コロナ禍と資本主義 見えざる鎖⑨ 賃金減らされ空腹・飢餓に
衣料品製造工場などで働く労働者の権利を監視する労働者人権協会(WRC)が2020年11月に「アパレルサプライチェーンの飢餓」を発表しました。9カ国(バングラデシュ、カンボジア、エルサルバドル、エチオピア、ハイチ、インド、インドネシア、レソト、ミャンマー)の158の工場に勤める396人の縫製労働者を対象に20年8~9月に調査しました。
労働者の38%が、一時的な雇用停止(11%)または永久解雇(27%)により、仕事を失いました。残りの6割は雇用状態の変化はなかったものの、20年3月から8月の間に収入が21%も減少しました。
休職処分となった労働者のうち3割が、雇用の一時停止期間中にまったく賃金を受け取っていません。解雇された労働者のうち、7割が法的に義務付けられた完全な退職金を受け取っていません。
収入の減少、失業や休職の結果、労働者の間には飢餓と食料不安が高まっています。労働者の77%がコロナ危機以来、自分や家族の一員が空腹に陥っています。毎日、飢えにあえいでいる労働者もいます。
世界的ファッションブランドZARAの店舗=東京都内
量を減らす
労働者の88%は、収入の減少により、自分と家族が毎日消費する食事の量を減らさざるを得ません。
子どもがいる労働者のうち8割は、子どもを養うために食事を抜いたり、食べる量を減らしたりしています。
労働者の75%が、コロナ危機以来、食料を購入するため借金を余儀なくされています。このうち、43%はコロナ危機の前から同じ工場で働いています。まだ雇用されている労働者でさえ、収入が減少したために借金に頼らざるを得なかったことを示しています。
WRCが今年4月6日に公表した報告書によると、ベネトン、H&M、ZARAなどのファッションブランド、アディダスやナイキといったスポーツブランド、ターゲットやウォルマートなどの大規模小売業者に製品を供給している31工場で3万7637人が解雇されました。
工場の所在地は、インドネシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、バングラデシュ、インド、ヨルダン、ドミニカ共和国、エルサルバドルの9カ国にわたっています。解雇された労働者へ支払わなければならない補償金の未払い額は3980万ドル(約43億4000万円)に上ります。WRCは、「広範囲にわたる退職金の盗難」が行われていると指摘しています。
16万人解雇
報告書は、過去1年で400件の工場閉鎖・大量解雇があったといいます。推定で16万人の労働者が解雇され、未払いの手当は1億7150万ドル(約188億7000万円)に上ります。その結果、新型コロナのパンデミック(大流行)のもと、全世界の衣料産業で未払いの解雇手当の総額は、5億~8億5000万ドルに上ると推計しています。しかし、これも氷山の一角にすぎません。コロナ危機はなお続いており、今後「経済的影響が明らかになるにつれて、この数字は確実に上昇する」と指摘しています。
世界的なブランド企業は、激しい価格引き下げ圧力、土壇場での注文の修正、支払いの遅延など、無理難題を縫製工場に押し付けます。その結果、工場経営者たちは、合法的手段だけでなく違法なやり方で賃金を抑制するのです。
ブランドの経営戦略によって、工場閉鎖や、その他の方法での大量解雇の可能性が高まります。労働者をだますことを望まない雇用主でさえ、そうせざるを得ない立場にブランド側は追い込むのです。
WRCは、「ブランドによる工場への価格引き下げ圧力が世界のアパレル業界における労働者の権利侵害がまん延する主要な推進力だ」と指摘します。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年7月24日付掲載
コロナ禍のもと仕事が減り、工場の閉鎖や休業。解雇された労働者へ支払わなければならない補償金の未払い額は3980万ドル(約43億4000万円)に上ります。WRCは、「広範囲にわたる退職金の盗難」が行われている。
世界的なブランド企業は、激しい価格引き下げ圧力、土壇場での注文の修正、支払いの遅延など、無理難題を縫製工場に押し付け。労働者をだますことを望まない雇用主でさえ、賃金抑制や解雇をせざるを得ない状態に。
