安斉さんと考える放射能汚染③
成長期の子ども影響大きい
原発事故でもっとも心配になるのが放射線の人体への影響です。放射線を浴びた時に起こる障害には、大きくいって二つあります。
一つは、一度にまとまった量の放射線を浴びた場合に起こる障害です。脱毛や白内障は典型的な症状です。この障害は、かなり高い線量を浴びないと起こりません。ある限界線量を超えると確実に障害が起こるので、「確定的影響」と呼びます。
人体被ばく単位
今まで断りなしに使ってきましたが、放射線の人体への被ばく線量を表す単位が、「シーベルト」です。浴びる放射線がガンマ線か、べータ線かアルファ線かによって、破壊力が違います。ガンマ線を1としたら、アルファ線は20倍の破壊力を持ちます。放射線ごとの破壊力の違いを評価して、人体への放射線の影響を示す共通の尺度として使っているのがシーベルトです。

図にあるように、一度に1000ミリシーベルト(1シーベルト)程度浴びると、悪心、嘔吐(おうと)、下痢などの急性放射線症が出ます。4000ミリシーベルトなら半数の人が死亡します。広島・長崎ではこのような急性障害で亡くなった被爆者が多数いました。今回、福島原発で検出された10シーベルト以上という値は、1時間の被ばくで全員が死亡する高い線量です。
放射線障害には、もう一つのタイプがあります。被ばく量が少なくてもそれなりの確率(割合)で障害が発生する恐れがあるのです。これを「確率的影響」といいます。この障害には、がんや遺伝的影響があげられます。
ちょっと不謹慎ですが、私は「がん当たりくじ型障害」に例えています。放射線をたくさん浴びることはこのくじを数百枚買わされることに椙当します。放射線を少し浴びることは1、2枚買わされることに相当しますが、どちらも生涯持っていなけれぱならないくじで、結果の発表日は決まっていません。
例えば、100ミリシーベルト浴びて白血病になった人と、10ミリシーベルト浴びて白血病になった人がいるとします。この場合、症状のひどさは同じです。違いは100ミリシーベルト浴びた人の方が、10ミリシーベルト浴びた人よりも白血病にかかる確率が高いことです。
100ミリシーベルト以下の被ばくの領域では、人についての直接的証拠はまだ十分ではありません。しかし、がんや遺伝的影響は、線量レベルが低くても起こり得ると考えられています。
ですから、放射線から体を守る基本は「放射線は浴びないにこしたことはない」ということです。それは自然の放射線であれ、医療上の放射線であれ、原発からの放射線であれ、核兵器の放射線であれ、共通の原則です。
細胞に傷がつく
大きな心配は子どもへの影響です。子どもの方がおとなより放射線の影響を受けやすいのには理由があります。
放射線が体に当たるとがんや遺伝的影響が起こるのは、細胞に微細な傷がついて、いろいろな要因と結びついて障害発生の原因になるからです。
細胞に関しては、細胞が未分化なもの、細胞分裂が盛んなものほど、放射線の感受性が高いという法則があります。
人は一つの卵子から、複雑な分化の過程を経て、必要な器官が形成されます。子どもは細胞が未分化な状態にあり、成長期で細胞分裂の頻度も高いため、放射線の影響を受けやすいのです。その点では胎児が最も問題になります。
もう一つ、子どもの放射線感受性が高いわけは、同じベクレル数のヨウ素131を甲状腺に取り込んだ場合でも、臓器の目方がおとなよりも小さい子どもの方が多く被ばくするからです。甲状腺の目方はおとなで約20グラムですが、出生時の子どもでは約1グラムで、シーベルトに換算した被ばく線量が大きくなります。
次にお母さん方の大きな心配は、遺伝への影響です。放射線で遺伝的な影響が起こりうることは動物実験ではよく知られた事実です。人間だけ無関係というわけにはいきません。ただし、遺伝的影響は卵巣や精巣などの生殖腺の被ばくによって起こるものです。体細胞が被ばくしても遺伝的影響はありません。
遺伝的影響が問題になるのは、将来子どもを多くつくる可能性をもった若い世代です。とりわけ子どもが生殖腺に被ばくすることは極力避けなくてはいけません。
「しんぶん赤旗」日曜版 2011年8月14日付掲載
細胞分裂が盛んなほど放射線の影響をうけやすいんですね。生物の細胞の中の分子で一番複雑な構造をしていて遺伝情報をもっているDNAやRNAなどが傷つけば、細胞分裂する際に正常に分裂できない場合があります。
さらに卵子や精子などの生殖細胞の場合は未分化なんですからあらゆる情報が詰まっています。その生殖細胞や受精卵が放射線を浴びて、そのごく一部が傷ついても、受精卵が分化する際に、筋肉や骨格、内臓、神経、血管、脳髄、眼球など正常に構成できないことができるのです。
「放射線から体を守る基本は「放射線は浴びないにこしたことはない」ということです。それは自然の放射線であれ、医療上の放射線であれ、原発からの放射線であれ、核兵器の放射線であれ、共通の原則です」というのは徹する必要がありますね!
