きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

識者が斬る新「3本の矢」⑤ アベノミクスの失敗隠す 中央大学名誉教授 今宮謙二さん

2015-10-15 22:03:52 | 経済・産業・中小企業対策など
識者が斬る新「3本の矢」⑤ 中央大学名誉教授 今宮謙二さん

アベノミクスの失敗隠す
安倍晋三首相は9月24日の記者会見で、突然、これまでの3本の矢の代わりに、「新しい3本の矢」の経済政策を発表しました。
その内容は、①希望を生み出す強い経済②夢を紡ぐ子育て支援③安心につながる社会保障―というものです。そして、名目国内総生産(GDP)600兆円、希望出生率1・8、介護離職ゼロなどの実現を表明しています。経済の現状について、デフレ脱却は目前にあると強調し、今後「1億総活躍社会」を目指すなどを語っています。安倍首相はアベノミクスが第2ステージへ移ることをはっきり宣言したのです。



「戦争法案絶対廃案」と声を上げる人たち=9月15日、国会正門前

唐突発表の狙い
この第2ステージの唐突な発表のねらいは大きく見て、二つ考えられます。
第一は、安倍政権による戦争法強行に対する国民の怒りが予想以上に広まり、自民党内部や財界に危機感が深まりだした点です。安倍首相の祖父である岸信介氏の政権が1960年新安保条約を今回と同じく強行採決した後、国民の強い反対で退陣。池田勇人政権が誕生し、所得倍増計画を発表しました。その後、60年代を通じて高度経済成長時代となり、国民の安保反対運動も収まりました。安倍首相はおそらく、この歴史的経過を踏まえて、戦争法反対の国民運動の広がりを少しでも阻止するために新しい経済政策を発表し、国民の支持を取り戻そうと考えたと推察されます。
第二のねらいは、これまで実施してきたアベノミクスが限界に達し、その失敗がよりはっきりしてきたことを隠す点です。「第1の矢」である金融緩和政策のもとで株価上昇や円安加速化が実現しましたが、景気は回復していません。一方、この異常な金融緩和で投機資本の活動はいっそう深まり、日本銀行による巨額な国債と有価証券購入、株価の買い支えなど金融市場にゆがみが表れ始めています。長期間のゼロ金利政策により正常な金融政策の機能はマヒしたままです。
「第2の矢」の財政支出も効果なく、国の借金は1000兆円を超えるなど世界一の債務国となり、9月16日、アメリカの格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は日本国債の格付けを1段階引き下げ「Aプラス」として中国や韓国以下となりました。その他の主要格付け会社もすでに格下げを実行しています。そして「第3の矢」の成長戦略もほとんど評価できず、経済再建は困難と格付け会社は判断しているのです。この失敗を隠すため第2ステージを派手に発表したと思われます。

国民の怒り頂点
しかし、このねらいは成功しないでしょう。日本を実質的にアメリカの「軍事従属」国へ変質させた戦争法への国民の怒りは頂点に達し、その廃止への国民的運動が広がり、60年安保時代とは質的に大きく違っているからです。また、資本主義も60年代と違い、不況長期化などその限界が間われており、アベノミクスの失敗は誰から見ても明らかで、隠せるものではないからです。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年10月14日付掲載


戦争法(安保法制)廃止の運動は、60年代の安保改定反対闘争と異なり、シールズ、ママの会、若手弁護士の「あすわか」など、草の根で質的に変化しています。
60年代は、曲がりなりにも労働者の賃金が上がっていましたが、今は下がり続けています。
国民はだまされません。