ノーベル医学生理学賞 山中京大教授が受賞
今年のノーベル医学生理学賞は、体のあらゆる細胞になることができる人工多能性幹細胞(iPS細胞)を開発した京都大学教授の山中伸弥さん(50)が受賞しました。ノーベル賞は日本人で19人目、同医学生理学賞は利根川進・米マサチューセッツ工科大学教授に続く25年ぶり、2人目の快挙です。英ケンブリッジ大学のジョン・ガードン博士(79)もいっしょに受賞しました。

受賞発表から一夜明け、記者会見する山中教授=10月9日午前、京都市左京区
体細胞から万能細胞
受賞が決まった8日夜の記者会見で、山中さんは「さらに研究を続けて、本当の意味で社会貢献、医学応用をしなければならないという気持ちでいっぱいです」と、iPS細胞を臨床治療に役立てる決意を新たにしていました。
山中さんは1993年にアメリカに留学し、最初は胚性幹細胞(ES細胞)の研究にとりくみました。ES細胞はさまざまな組織や臓器に分化・増殖する万能細胞ですが、受精卵をもとにして作るため、倫理的な問題がつきまとっていました。
山中さんは「受精卵を使わずに万能細胞をつくろう」と決意。体細胞を「初期化」し、受精卵のような分化・増殖能力を回復させる四つの遺伝子を突き止めました。06年に世界で初めてマウスの皮膚細胞からiPS細胞を作製。07年にはヒトでもiPS細胞の作製に成功しました。
iPS細胞の登場によって「自分に移植するための臓器や、事故で失った手足などをつくれるかもしれない」という「再生医療」への期待が高まっています。
自分の体細胞から作られるiPS細胞なら、他人の臓器を移植する際に起きる拒絶反応が起こらないという利点があります。しかし、iPS細胞からできた組織のがん化の防止や、目的の細胞をどうやって作るかなど解決すべき課題も多くあります。現在、世界中で研究が進められています。
山中さんは62年大阪府生まれ。87年神戸大学医学部を卒業し、最初は整形外科医を志望しましたが、研究医に転進。現在、京都大学iPS細胞研究所長です。
効率だけでなく、“無駄”も大事
山中伸弥さんはノーベル物理学賞を受賞した益川敏英京都産業大教授との対談『「大発見」の思考法』(文春新書)のなかで科学研究のあり方について語っています。
「ベンチャー(事業化)の推奨も大切だとは思いますが、本当の意味で真実を追求する、純粋な科学者の研究が後回しにされてしまうことを危惧しています」
「今は効率が最優先される社会ですが、一見遊びに見えたり、無駄に見えたりすることの中に、実は豊かなものや未知なるものがたくさん隠されているのかもしれないですね。無駄なものを削(そ)ぎ落とそうとして、そうした未来の種まで捨て去ってしまわないようにしたいものです」

山中教授の受賞決定を受け記者会見する山本育海君(右)と母智子さん=10月8日夜、兵庫県明石市の同市役所
難病に苦しむ患者の期待も
「難病の研究が進むと思うとうれしい」
小学3年のときに全身の筋肉が少しずつ硬くなって骨に変化する難病(進行性骨化性線維異形成症=FOP)と診断され、山中伸弥教授と交流を続けてきた山本育海君(14)が、8日の記者会見で話しました。
FOPは、200万人に1人と患者が少ないこともあり、完治の方法は見つかっていません。
治療のため皮膚片を提供した育海君は、今回のノーベル賞で難病の研究が進み、早く治療法が見つかることを願っています。
難病対策を進めるために患者団体が共同して結成した日本難病・疾病団体協議会(JPA)の事務局長をしている水谷幸司さん(56)は、山中教授のノーベル賞受賞について、次のように語りました。
「今後、難病の治療や研究が進んでいくことに期待しています。iPS細胞はすぐには治療に結びつかないかもしれません。しかし、これまで人の器官や体組織ではリスクが高くて難しかった研究も、iPS細胞でつくった器官や体組織でなら進めていけるという期待もあります。政府は注目を集める革新的な研究だけでなく、地道な個々の難病の研究にもしっかり予算をつけて力を入れてほしい」
価値ある仕事された
2008年物理学賞受賞 益川敏英さん 京都産業大学教授
数年のうちには受賞される価値のある仕事をされていたと思う。再生医療のスタートラインをつくられた仕事です。広がりのある仕事なので、くくり方によって受賞される時期が違ってくると思っていましたが、まさか今年受賞されるとは想像していませんでした。
基礎研究の大切さ証明
1987年医学生理学賞受賞 利根川進さん 理化学研究所脳科学総合研究センター長
社会に役立つ技術の開発に基礎研究がいかに大切か証明していただいたという点からも、大変うれしく思います。
数年前、理研の脳科学総合研究センターで講演をしていただいたときのことを思い出します。一連の成果が、先生とわずか2人の若い学生という小チームでおこなわれた初期の研究の大発見に基づいていることを知り、自分のケースにとてもよく似ていたため感慨深いものがありました。
「しんぶん赤旗」日曜版 2012年10月14日付掲載
受賞の記者会見で、周りのみんなの応援があったからこその受賞だと・・・。クーロン技術やES細胞など3つの技術をベースにできたもの・・・。まだまだこれからです、社会に貢献して行きたいと・・・。
謙虚な姿勢でいいですねえ・・・。
現役の教授、それも50才と若い。これからが期待されます。
来年からは網膜など限られた臓器や組織ですが臨床試験が始まるそうです。僕も網膜剥離で組織が破壊された部分があるんですが、再生可能になるんでしょうか?
今年のノーベル医学生理学賞は、体のあらゆる細胞になることができる人工多能性幹細胞(iPS細胞)を開発した京都大学教授の山中伸弥さん(50)が受賞しました。ノーベル賞は日本人で19人目、同医学生理学賞は利根川進・米マサチューセッツ工科大学教授に続く25年ぶり、2人目の快挙です。英ケンブリッジ大学のジョン・ガードン博士(79)もいっしょに受賞しました。

