変貌する経済 データで見る② 大銀行融資で海外投資
日本企業の海外進出の金額を示すのは対外直接投資残高です。2000年から13年にかけて3倍以上に増えました
中小融資は減
大企業は海外進出を拡大し、現地販売だけでなく、日本への“逆輸入”を増やしています。日本政策投資銀行の「企業行動に関する意識調査」(2013年)によると、企業が海外生産を行う理由(複数回答)で最多は「人件費等製造コストの低さ」の72・3%です。大企業が海外生産を拡大して利益を増やす一方、日本の国内生産は衰退しています。安倍晋三政権は「新成長戦略」に「企業の収益力向上のための海外展開支援」を盛り込み、大企業のさらなる海外進出を後押ししています。
大企業の海外進出を支えているのが三菱UFJ、みずほ、三井住友の3メガバンクによる融資です。海外向け貸出残高を、3メガ体制が発足した直後の05年9月末と比べると、直近の14年3月末は2・4倍に増え、51兆6000億円に上りました。
3メガの海外貸出金は08年9月のリーマン・ショックでいったん落ち込みましたが、10年9月末以降回復に転じ、その後急速に増加しました。各行とも利ざやの大きい海外貸し出しを重視してきました。
これに対し、3メガの中小企業等向け貸出残高は同期間、116兆6000億円から104兆3000億円へ1割以上減少しました。国内貸し出しに占める中小企業等向け貸出比率は14年3月末、59・8%。3メガ発足後、初めて60%を下回り、最低です。銀行本来の役割は国内の中小企業に融資して経済を活性化させることですが、大銀行は海外市場で稼ぐことほどには力を入れていません。
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日本の重機製造会社の中国工場闘安徽省
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配当非課税も
大企業の海外進出には税制上の特典があります。外国子会社から受ける配当などの額の95%を、非課税とする「海外子会社配当益金不算入」という制度です。海外に多くの子会社を展開する多国籍企業が恩恵を受けています。
国税庁の2012年度「会社標本調査」によると、この制度によって益金不算入となる金額は合計3兆4765億円に上ります。その95・2%が資本金10億円超の大企業と連結法人のものです。連結法人は子会社をいくつも抱える大企業です。同年度、国税の法人税率が25・5%なので単純に計算すれば9000億円近い減税になります。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年10月11日付掲載
国内の生産を支える企業を応援するのが本来の銀行の役目ですが、儲かるためなら国内でも国外でも関係なし。
結局、税制的に優遇される多国籍企業を応援することに。
日本企業の海外進出の金額を示すのは対外直接投資残高です。2000年から13年にかけて3倍以上に増えました
中小融資は減
大企業は海外進出を拡大し、現地販売だけでなく、日本への“逆輸入”を増やしています。日本政策投資銀行の「企業行動に関する意識調査」(2013年)によると、企業が海外生産を行う理由(複数回答)で最多は「人件費等製造コストの低さ」の72・3%です。大企業が海外生産を拡大して利益を増やす一方、日本の国内生産は衰退しています。安倍晋三政権は「新成長戦略」に「企業の収益力向上のための海外展開支援」を盛り込み、大企業のさらなる海外進出を後押ししています。
大企業の海外進出を支えているのが三菱UFJ、みずほ、三井住友の3メガバンクによる融資です。海外向け貸出残高を、3メガ体制が発足した直後の05年9月末と比べると、直近の14年3月末は2・4倍に増え、51兆6000億円に上りました。
3メガの海外貸出金は08年9月のリーマン・ショックでいったん落ち込みましたが、10年9月末以降回復に転じ、その後急速に増加しました。各行とも利ざやの大きい海外貸し出しを重視してきました。
これに対し、3メガの中小企業等向け貸出残高は同期間、116兆6000億円から104兆3000億円へ1割以上減少しました。国内貸し出しに占める中小企業等向け貸出比率は14年3月末、59・8%。3メガ発足後、初めて60%を下回り、最低です。銀行本来の役割は国内の中小企業に融資して経済を活性化させることですが、大銀行は海外市場で稼ぐことほどには力を入れていません。
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日本の重機製造会社の中国工場闘安徽省
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配当非課税も
大企業の海外進出には税制上の特典があります。外国子会社から受ける配当などの額の95%を、非課税とする「海外子会社配当益金不算入」という制度です。海外に多くの子会社を展開する多国籍企業が恩恵を受けています。
国税庁の2012年度「会社標本調査」によると、この制度によって益金不算入となる金額は合計3兆4765億円に上ります。その95・2%が資本金10億円超の大企業と連結法人のものです。連結法人は子会社をいくつも抱える大企業です。同年度、国税の法人税率が25・5%なので単純に計算すれば9000億円近い減税になります。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年10月11日付掲載
国内の生産を支える企業を応援するのが本来の銀行の役目ですが、儲かるためなら国内でも国外でも関係なし。
結局、税制的に優遇される多国籍企業を応援することに。