまでの期間は5.2日です。
ヨウ素131も半減期が8日と短いですが、これも310京ベクレルと膨大な量が生成されます。
「ヨウ素131は半減期が短いので、環境からすぐなくなる」とよくいわれます。ところが事故から3、4カ月たっても下水処理場の汚泥や清掃工場の飛灰などから検出されました。それは、もともとの放出量が多いのでなかなか減らないからです。元が100円なら半分で50円ですが、元が100億円あるなら半分でも50億円です。半減期の10倍の80日間でも1000分の1ですから、減衰してもなお放射能が強いことを心得ておく必要があります。
さらに忘れてはならないのはセシウム137です。これは半減期が約30年と長く、l00万キロワットの原発を1年運転した場合にできる放射能は21京ベクレルです。その影響は何年、何十年にも及びかねません。
福島原発からは真っ先にキセノン133などの気体が放出されました。次にヨウ素131、さらにセシウム137などが放出され、周辺の放射線量率が高くなる原因になりました。
放射線にも種類
放射線にも種類があります。原発事故で浴びる放射線には、主としてガンマ(γ)線とべータ(β)線があります。
ガンマ線は一般に透過力が強く、少々の壁などを貫きます。上空を通過する放射性物質を含む雲や、地表に降り積もった放射性物質から被ばくします。セシウム137のような長寿命の放射性物質がチェルノブイリ事故のように高濃度に降り積もれば、長期の立ち入り・居住禁止などの措置を取らざるを得なくなります。
一方、べータ線はエネルギーの高いものでも空気中で数メートル、せいぜい数十センチメートル程度で止まります。途中に遮蔽(しゃへい)物があれば、割合簡単に食い止めることができます。
べータ線を出す放射性物質を飲み水や食晶の形で体内に取り込むと、体のなかで放出されたべータ線が周囲の細胞を傷つけます。いわゆる「内部被ばく」の問題です。
もう一つの放射線・アルファ(α)線も内部被ばくを起こします。アルファ線は紙1枚で食い止めることができます。体内では細胞1個か2個分しか飛びません。
しかし、短い距離の間にたっぷりとエネルギーを放出するので、局所的に大きな損害を受けます。アルファ線が体内に入るとガンマ線やべータ線より一段と危険性が高いのです。次回は人体への影響について説明します。
「しんぶん赤旗」日曜版 2011年8月7日付掲載
半減期が短いからって軽く見るといけないんですね。ヨウ素131やキセノン133は半減期が短いですけど、原発から生成される量が多いので、いったん外界に放出されるとずっと残るのだそうです。
「元が100円なら半分で50円ですが、元が100億円あるなら半分でも50億円です。半減期の10倍の80日間でも1000分の1ですから、減衰してもなお放射能が強いことを心得ておく必要がある」ってたとえ話しは分かりやすいですね。
半減期8日の10倍の80日間の場合は、2の10乗=2*2*2*2*2*2*2*2*2*2=1024です。約1000分の1でも、元が100億円なら1000万円なので、かなりの影響力を及ぼしているわけです。
放出される放射線の種類にも注目。いわゆる内部被ばくの影響が一番大きいのがα(アルファ)線なんですね。