受賞発表から一夜明け、記者会見する山中教授=10月9日午前、京都市左京区
体細胞から万能細胞
受賞が決まった8日夜の記者会見で、山中さんは「さらに研究を続けて、本当の意味で社会貢献、医学応用をしなければならないという気持ちでいっぱいです」と、iPS細胞を臨床治療に役立てる決意を新たにしていました。
山中さんは1993年にアメリカに留学し、最初は胚性幹細胞(ES細胞)の研究にとりくみました。ES細胞はさまざまな組織や臓器に分化・増殖する万能細胞ですが、受精卵をもとにして作るため、倫理的な問題がつきまとっていました。
山中さんは「受精卵を使わずに万能細胞をつくろう」と決意。体細胞を「初期化」し、受精卵のような分化・増殖能力を回復させる四つの遺伝子を突き止めました。06年に世界で初めてマウスの皮膚細胞からiPS細胞を作製。07年にはヒトでもiPS細胞の作製に成功しました。
iPS細胞の登場によって「自分に移植するための臓器や、事故で失った手足などをつくれるかもしれない」という「再生医療」への期待が高まっています。
自分の体細胞から作られるiPS細胞なら、他人の臓器を移植する際に起きる拒絶反応が起こらないという利点があります。しかし、iPS細胞からできた組織のがん化の防止や、目的の細胞をどうやって作るかなど解決すべき課題も多くあります。現在、世界中で研究が進められています。
山中さんは62年大阪府生まれ。87年神戸大学医学部を卒業し、最初は整形外科医を志望しましたが、研究医に転進。現在、京都大学iPS細胞研究所長です。
効率だけでなく、“無駄”も大事
山中伸弥さんはノーベル物理学賞を受賞した益川敏英京都産業大教授との対談『「大発見」の思考法』(文春新書)のなかで科学研究のあり方について語っています。
「ベンチャー(事業化)の推奨も大切だとは思いますが、本当の意味で真実を追求する、純粋な科学者の研究が後回しにされてしまうことを危惧しています」
「今は効率が最優先される社会ですが、一見遊びに見えたり、無駄に見えたりすることの中に、実は豊かなものや未知なるものがたくさん隠されているのかもしれないですね。無駄なものを削(そ)ぎ落とそうとして、そうした未来の種まで捨て去ってしまわないようにしたいものです」

山中教授の受賞決定を受け記者会見する山本育海君(右)と母智子さん=10月8日夜、兵庫県明石市の同市役所
難病に苦しむ患者の期待も
「難病の研究が進むと思うとうれしい」
小学3年のときに全身の筋肉が少しずつ硬くなって骨に変化する難病(進行性骨化性線維異形成症=FOP)と診断され、山中伸弥教授と交流を続けてきた山本育海君(14)が、8日の記者会見で話しました。
FOPは、200万人に1人と患者が少ないこともあり、完治の方法は見つかっていません。
治療のため皮膚片を提供した育海君は、今回のノーベル賞で難病の研究が進み、早く治療法が見つかることを願っています。
難病対策を進めるために患者団体が共同して結成した日本難病・疾病団体協議会(JPA)の事務局長をしている水谷幸司さん(56)は、山中教授のノーベル賞受賞について、次のように語りました。
「今後、難病の治療や研究が進んでいくことに期待しています。iPS細胞はすぐには治療に結びつかないかもしれません。しかし、これまで人の器官や体組織ではリスクが高くて難しかった研究も、iPS細胞でつくった器官や体組織でなら進めていけるという期待もあります。政府は注目を集める革新的な研究だけでなく、地道な個々の難病の研究にもしっかり予算をつけて力を入れてほしい」
価値ある仕事された
2008年物理学賞受賞 益川敏英さん 京都産業大学教授
数年のうちには受賞される価値のある仕事をされていたと思う。再生医療のスタートラインをつくられた仕事です。広がりのある仕事なので、くくり方によって受賞される時期が違ってくると思っていましたが、まさか今年受賞されるとは想像していませんでした。
基礎研究の大切さ証明
1987年医学生理学賞受賞 利根川進さん 理化学研究所脳科学総合研究センター長
社会に役立つ技術の開発に基礎研究がいかに大切か証明していただいたという点からも、大変うれしく思います。
数年前、理研の脳科学総合研究センターで講演をしていただいたときのことを思い出します。一連の成果が、先生とわずか2人の若い学生という小チームでおこなわれた初期の研究の大発見に基づいていることを知り、自分のケースにとてもよく似ていたため感慨深いものがありました。
「しんぶん赤旗」日曜版 2012年10月14日付掲載
受賞の記者会見で、周りのみんなの応援があったからこその受賞だと・・・。クーロン技術やES細胞など3つの技術をベースにできたもの・・・。まだまだこれからです、社会に貢献して行きたいと・・・。
謙虚な姿勢でいいですねえ・・・。
現役の教授、それも50才と若い。これからが期待されます。
来年からは網膜など限られた臓器や組織ですが臨床試験が始まるそうです。僕も網膜剥離で組織が破壊された部分があるんですが、再生可能になるんでしょうか?