東日本大震災・原発事故10年 被災地から① 水産業 復興途上で試練次々
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から11日で10年。その傷がいえぬまま起きたコロナ禍と2月13日の福島県沖地震。度重なる災害の中、被災者の今と復興への課題を探ります。
宮城・塩釜
宮城県の太平洋沿岸部に位置する塩釜市は、水産業を主要産業とする港町です。不漁、コロナ禍、地震。復興の途上で度重なる災害が、水産・水産加工業の復興をはばんでいます。
全国有数の生鮮本マグロの水揚げ量を誇る塩釜市の魚市場。津波で大きな被害を受け、全面建て替えした新施設を2017年から運用開始しました。魚種拡大のため大型冷凍施設を準備するなど復興に取り組む中、コロナ禍に見舞われました。
マグロがずらりと並ぶ、コロナ禍前の塩釜市魚市場の初競り=2020年1月4日、宮城県塩釜市
コロナに地震
「みなと塩釜魚市場」の志賀直哉社長は、「漁獲が減少しているところにコロナで漁船の寄港が減少し、ブランドマグロの季節の昨年9月ごろから影響が深刻化してきた」と説明。「開設当初120億円だった年間売り上げ目標も、今年度はコロナで70億円くらいか。来年度は80億~90億円はいきたい」と言います。
今年2月13日の福島県沖地震で、塩釜市は震度5強を観測。港の岸壁に長さ約100メートルにわたる段差が生じ、フォークリフト運行に支障が出ています。聞き取りをした日本共産党の天下みゆき宮城県議と塩釜市議団は、県の漁港復興推進室に状況をすぐ伝え、被害調査が始まりました。
魚市場近くの4950平方メートルの建物で、鮮魚店など93店舗が営業する「塩釜水産物仲卸市場」は、震災の前は約170店舗が入っていました。
震災後、ネットやテレビで店内飲食のアピールなど広報に力を入れ、ピーク時は年間100万人が来場。しかし現在はコロナ禍で客もまばらに。仲卸市場の茂庭秀久事務局長は「場内通路に人の姿が見えないなんて以前はなかった」と言います。茂庭氏は「ほとんどの店が持続化給付金を受けました。2回目の実施は絶対必要。今も持続できない状況なんだから」と訴えます。
加工業も深刻
かまぼこなど魚肉練り製品の生産量がかつて全国1位だった塩釜市。水産加工業も状況は深刻です。
「震災から販路が回復せず、特に西日本で苦戦しています」と話すのは、塩釜蒲鉾連合商工業協同組合の理事長を務める阿部善商店の阿部善久社長です。
コロナ禍に加え、2月の地震で床や壁に亀裂が入りました。阿部氏は、「新たに災害がくるたびに震災復興が止まります。消費税を一時免除するだけでも違ってくると思うのですが…」と吐露します。
福島第1原発の汚染水海洋放出の問題については、「海に流したら東北の水産業、養殖業が駄目になってしまう」と懸念します。
震災後にグループ補助金を活用した水産加工業者の社長は、「自己負担分の借入金返済が重いが、先延ばししても最終期限は延ばせない。企業努力にも限界がある。先が見えないが人間に欠かせない『食』を扱っているということが、私たちにとって唯一の希望です」とつぶやくように語りました。(高橋拓丸)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年3月4日付掲載
漁獲が減少しているところにコロナで漁船の寄港が減少し、ブランドマグロの季節の昨年9月ごろから影響が深刻化。
かまぼこなどの加工業でも、販路が減っている。
さらに、今年2月の地震で設備に被害も。
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から11日で10年。その傷がいえぬまま起きたコロナ禍と2月13日の福島県沖地震。度重なる災害の中、被災者の今と復興への課題を探ります。
宮城・塩釜
宮城県の太平洋沿岸部に位置する塩釜市は、水産業を主要産業とする港町です。不漁、コロナ禍、地震。復興の途上で度重なる災害が、水産・水産加工業の復興をはばんでいます。
全国有数の生鮮本マグロの水揚げ量を誇る塩釜市の魚市場。津波で大きな被害を受け、全面建て替えした新施設を2017年から運用開始しました。魚種拡大のため大型冷凍施設を準備するなど復興に取り組む中、コロナ禍に見舞われました。
マグロがずらりと並ぶ、コロナ禍前の塩釜市魚市場の初競り=2020年1月4日、宮城県塩釜市
コロナに地震
「みなと塩釜魚市場」の志賀直哉社長は、「漁獲が減少しているところにコロナで漁船の寄港が減少し、ブランドマグロの季節の昨年9月ごろから影響が深刻化してきた」と説明。「開設当初120億円だった年間売り上げ目標も、今年度はコロナで70億円くらいか。来年度は80億~90億円はいきたい」と言います。
今年2月13日の福島県沖地震で、塩釜市は震度5強を観測。港の岸壁に長さ約100メートルにわたる段差が生じ、フォークリフト運行に支障が出ています。聞き取りをした日本共産党の天下みゆき宮城県議と塩釜市議団は、県の漁港復興推進室に状況をすぐ伝え、被害調査が始まりました。
魚市場近くの4950平方メートルの建物で、鮮魚店など93店舗が営業する「塩釜水産物仲卸市場」は、震災の前は約170店舗が入っていました。
震災後、ネットやテレビで店内飲食のアピールなど広報に力を入れ、ピーク時は年間100万人が来場。しかし現在はコロナ禍で客もまばらに。仲卸市場の茂庭秀久事務局長は「場内通路に人の姿が見えないなんて以前はなかった」と言います。茂庭氏は「ほとんどの店が持続化給付金を受けました。2回目の実施は絶対必要。今も持続できない状況なんだから」と訴えます。
加工業も深刻
かまぼこなど魚肉練り製品の生産量がかつて全国1位だった塩釜市。水産加工業も状況は深刻です。
「震災から販路が回復せず、特に西日本で苦戦しています」と話すのは、塩釜蒲鉾連合商工業協同組合の理事長を務める阿部善商店の阿部善久社長です。
コロナ禍に加え、2月の地震で床や壁に亀裂が入りました。阿部氏は、「新たに災害がくるたびに震災復興が止まります。消費税を一時免除するだけでも違ってくると思うのですが…」と吐露します。
福島第1原発の汚染水海洋放出の問題については、「海に流したら東北の水産業、養殖業が駄目になってしまう」と懸念します。
震災後にグループ補助金を活用した水産加工業者の社長は、「自己負担分の借入金返済が重いが、先延ばししても最終期限は延ばせない。企業努力にも限界がある。先が見えないが人間に欠かせない『食』を扱っているということが、私たちにとって唯一の希望です」とつぶやくように語りました。(高橋拓丸)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年3月4日付掲載
漁獲が減少しているところにコロナで漁船の寄港が減少し、ブランドマグロの季節の昨年9月ごろから影響が深刻化。
かまぼこなどの加工業でも、販路が減っている。
さらに、今年2月の地震で設備に被害も。