衣料品製造工場などで働く労働者の権利を監視する労働者人権協会(WRC)が2020年11月に「アパレルサプライチェーンの飢餓」を発表しました。9カ国(バングラデシュ、カンボジア、エルサルバドル、エチオピア、ハイチ、インド、インドネシア、レソト、ミャンマー)の158の工場に勤める396人の縫製労働者を対象に20年8~9月に調査しました。
労働者の38%が、一時的な雇用停止(11%)または永久解雇(27%)により、仕事を失いました。残りの6割は雇用状態の変化はなかったものの、20年3月から8月の間に収入が21%も減少しました。
休職処分となった労働者のうち3割が、雇用の一時停止期間中にまったく賃金を受け取っていません。解雇された労働者のうち、7割が法的に義務付けられた完全な退職金を受け取っていません。
収入の減少、失業や休職の結果、労働者の間には飢餓と食料不安が高まっています。労働者の77%がコロナ危機以来、自分や家族の一員が空腹に陥っています。毎日、飢えにあえいでいる労働者もいます。
世界的ファッションブランドZARAの店舗=東京都内
量を減らす
労働者の88%は、収入の減少により、自分と家族が毎日消費する食事の量を減らさざるを得ません。
子どもがいる労働者のうち8割は、子どもを養うために食事を抜いたり、食べる量を減らしたりしています。
労働者の75%が、コロナ危機以来、食料を購入するため借金を余儀なくされています。このうち、43%はコロナ危機の前から同じ工場で働いています。まだ雇用されている労働者でさえ、収入が減少したために借金に頼らざるを得なかったことを示しています。
WRCが今年4月6日に公表した報告書によると、ベネトン、H&M、ZARAなどのファッションブランド、アディダスやナイキといったスポーツブランド、ターゲットやウォルマートなどの大規模小売業者に製品を供給している31工場で3万7637人が解雇されました。
工場の所在地は、インドネシア、カンボジア、タイ、ミャンマー、バングラデシュ、インド、ヨルダン、ドミニカ共和国、エルサルバドルの9カ国にわたっています。解雇された労働者へ支払わなければならない補償金の未払い額は3980万ドル(約43億4000万円)に上ります。WRCは、「広範囲にわたる退職金の盗難」が行われていると指摘しています。
16万人解雇
報告書は、過去1年で400件の工場閉鎖・大量解雇があったといいます。推定で16万人の労働者が解雇され、未払いの手当は1億7150万ドル(約188億7000万円)に上ります。その結果、新型コロナのパンデミック(大流行)のもと、全世界の衣料産業で未払いの解雇手当の総額は、5億~8億5000万ドルに上ると推計しています。しかし、これも氷山の一角にすぎません。コロナ危機はなお続いており、今後「経済的影響が明らかになるにつれて、この数字は確実に上昇する」と指摘しています。
世界的なブランド企業は、激しい価格引き下げ圧力、土壇場での注文の修正、支払いの遅延など、無理難題を縫製工場に押し付けます。その結果、工場経営者たちは、合法的手段だけでなく違法なやり方で賃金を抑制するのです。
ブランドの経営戦略によって、工場閉鎖や、その他の方法での大量解雇の可能性が高まります。労働者をだますことを望まない雇用主でさえ、そうせざるを得ない立場にブランド側は追い込むのです。
WRCは、「ブランドによる工場への価格引き下げ圧力が世界のアパレル業界における労働者の権利侵害がまん延する主要な推進力だ」と指摘します。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年7月24日付掲載
コロナ禍のもと仕事が減り、工場の閉鎖や休業。解雇された労働者へ支払わなければならない補償金の未払い額は3980万ドル(約43億4000万円)に上ります。WRCは、「広範囲にわたる退職金の盗難」が行われている。
世界的なブランド企業は、激しい価格引き下げ圧力、土壇場での注文の修正、支払いの遅延など、無理難題を縫製工場に押し付け。労働者をだますことを望まない雇用主でさえ、賃金抑制や解雇をせざるを得ない状態に。
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