成長期の子ども影響大きい
原発事故でもっとも心配になるのが放射線の人体への影響です。放射線を浴びた時に起こる障害には、大きくいって二つあります。
一つは、一度にまとまった量の放射線を浴びた場合に起こる障害です。脱毛や白内障は典型的な症状です。この障害は、かなり高い線量を浴びないと起こりません。ある限界線量を超えると確実に障害が起こるので、「確定的影響」と呼びます。
人体被ばく単位
今まで断りなしに使ってきましたが、放射線の人体への被ばく線量を表す単位が、「シーベルト」です。浴びる放射線がガンマ線か、べータ線かアルファ線かによって、破壊力が違います。ガンマ線を1としたら、アルファ線は20倍の破壊力を持ちます。放射線ごとの破壊力の違いを評価して、人体への放射線の影響を示す共通の尺度として使っているのがシーベルトです。

図にあるように、一度に1000ミリシーベルト(1シーベルト)程度浴びると、悪心、嘔吐(おうと)、下痢などの急性放射線症が出ます。4000ミリシーベルトなら半数の人が死亡します。広島・長崎ではこのような急性障害で亡くなった被爆者が多数いました。今回、福島原発で検出された10シーベルト以上という値は、1時間の被ばくで全員が死亡する高い線量です。
放射線障害には、もう一つのタイプがあります。被ばく量が少なくてもそれなりの確率(割合)で障害が発生する恐れがあるのです。これを「確率的影響」といいます。この障害には、がんや遺伝的影響があげられます。
ちょっと不謹慎ですが、私は「がん当たりくじ型障害」に例えています。放射線をたくさん浴びることはこのくじを数百枚買わされることに椙当します。放射線を少し浴びることは1、2枚買わされることに相当しますが、どちらも生涯持っていなけれぱならないくじで、結果の発表日は決まっていません。
例えば、100ミリシーベルト浴びて白血病になった人と、10ミリシーベルト浴びて白血病になった人がいるとします。この場合、症状のひどさは同じです。違いは100ミリシーベルト浴びた人の方が、10ミリシーベルト浴びた人よりも白血病にかかる確率が高いことです。
100ミリシーベルト以下の被ばくの領域では、人についての直接的証拠はまだ十分ではありません。しかし、がんや遺伝的影響は、線量レベルが低くても起こり得ると考えられています。
ですから、放射線から体を守る基本は「放射線は浴びないにこしたことはない」ということです。それは自然の放射線であれ、医療上の放射線であれ、原発からの放射線であれ、核兵器の放射線であれ、共通の原則です。
細胞に傷がつく
大きな心配は子どもへの影響です。子どもの方がおとなより放射線の影響を受けやすいのには理由があります。
放射線が体に当たるとがんや遺伝的影響が起こるのは、細胞に微細な傷がついて、いろいろな要因と結びついて障害発生の原因になるからです。
細胞に関しては、細胞が未分化なもの、細胞分裂が盛んなものほど、放射線の感受性が高いという法則があります。
人は一つの卵子から、複雑な分化の過程を経て、必要な器官が形成されます。子どもは細胞が未分化な状態にあり、成長期で細胞分裂の頻度も高いため、放射線の影響を受けやすいのです。その点では胎児が最も問題になります。
もう一つ、子どもの放射線感受性が高いわけは、同じベクレル数のヨウ素131を甲状腺に取り込んだ場合でも、臓器の目方がおとなよりも小さい子どもの方が多く被ばくするからです。甲状腺の目方はおとなで約20グラムですが、出生時の子どもでは約1グラムで、シーベルトに換算した被ばく線量が大きくなります。
次にお母さん方の大きな心配は、遺伝への影響です。放射線で遺伝的な影響が起こりうることは動物実験ではよく知られた事実です。人間だけ無関係というわけにはいきません。ただし、遺伝的影響は卵巣や精巣などの生殖腺の被ばくによって起こるものです。体細胞が被ばくしても遺伝的影響はありません。
遺伝的影響が問題になるのは、将来子どもを多くつくる可能性をもった若い世代です。とりわけ子どもが生殖腺に被ばくすることは極力避けなくてはいけません。
「しんぶん赤旗」日曜版 2011年8月14日付掲載
細胞分裂が盛んなほど放射線の影響をうけやすいんですね。生物の細胞の中の分子で一番複雑な構造をしていて遺伝情報をもっているDNAやRNAなどが傷つけば、細胞分裂する際に正常に分裂できない場合があります。
さらに卵子や精子などの生殖細胞の場合は未分化なんですからあらゆる情報が詰まっています。その生殖細胞や受精卵が放射線を浴びて、そのごく一部が傷ついても、受精卵が分化する際に、筋肉や骨格、内臓、神経、血管、脳髄、眼球など正常に構成できないことができるのです。
「放射線から体を守る基本は「放射線は浴びないにこしたことはない」ということです。それは自然の放射線であれ、医療上の放射線であれ、原発からの放射線であれ、核兵器の放射線であれ、共通の原則です」というのは徹する必要がありますね!