とことんわかる 核兵器禁止条約⑧ 核被害者への援助
核兵器禁止条約が第6条「被害者援助と環境回復」で、核兵器使用と核実験の被害者への援助を明記したことも画期的です。
心身両面の医療援助を規定するとともに、社会的、経済的に差別がないように支援をすること(社会的、経済的包摂)も定められています。戦後、被爆者がさまざまな差別を強いられてきたことを考えると、いかに被爆者の苦難に心をよせた条約であるかが分かります。
これらは被爆者への援護・連帯をかかげてきた原水爆禁止運動と被爆者運動、世界各地の核実験被害者の願いを反映したものです。
使用国の責任
議論では、核兵器を使用したり、実験したりした国の「責任を明確にすべきだ」という意見も強くだされました。
ビキニ環礁などで67回も米国の核実験が行われたマーシャル諸島共和国の代表は、被害をもたらした国には責任がある、と訴え、共感をよびました。
ただ、特定の国の責任だけを規定するのは条約のあり方としてふさわしくないという意見もありました。
最終的には6条でなく、第7条「国際的協力および援助」に核兵器を使用、実験した国は「犠牲者の支援および環境回復の目的で、被害を受けた締約国にたいし適切な支援を提供する責任を有する」という文言で明記されました。米国が条約に参加した場合には、被爆者に対する支援の責任ということが問題になりうるわけです。
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今年の原水爆禁止世界大会・国際会議で、アメリカがマーシャル諸島で繰り返した核実験による深刻な被害を告発するアバッカ・マディソン・アンジャインさん(マーシャル諸島元上院議員)(左)とモレス・アブラハムさん(マーシャル諸島エニウェトク環礁自治体議員)=8月3日、広島市
参加促す共同
第12条「普遍性」では、すべての国からこの条約への支持を得て、非締約国が条約に参加するよう促すこと、が定められています。締約国と市民社会が共同して参加を広げていくことが期待されます。
第15条「発効」では、50力国が批准した後、90日で条約が発効するとされています。
第17条は脱退です。議論では、「脱退を想定すべきではでない」との意見が出されました。一方、条約というものには、脱退規定が必要だというのも道理です。
採択された条約では、「自国の至高の利益」が脅かされたときに限って、脱退できるとしました。同時に「武力紛争の当事国である場合」は、条約に拘束されるとしています。
「至高の利益」が危うくなるのは戦争以外考えられませんから、核兵器を持ち、使うために脱退するなどということは事実上、不可能な条約だと言えます。
※※※
このように核兵器禁止条約は、「国際社会の英知を結集して練り上げられ(中略)現時点で考えうる最良の内容となった」(日本共産党の志位和夫委員長声明、7月7日)と言えます。これを力に、禁止から廃絶へ、そして、条約に署名し、批准する被爆国の政府をつくるために尽力していきたいと思います。
(おわり)
(川田忠明・日本共産党平和運動局長)
(編集側の都合により、予定を繰り上げ、今回で終了します)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年9月16日付掲載
190余りある国連加盟国のうち、50カ国の批准後、90日で発効とはハードルが低い。
小さく産んで、最後は核保有国も参加させる…
核兵器禁止条約が第6条「被害者援助と環境回復」で、核兵器使用と核実験の被害者への援助を明記したことも画期的です。
心身両面の医療援助を規定するとともに、社会的、経済的に差別がないように支援をすること(社会的、経済的包摂)も定められています。戦後、被爆者がさまざまな差別を強いられてきたことを考えると、いかに被爆者の苦難に心をよせた条約であるかが分かります。
これらは被爆者への援護・連帯をかかげてきた原水爆禁止運動と被爆者運動、世界各地の核実験被害者の願いを反映したものです。
使用国の責任
議論では、核兵器を使用したり、実験したりした国の「責任を明確にすべきだ」という意見も強くだされました。
ビキニ環礁などで67回も米国の核実験が行われたマーシャル諸島共和国の代表は、被害をもたらした国には責任がある、と訴え、共感をよびました。
ただ、特定の国の責任だけを規定するのは条約のあり方としてふさわしくないという意見もありました。
最終的には6条でなく、第7条「国際的協力および援助」に核兵器を使用、実験した国は「犠牲者の支援および環境回復の目的で、被害を受けた締約国にたいし適切な支援を提供する責任を有する」という文言で明記されました。米国が条約に参加した場合には、被爆者に対する支援の責任ということが問題になりうるわけです。
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今年の原水爆禁止世界大会・国際会議で、アメリカがマーシャル諸島で繰り返した核実験による深刻な被害を告発するアバッカ・マディソン・アンジャインさん(マーシャル諸島元上院議員)(左)とモレス・アブラハムさん(マーシャル諸島エニウェトク環礁自治体議員)=8月3日、広島市
参加促す共同
第12条「普遍性」では、すべての国からこの条約への支持を得て、非締約国が条約に参加するよう促すこと、が定められています。締約国と市民社会が共同して参加を広げていくことが期待されます。
第15条「発効」では、50力国が批准した後、90日で条約が発効するとされています。
第17条は脱退です。議論では、「脱退を想定すべきではでない」との意見が出されました。一方、条約というものには、脱退規定が必要だというのも道理です。
採択された条約では、「自国の至高の利益」が脅かされたときに限って、脱退できるとしました。同時に「武力紛争の当事国である場合」は、条約に拘束されるとしています。
「至高の利益」が危うくなるのは戦争以外考えられませんから、核兵器を持ち、使うために脱退するなどということは事実上、不可能な条約だと言えます。
※※※
このように核兵器禁止条約は、「国際社会の英知を結集して練り上げられ(中略)現時点で考えうる最良の内容となった」(日本共産党の志位和夫委員長声明、7月7日)と言えます。これを力に、禁止から廃絶へ、そして、条約に署名し、批准する被爆国の政府をつくるために尽力していきたいと思います。
(おわり)
(川田忠明・日本共産党平和運動局長)
(編集側の都合により、予定を繰り上げ、今回で終了します)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年9月16日付掲載
190余りある国連加盟国のうち、50カ国の批准後、90日で発効とはハードルが低い。
小さく産んで、最後は核保有国も参加させる…