苦境の中小企業 円滑化法打ち切り① 返済額が元に戻ると
安倍晋三政権は、中小企業の資金繰りを支えている金融円滑化法を3月末で打ち切ろうとしています。しかし、景気は一向に回復しておらず、必死に持ちこたえている中小業者は廃業に追い込まれかねない状況です。(中川亮)
東京都江東区で皮革製品・アクセサリー販売店を営む小林仁さん(63)=仮名=は、2010年に円滑化法を利用して、毎月の返済額を減らしました。大手銀行と信用金庫の2行への返済額は、同法利用前の半分となる7・5万円です。「円滑化法が打ち切られたら、月々の返済額を元の額に戻すと銀行から言われるかもしれない。今の売り上げでは100%無理」と首を横に振りながら、不安を口にしました。
円滑化法は、リーマン・ショック後に中小企業の資金繰りが大きく悪化したことを受け、09年12月に施行。中小業者や住宅ローン利用者が借入条件の変更を希望する場合、金融機関が応じる努力をするよう義務づけています。利用状況は、中小企業によるものが343万7155件、債権額にすると95兆7391億円にのぼっています。
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東京都江東区の皮革製品・アクセサリー販売店
売上高激減
「お客さんは主に年金暮らしの高齢者です。最近は来店が減ってしまい、月に3回は来ていた人が、1回しか顔を見せなくなった」。小林さんも、リーマン・ショック後に売上高が激減。月200万~300万円あった売上高は、約150万円に落ち込みました。
中小企業の現状は、資本金1000万円以上1億円未満の規模の事業所で見ると、営業利益が05年度以降の6年間で約28%減りました。とりわけ、資本金1000万円未満の小零細企業は約87%減と危機的な状況です。
円滑化法により、借金の負担を一時的に軽減しても、税金や家賃の支払いなども重くのしかかります。
小林さんの店が入るビルの家賃は月17・5万円。「今の売り上げなら、10万円払うのが精いっぱい。家主と交渉したが下げてもらえなかった。せめて売り上げが200万円台に戻らないと厳しい」と、今後も支払い続けられるか心もとない状況です。
さらに、税金の滞納も、消費税分だけで50万円あります。「お客さんも少ない年金で暮らしている。消費税分の値上げをしたらますます売れなくなる」。価格に転嫁できない消費税分は、身銭を切って負担しています。売上が低迷するなか滞納は積み重なりました。滞納額は、法人事業税や固定資産税も合わせると63万円。毎月5・3万円ずつ分納しています。ところが、東京都から、「分納が遅れがち」などという理由で「差し押さえ」の通知書まで送られ、苦悩が絶えません。
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借金できぬ
安倍政権が景気対策として打ち出している「金融緩和」は、日銀が市中に供給するお金を増やして、企業が銀行から資金を借りやすくしようというもの。ところが、苦境の中にある中小企業には、資金需要がありません。小林さんは言います。
「借りやすくするというけれど、もうこれ以上借金しないよ。借りても返せないから」
事業継続は、いまだ見通せません。「今日一日の売り上げすら全く読めない。あと2、3年、こんな状況が続けばもう…」とつぶやき、うつむきました。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年2月7日付掲載
中小零細業者の売り上げが減り、利益が減っている中、せめてもの資金繰りとして導入された「金融円滑化法」。デフレ不況が続く中で打ち切りとは、あまりにも無情ではないでしょうか。
安倍晋三政権は、中小企業の資金繰りを支えている金融円滑化法を3月末で打ち切ろうとしています。しかし、景気は一向に回復しておらず、必死に持ちこたえている中小業者は廃業に追い込まれかねない状況です。(中川亮)
東京都江東区で皮革製品・アクセサリー販売店を営む小林仁さん(63)=仮名=は、2010年に円滑化法を利用して、毎月の返済額を減らしました。大手銀行と信用金庫の2行への返済額は、同法利用前の半分となる7・5万円です。「円滑化法が打ち切られたら、月々の返済額を元の額に戻すと銀行から言われるかもしれない。今の売り上げでは100%無理」と首を横に振りながら、不安を口にしました。
円滑化法は、リーマン・ショック後に中小企業の資金繰りが大きく悪化したことを受け、09年12月に施行。中小業者や住宅ローン利用者が借入条件の変更を希望する場合、金融機関が応じる努力をするよう義務づけています。利用状況は、中小企業によるものが343万7155件、債権額にすると95兆7391億円にのぼっています。
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東京都江東区の皮革製品・アクセサリー販売店
売上高激減
「お客さんは主に年金暮らしの高齢者です。最近は来店が減ってしまい、月に3回は来ていた人が、1回しか顔を見せなくなった」。小林さんも、リーマン・ショック後に売上高が激減。月200万~300万円あった売上高は、約150万円に落ち込みました。
中小企業の現状は、資本金1000万円以上1億円未満の規模の事業所で見ると、営業利益が05年度以降の6年間で約28%減りました。とりわけ、資本金1000万円未満の小零細企業は約87%減と危機的な状況です。
円滑化法により、借金の負担を一時的に軽減しても、税金や家賃の支払いなども重くのしかかります。
小林さんの店が入るビルの家賃は月17・5万円。「今の売り上げなら、10万円払うのが精いっぱい。家主と交渉したが下げてもらえなかった。せめて売り上げが200万円台に戻らないと厳しい」と、今後も支払い続けられるか心もとない状況です。
さらに、税金の滞納も、消費税分だけで50万円あります。「お客さんも少ない年金で暮らしている。消費税分の値上げをしたらますます売れなくなる」。価格に転嫁できない消費税分は、身銭を切って負担しています。売上が低迷するなか滞納は積み重なりました。滞納額は、法人事業税や固定資産税も合わせると63万円。毎月5・3万円ずつ分納しています。ところが、東京都から、「分納が遅れがち」などという理由で「差し押さえ」の通知書まで送られ、苦悩が絶えません。
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借金できぬ
安倍政権が景気対策として打ち出している「金融緩和」は、日銀が市中に供給するお金を増やして、企業が銀行から資金を借りやすくしようというもの。ところが、苦境の中にある中小企業には、資金需要がありません。小林さんは言います。
「借りやすくするというけれど、もうこれ以上借金しないよ。借りても返せないから」
事業継続は、いまだ見通せません。「今日一日の売り上げすら全く読めない。あと2、3年、こんな状況が続けばもう…」とつぶやき、うつむきました。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年2月7日付掲載
中小零細業者の売り上げが減り、利益が減っている中、せめてもの資金繰りとして導入された「金融円滑化法」。デフレ不況が続く中で打ち切りとは、あまりにも無情ではないでしょうか。