きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

識者が斬る新「3本の矢」② 根拠ない口先の「充実」 東北大学名誉教授 日野秀逸さん

2015-10-10 13:59:56 | 経済・産業・中小企業対策など
識者が斬る新「3本の矢」② 東北大学名誉教授 日野秀逸さん

根拠ない口先の「充実」
新たな「3本の矢」には根拠がなく、大手新聞も不満を書いています。政治から経済への目くらましで出てきたのだから当然です。
GDP(国内総生産)600兆円という目標は、「財政健全化」をめざすシナリオの中で内閣府が試算した数字にすぎません。実質2%、名目3%以上の成長を続けるなら、2020年度に594兆円、21年度に616兆円になるというものです。安倍首相に新しい構想があるかといえば、何もないのです。
14年度の実質GDPは0・9%のマイナス成長です。15年度の見込みも1・5%程度にすぎません。アベノミクスの実績から見て、600兆円は到底実現できる数字ではありません。

経済は落ち込む
なによりGDPの6割を占める個人消費が低迷し、成長のエンジンが故障しています。そのうえ2017年には消費税率を予定通り10%に引き上げるといいます。経済は成長するどころか、また落ち込むでしょう。
2番目に、出生率を1・42から1・8に引き上げるといいます。しかし先進国全体を見渡しても、1・8の達成はかなりの難事業です。ノルウェーやスウェーデンやフランスやデンマーク並みの女性支援政策が必要です。保育政策、雇用政策、社会保障政策が総合的に充実して、初めて可能になる数字なのです。
従来の延長線上の政策では無理です。安倍首相は財源も示していません。待機児童への対応も、少ない保育士配置で営利企業を参入させる「横浜方式」で進むとみざるをえません。保育の質の低下とセットになった、商品としての保育サービスの拡大です。安心して子どもを預けて働き続けることにはつながりません。
3番目の社会保障についても、安倍内閣の実績をみれば信用できません。「骨太の方針」では社会保障費の自然増分を今後5年間にわたって抑制すると決めています。「充実」というのは口先だけのリップサービスだといわざるをえません。



交通量の多い道路に面して建てられたプレハブ造りの小規模保育施設=横浜市

営利企業の参入
安倍内閣が本気で考えていることがあるとすれば、営利企業を参入させ、公的保険外のサービスを育てることでしょう。しかしそうしたサービスを使えるのは経済的にゆとりのある世帯だけです。
介護離職は、日本企業の雇用、人事、労務の総合的な結果でもあります。安倍内閣による労働者派遣法の改悪で、状況がさらに悪くなるのは確実です。
一方、地域医療や地域福祉、住宅福祉が総合的に進めば、介護離職の防止につながります。安倍内閣はこの面でも、自治体財政の悪化による福祉後退をもたらしました。
さらに安倍内閣は今年、介護報酬を大幅に切り下げ、介護事業所の経営難に拍車をかけました。現場では介護職員を増やすどころか、事業の閉鎖や縮小が起こっています。
こんな政治を進めておいて「介護離職ゼロ」を3本の矢に掲げるのは、“安倍的無神経”と世論無視の政治手法を持ち合わせていなければ、恥ずかしくてできないことです。
ただし、首相が「子育て支援」や「介護離職ゼロ」を掲げたことで、政策論戦の突破口は広がりました。
労働運動や住民運動、社会保障運動にとっては、「掲げたのだから実行せよ」と迫ることが重要です。その際にも“三つのわな”への注意は欠かせません。
(この項おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年10月7日付掲載


出生率を1・8に引きげるっていっても、育児休暇、保育所の確保、子どもの医療費無料化、正社員化の推進など本格的に進めないと無理な話し。
産みたくても産めない経済状態から脱却させる政策が必要。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする