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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

変貌する経済 税逃れ④ 「総利益を統合」し課税

2014-10-20 22:18:04 | 経済・産業・中小企業対策など
変貌する経済 税逃れ④ 「総利益を統合」し課税

アップル、アマゾン、グーグルなど多国籍大企業の課税逃れが、欧米で政治問題になっています。2012年6月、メキシコで開かれた20力国・地域(G20)首脳会議が採択した首脳宣言は、「租税回避地によってもたらされるリスクへの対処」をうたいました。この問題は現在、「税源浸食と利益移転」(BEPS)と呼ばれるもの。経済協力開発機構(OECD)内で検討が進められています。
BEPSについてOECDは、「多国籍企業が利益を海外に移すことで、納税額を大幅に削減、場合によってはほぼゼロにする機会が生まれている。現行の時代遅れになった課税ルールの隙間やミスマッチにより、利益を税務上『消失』させたり、企業が経済活動をほとんど、あるいはまったく行っていない無税や低税率の国・地域へと移転したりすること」と説明しています。

15分野の「計画」
13年7月19日、OECDは「BEPS行動計画」を公表。モスクワで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議に提出しました。電子商取引課税や有害税制への対抗、租税条約乱用防止、移転価格税制など、取り組まれるべき15分野を列挙しました。
同年9月に開催されたG20サミット(ロシア・サンクトペテルブルク)は首脳宣言で、同計画を「税源浸食・利益移転に対処することを目的としたOECD策定の野心的で包括的な行動計画を全面的に支持する」としました。首脳宣言はさらに、「利益を生み出す経済活動が行われ、価値が創出される場所で、利益が課税されるべきである」と強調。多国籍企業に対する課税のあり方の原則を示しました。
OECDは今年9月16日、BEPS行動計画の第1次提言を発表しました。第1次提言は、多国籍企業の国別の収益や納税額、グループ内の取引状況などを各国の税務当局に年1回報告することを義務づけ、財務内容の透明性を高めることなどが柱になっています。15年末までに15分野の行動計画の内容をまとめる予定です。
国際機関の動きに対し、多国籍企業の経営者団体からは抵抗する動きが出ています。
アメリカの巨大企業の最高経営責任者(CEO)で構成するビジネス・ラウンドテーブルは、BEPS行動計画が企業活動への不確実性を招き、貿易投資への障害となるなどと懸念を表明。さらに企業情報の報告は、競争他社に公開される重大な懸念があると強調しています。
日本では、経団連が事務負担増などの口実を挙げ、「わが国の立地競争力の低下につながることのないよう」と反発しています。



オーストラリアで開かれたG20財務相・中央銀行総裁会議=9月24日(ロイター)

途上国最も被害
これに対し、市民社会は、BEPS行動計画を評価しつつ、さらなる改善を求めています。国際協力団体のオックスファムは、多国籍企業の税逃れで最も被害を受けているのは途上国だとして、「途上国もG20諸国と同等の発言権を与えられてしかるべきです」としています。課税逃れの規制にとって重要な企業の所有者情報の開示については、税務当局だけではなく、市民社会にも公開することを求めています。
タックスヘイブン(租税回避地)を監視している国際的ネットワークのタックスジャスティスは、形式的な存在をもとに課税する現在のあり方に対し、「根本的な考え方の転換が必要」としています。多国籍企業が世界各地で生み出している総利益を統合し、真の経済実態に従い、企業活動を行っている国々での適切な課税の必要性を強調。「OECDのすべてのメンバーは、この改革のための真剣な研究の扉を緊急に開く必要がある。これこそが、グローバル化した私たちの世界において、多国籍企業に適切に課税をすることができる唯一の効果的な方法である」としています。
多国籍企業の税逃れの包囲網は確実に広がっています。
(おわり)(この項は、金子豊弘が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2014年10月18日付掲載


「多国籍企業が世界各地で生み出している総利益を統合し、真の経済実態に従い、企業活動を行っている国々での適切な課税の必要性を強調」
まさに今、それが求められています。