東日本大震災・原発事故10年 被災地から④ 生業 若者の雇用創出めざす
宮城・石巻雄勝地区
宮城・石巻雄勝地区伝統産業の硯やホタテ養殖が有名な宮城県石巻市の雄勝地区。東日本大震災の津波で町中心部は壊滅的な被害にあいました。震災前4300人いた人口は震災後1100人に。復興はいまだに道半ばです。そんな中でも、あきらめずに「住民主体」の姿勢で復興と生業の再生に向け進み続ける住民がいます。
住民のために
「マスコミは『雄勝の復興は失敗だ』と言う。『県の復興』は失敗かもしれないが、住民の復興が失敗とは言われてたまるかという気持ち」。そう話すのは雄勝で地域の生業の再生に取り組む徳水博志さん(67)です。
震災後、一部住民は「原形復旧の高さ4・1メートルの防潮堤と、集落を囲むかさ上げ道路をセットで作る」復興案を提案。国と宮城県はそれを無視して、高台移転と9・7メートルの防潮堤建設をしました。
高台移転の工事完了までの間、住民は比較的市の中心部近くの仮設住宅で生活。職場にも近く、生活を送るうえでも便利な市中心部で生活の基礎ができた人たちは、工事完了後も雄勝には戻りませんでした。
硯やホタテ養殖も震災と津波で大打撃を受けました。
「安全第一のまちづくりだけじゃなく、生業の再生もセットで取り組まなければ住民のための復興にはならない」と考えた徳水さん。若者が復興に社会参加する際の受け皿にと、一般社団法人「雄勝花物語」を設立しました。
「雄勝花物語」には、▽被災地緑化支援やローズフ・アクトリーガーデンの無料開放などを行う支援部門▽防災教育やボランティアの受け入れなどをする教育部門▽押し花教室などを行う事業部門―があります。
「北限オリーブ」の木の前に立つ徳水博志さん
「おがつ・たなごや」の中にある海産物直売所=宮城県石巻市
道の駅で交流
ガーデンの隣接地に植えた140本の「北限のオリーブ」からオリーブ油を作り小売りまでする6次産業化で若者の雇用創出をめざす事業を進めています。
徳水さんは「町内の他団体ともつながって、一日体験型のプログラムを作りへ交流人口を増やしていきたい。本団体が若者の雇用を生み出すまで見届けたい」と笑顔で語ります。
地域拠点として昨年5月にオープンした石巻市雄勝観光物産交流館「おがつ・たなごや」は4月から道の駅になります。この事業に関わってきた、同市雄勝総合支所地域振興課長の及川剛さん(57)は「これで交流人口がさらに増えます。住むことは先の話、まずはこの地を知ってもらいたい。その手助けになりたい」と話しました。
(津久井佑希)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年3月7日付掲載
住宅や町並みの再建だけでは暮らしていけない。
生業の復興が必要。「北限のオリーブ」からオリーブ油を作り小売りまでする6次産業化。
地域拠点として昨年5月にオープンした石巻市雄勝観光物産交流館「おがつ・たなごや」は4月から道の駅に。
交流人口を増やし、やがては流入人口へ。
宮城・石巻雄勝地区
宮城・石巻雄勝地区伝統産業の硯やホタテ養殖が有名な宮城県石巻市の雄勝地区。東日本大震災の津波で町中心部は壊滅的な被害にあいました。震災前4300人いた人口は震災後1100人に。復興はいまだに道半ばです。そんな中でも、あきらめずに「住民主体」の姿勢で復興と生業の再生に向け進み続ける住民がいます。
住民のために
「マスコミは『雄勝の復興は失敗だ』と言う。『県の復興』は失敗かもしれないが、住民の復興が失敗とは言われてたまるかという気持ち」。そう話すのは雄勝で地域の生業の再生に取り組む徳水博志さん(67)です。
震災後、一部住民は「原形復旧の高さ4・1メートルの防潮堤と、集落を囲むかさ上げ道路をセットで作る」復興案を提案。国と宮城県はそれを無視して、高台移転と9・7メートルの防潮堤建設をしました。
高台移転の工事完了までの間、住民は比較的市の中心部近くの仮設住宅で生活。職場にも近く、生活を送るうえでも便利な市中心部で生活の基礎ができた人たちは、工事完了後も雄勝には戻りませんでした。
硯やホタテ養殖も震災と津波で大打撃を受けました。
「安全第一のまちづくりだけじゃなく、生業の再生もセットで取り組まなければ住民のための復興にはならない」と考えた徳水さん。若者が復興に社会参加する際の受け皿にと、一般社団法人「雄勝花物語」を設立しました。
「雄勝花物語」には、▽被災地緑化支援やローズフ・アクトリーガーデンの無料開放などを行う支援部門▽防災教育やボランティアの受け入れなどをする教育部門▽押し花教室などを行う事業部門―があります。
「北限オリーブ」の木の前に立つ徳水博志さん
「おがつ・たなごや」の中にある海産物直売所=宮城県石巻市
道の駅で交流
ガーデンの隣接地に植えた140本の「北限のオリーブ」からオリーブ油を作り小売りまでする6次産業化で若者の雇用創出をめざす事業を進めています。
徳水さんは「町内の他団体ともつながって、一日体験型のプログラムを作りへ交流人口を増やしていきたい。本団体が若者の雇用を生み出すまで見届けたい」と笑顔で語ります。
地域拠点として昨年5月にオープンした石巻市雄勝観光物産交流館「おがつ・たなごや」は4月から道の駅になります。この事業に関わってきた、同市雄勝総合支所地域振興課長の及川剛さん(57)は「これで交流人口がさらに増えます。住むことは先の話、まずはこの地を知ってもらいたい。その手助けになりたい」と話しました。
(津久井佑希)(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年3月7日付掲載
住宅や町並みの再建だけでは暮らしていけない。
生業の復興が必要。「北限のオリーブ」からオリーブ油を作り小売りまでする6次産業化。
地域拠点として昨年5月にオープンした石巻市雄勝観光物産交流館「おがつ・たなごや」は4月から道の駅に。
交流人口を増やし、やがては流入人口へ。