アベノミクス大言空言④ 「デフレではない」 伸びぬ生産 増えぬ投資
安倍晋三首相は9月24日の記者会見で「もはや『デフレではない』という状態まできた」と強調しました。しかし、4~6月期国内総生産(GDP)は前期比年率換算でマイナス1・2%。安倍政権発足以来、10期中4期がマイナス成長です。
8月の鉱工業生産指数は96・3で2013年6月以来の低水準。政府が景気の判断を示す月例経済報告も10月は「一部に弱さ」と下方修正しました。特に生産が「このところ弱含んでいる」と下方修正されたことが注目されます。「デフレ脱却」どころか、実体経済は一向によくなっていません。
プラス難しい
19日に開かれた日本経済新聞社など主催の「景気討論会」でも経済同友会の小林喜光代表幹事が「7~9月期の成長率は横ばいかマイナスだろう。製造業全体ではプラスの方向を期待するのは難しいのではないか」と不透明な先行きを述べました。出席者からは「設備投資が出てこない」「消費が弱い」「日本経済は足踏み状態」との指摘が相次ぎました。
2014年度、大企業の収益は過去最高。実質GDPは前年度比マイナス0・9%。大企業だけが栄えて日本経済が落ち込む、きわめていびつな状態です。
「デフレ」は本来、物価が継続して下落する状態を意味します。「アベノミクス」は「デフレ脱却」を掲げてスタートしましたが、いまや袋小路にはまりこんでいます。
政府・日銀が掲げる目標は2%の物価上昇ですが、直近8月の消費者物価上昇率は、価格変動の激しい生鮮食品を除いてマイナス0・1%。日銀は当初、「2015年度ごろ」と見込んでいた目標の達成時期をすでに「16年度前半ごろ」に先送りしています。


東京港で貨物船からトラックにコンテナを積み込む労働者=10月20日(ロイター)
「困った」
その一方、日銀による9月の「生活意識アンケート調査」では84%が「1年前と比べて物価が上がった」と答え、「困った」との回答は82・5%です。
内閣府は「食料や一般のサービスなどが前年比プラスに寄与する一方で、主にエネルギーが前年比マイナスに寄与しており、両者が打ち消しあっている」と現状を分析しました(10月19日「今週の指標」)。8月の物価上昇率の中身を見ると、最も上がったのが食料の0・32%、次いで家賃を除く一般サービス0・23%、その他の財0・19%、電気・ガス代を除く公共料金0・12%など。その一方でエネルギーが0・93%の下落です。
物価が全体として下落しても食料は値上がりし、生活を圧迫しています。2%の物価上昇を目標に日銀が進める「異次元の金融緩和」のもとで円安が進行し、輸入物価を引き上げていることが響いています。物価上昇率がマイナスでもこの状態ですから、目標通り2%の物価上昇が起きれば、国民生活への被害は多大なものになります。アベノミクスの誤りは明らかです。
大企業は過去最高の収益をあげ、過去最高の内部留保をため込んでいます。これを賃上げに活用させ、国民生活を立て直す政策に転換することが日本経済再建の道です。
(おわり)(金子豊弘、北川俊文、山田俊英が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年10月24日付掲載
最も上がったのが食料の0・32%、次いで家賃を除く一般サービス0・23%。国民生活に密接な部分は値上がりしていて「デフレ脱却」かもしれませんが、日本経済全体ではデフレ傾向を抜け出せていない。
賃金は下がるし、生活必需品は値上がりするし…。「ババ」を引かされるのは、国民だけ。
安倍晋三首相は9月24日の記者会見で「もはや『デフレではない』という状態まできた」と強調しました。しかし、4~6月期国内総生産(GDP)は前期比年率換算でマイナス1・2%。安倍政権発足以来、10期中4期がマイナス成長です。
8月の鉱工業生産指数は96・3で2013年6月以来の低水準。政府が景気の判断を示す月例経済報告も10月は「一部に弱さ」と下方修正しました。特に生産が「このところ弱含んでいる」と下方修正されたことが注目されます。「デフレ脱却」どころか、実体経済は一向によくなっていません。
プラス難しい
19日に開かれた日本経済新聞社など主催の「景気討論会」でも経済同友会の小林喜光代表幹事が「7~9月期の成長率は横ばいかマイナスだろう。製造業全体ではプラスの方向を期待するのは難しいのではないか」と不透明な先行きを述べました。出席者からは「設備投資が出てこない」「消費が弱い」「日本経済は足踏み状態」との指摘が相次ぎました。
2014年度、大企業の収益は過去最高。実質GDPは前年度比マイナス0・9%。大企業だけが栄えて日本経済が落ち込む、きわめていびつな状態です。
「デフレ」は本来、物価が継続して下落する状態を意味します。「アベノミクス」は「デフレ脱却」を掲げてスタートしましたが、いまや袋小路にはまりこんでいます。
政府・日銀が掲げる目標は2%の物価上昇ですが、直近8月の消費者物価上昇率は、価格変動の激しい生鮮食品を除いてマイナス0・1%。日銀は当初、「2015年度ごろ」と見込んでいた目標の達成時期をすでに「16年度前半ごろ」に先送りしています。


東京港で貨物船からトラックにコンテナを積み込む労働者=10月20日(ロイター)
「困った」
その一方、日銀による9月の「生活意識アンケート調査」では84%が「1年前と比べて物価が上がった」と答え、「困った」との回答は82・5%です。
内閣府は「食料や一般のサービスなどが前年比プラスに寄与する一方で、主にエネルギーが前年比マイナスに寄与しており、両者が打ち消しあっている」と現状を分析しました(10月19日「今週の指標」)。8月の物価上昇率の中身を見ると、最も上がったのが食料の0・32%、次いで家賃を除く一般サービス0・23%、その他の財0・19%、電気・ガス代を除く公共料金0・12%など。その一方でエネルギーが0・93%の下落です。
物価が全体として下落しても食料は値上がりし、生活を圧迫しています。2%の物価上昇を目標に日銀が進める「異次元の金融緩和」のもとで円安が進行し、輸入物価を引き上げていることが響いています。物価上昇率がマイナスでもこの状態ですから、目標通り2%の物価上昇が起きれば、国民生活への被害は多大なものになります。アベノミクスの誤りは明らかです。
大企業は過去最高の収益をあげ、過去最高の内部留保をため込んでいます。これを賃上げに活用させ、国民生活を立て直す政策に転換することが日本経済再建の道です。
(おわり)(金子豊弘、北川俊文、山田俊英が担当しました)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年10月24日付掲載
最も上がったのが食料の0・32%、次いで家賃を除く一般サービス0・23%。国民生活に密接な部分は値上がりしていて「デフレ脱却」かもしれませんが、日本経済全体ではデフレ傾向を抜け出せていない。
賃金は下がるし、生活必需品は値上がりするし…。「ババ」を引かされるのは、国民だけ。